いずこへ?(または水曜日の「五香たかね」)

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No Problem/安全地帯

昼食を現地で、くらいのざっくりしたスケジュールで10時過ぎ、デジカメ片手に「鉄道むすめ・五香たかね」さんに逢いに(?)出かける。
特定の列車を撮りに行くのと違い、時間がタイトでないのが気楽でいい。


という情報を、ツイッターで拝見しまして。
今年、デビュー1周年記念に本年6月から、デフォルメ版が掲出された「五香たかね」、高根木戸駅に見に行ったのは7月2日(土)だった。
誓ってこれまで一切興味のなかった「分野」*1であり、コロナ自粛から近場で単なる暇つぶしにでもなれば、くらいに思っていたのだが。
昨年デビュー当時の装飾(デフォルメ版ではない)も、好評によりまだ五香駅に掲出されているとのこと。「片参り」にしないためにも(という自身への言い訳)、早速でかける、なんという行動的な俺(すでに自覚なき沼)。

五香駅といえば大学時代の合唱部で一度だけ、ご縁があって慰問演奏で伺ったことがあった。
新京成線の車庫はくぬぎ山に移転する前、かつてはこの駅に併設されていたのは知っており、当時もそれを楽しみに行った気がするが、「当時の痕跡」は発見できなかった。

窓の大きなデンシャって、いいよね。

平日昼前の新京成線は目論見通り、かなりガラガラ。
未更新の8809Fに揺られて五香駅

感覚としてはほとんど松戸。実際大学時代もそうだったが、東京方面からだと松戸側から新京成線に入る方が近い。

デフォルメ版に対して「リアル版」とでもいったところだろうかラッピング。
これ自体は先月の高根木戸駅とそう違うものでもないが、こちらは全身像多めなのが尊いかも。


ホームに降りるエレベーターホールに「原画」ともいえる各イラストの一番大きなものが掲示されていたが、点々と配置するのではなく、いっそギャラリーのようにどこかの壁に集約しておいてくれてもいいような気がした。


昼食の時間になったので、かつて慰問演奏に降り立った側とは逆の、昭和臭漂う商店街が思いのほか賑わっている西口側に出てみた。
駅ビルの、人通りのなさそうな裏階段を駅前ロータリーに向かって降りる途中の窓から見えた、古くて長大なアーケードに思わず見入っていたら、やっぱり人通りを避けて階段を上ってきた爺さんと鉢合わせてしまい、何やら文句を呟かれてしまった現地人とのファーストコンタクト。
ああいう風に四六時中何かに腹を立てているような年の取り方は、絶対にしたくないものだ。


恐らくUR*2が誘致したのだろう商店街は、車道を渡って改めて見ると長大な長屋を形成しており、所々に当時の装飾も見られる立派なもの。
アーケードの先にはヨークマートの看板が見えて、その先は巨大な常盤平団地へと続いていた。
途中、右に入る道にはうっそうと桜の青葉が茂っていて、「五香さくら通り商店会」の看板があって、どうやらここが「日本の道100選」のひとつ、あのさくら通りの入り口らしい。



建物と建物の間、人も通れないような隙間にはこの街の「歴史」が、人の手が入らないために「地層」を成しているような気がしてついつい覗き込んでしまうんだな(俺だけ?)。

ヨークマートで昼食用にパンと飲み物を買って、さきほど目にしたやまぶき公園の木陰で、と思っていたのだが、やまぶき公園には「鳩寄せジジィ」(餌やり)がひとり居座っていて、案の定鳩が大挙しておしかけていたため断念。
思い切って常盤平団地に足を踏み入れてみた。
平日夏の日差しの中、人通りはほとんどなく、時折お年寄りがひとり、またひとり、ゆっくりとした足取りで買い物から帰ってくるくらい。
建物はやまぶき公園にご丁寧に「昭和37年開園」とあったように、団地もほぼ同時期竣工のものがそのまま残っているらしく、懐かしの実家の造りそのまま。
かつての実家の間取りをつらつらと思い起こしつつ、立派な藤棚の木陰になっているベンチをお借りして昼食をとっていた。

「汗だくになりながら最上階へと階段を登り、重い鉄のドアをあけるとすぐ脇のダイニングから"おかえり~"と母の声…。」当時の記憶。

予備知識のないまま訪れて思わぬ「発見」をしてしまい、「たかね」ちゃんどこへやら。ひとりですっかりはしゃいでしまった。
なかなかいい「旅」になった。

この写真でジワれるヒト絶対、団地経験者。

ちょっとセンチメンタルな昼食を済ませて駅へ戻ると、上りエスカレーターで前に立ってたスーツの男性。
丁度20年前の俺の状況で、全身の皮膚ガサガサ。猛烈な痒みから常に手を動かしており、太陽光に光った皮膚片がこちらへ舞ってくる。とっても辛そう…。
でも、声をかけるべきでもないし、かけることばも咄嗟に思いつかない。
全身の皮膚がなくなって毎日寝てるしかなかったあの部屋、当時の団地なんか目にしたからか、強烈に思い出してしまったものらしい。
「生きてるだけでめっけもん」っていう、誰かから聞いたことばが咄嗟に浮かんできた。

駅ビルのない側は、ぐっと庶民的だった。

さすがに暑さが体内に蓄積されてきたようだったので、三咲駅へ移動。

更新車のブラインドカーテンは、地元産果物柄が楽しい。


こちらは同じように「ふなっしー」が、地上降臨10周年を記念して7月4日から運行されている「ふなっしートレイン」とのコラボで、やっぱり駅装飾になっている。

かなの駅名表記はひとつ残らず「みさっきー」とする懲りよう。

俺、実はよく知らないのだが、「兄弟姉妹」キャラが多数発生しているようで、素人目に見て明らかにこれはふなっしーではないな、というイラストもかなり混じっていた。


しかしこちらの駅へは、撮影目当てで訪れている人たちの姿が少なからずあって、年齢層も幅広い。
ふなっしー知名度、さすが(船えもんはどこへ?)。
数量限定販売のふなっしー柄、一日乗車券を片手に訪れている方も見かけた。


無人の自動改札を出てすぐ右手には、「三咲駅へようこそなっしー!」の特大パネル展示。
駅内コンビニの脇では、部活帰りか男子学生たちが溜まってアイス食べながら長話に興じてて、もう何本も列車を見送っている。
…なんか、これはこれで悪くないな夏の景色。

デフォルメ版から入ったというのがいかにも俺らしいといえなくもないが。
そういうわけで「五香たかね」ちゃんから始まって、今やその自覚のないまますっかり「沼」になりかけている。
いわゆる名画の展覧会に(金をかけてまで)足を運ぶのではなく、こういうイラストを愛でる(だけの)旅、というのがいかにも商業美術、現代的なのかな、などと帰りの電車内で思ってみたり。
しかし、俺はいったい、どこへ向かおうとしているのだろう…。

まぁひとまず、目論見通りの滑り出しだ夏季休暇初日、ということで。

*1:これ、果たして「撮りテツ」と言っていいものなのか?

*2:当時は恐らく日本住宅公団