連隊跡記念碑
「片参り」にならないよう、先日は日大側から覗き込んだ(笑)「騎兵第13連隊発祥の地」碑。東邦大学の学園祭。
先日向こう側から眺めた通り、日大とは垣根1本で仕切られており、こちらには司馬遼太郎さんの碑文も併設されていた。
そもそも地元史にご興味のない人たちにとっては、だから何なんだ、ということで、早速「本編」の東邦大学祭へ、初潜入することにしよう。
日大のような派手なゲートはなく、受付で案内パンフレット一式を受け取ると、A3版ふたつ折カラーの会場全図と催事・展示内容が記載されたプログラムは別の冊子になっていた。これは思った以上に不便で、俺は片手にデジカメを持って歩きたい。しかも二日目は雨だったので、これに加えて傘を持って歩く必要もあり、想像以上に難儀した。
アカペラ・ライブを目撃
のっけから飲食テントが並ぶメインストリートを進み、左手に広がる薬草園を通り過ぎる。こちらは確か年に一度、一般公開されているらしい。
何の予備知識もなく歩を進めると、芝生広場からボイパの音が! …JARNZΩ*1の演奏が、今まさにエンディングたけなわ。隣接する校舎には、見物の学生が鈴なりの大盛り上がり。
これをもってちょっと期待してしまったものの、やはり学生によるアカペラ・サークルなるものは、こちらの大学にも見当たらなかった。
合唱部雑感
気を取り直して、実はこのところ個人的に合唱づいているので、合唱部の演奏に足を運んでみた。手元の案内パンフには、
合唱曲に加え、合唱になじみのない方にも楽しんでもらえるよう、定番の名曲から流行のあの曲までマイクを使ったアカペラを中心に…
とあり、何やらいや〜な予感がします…。
一般教室の正面黒板に、みごとなタイトルが描かれており、こちら側がステージ。固定されて動かせない聴講席がそのまま客席。ステージ左手には立派なPA卓が設置されており、左右にはこれも立派なメインスピーカー…だったのだが、出音はなぜかチープで、「アカペラ」で一般的にイメージされるような音ではない。
ベルカント発声で歌う人たちの声は、その響きの大半部分はダイナミックレンジのハンドマイクでは拾いきれず、特にこのスタイルのアカペラで迫力を左右するベースが全く聞こえてこなかった。単に卓のバランスがよくなかっただけなのかも知れないが。
いっそ、生声の方がよかったんではなかろーか。
手渡されたプログラムには、今出来の曲名がずらり。俺がいたプログラム前半だけで、合唱曲の披露はなく、5~6人程度の部内小グループが、2曲ほど歌っては次々とメンバーを変えていくという進行。大学の合唱部はどこも部員数が減少して存続の危機に陥っているであろうことは想像に難くなく、苦肉の策、と解釈することはできるのだが。
感想を書き始めるととめどなく、しかもつい辛辣な物言いになってしまう。
俺の側の反応の問題だなこれは。
ということで時間を置いて冷静になってみると、ああ、これは誰あろう俺自身が「いつか通った道」だったことに思い至った。
俺も大学時代は合唱部に在籍していたが、その合唱部の学祭での(伝統の?)出し物こそが「歌声喫茶」。何のことはない、お客さんの入りに合わせて、その場に居合わせた部員数人で臨機応変に、合唱曲の生演奏をご披露するというもので、一般にいう「お客さん全員合唱」の形式ではない。そのための小曲集があって、この時期、暇さえあればピアノの周りに集まって歌っていたものだが、そんな中にポップスや歌謡曲なんかを意図的に混入させたのが、(それ以前にもあったのかも知れないが)丁度俺が在籍していた頃で、思い返せば色々と実験的な試みもさせてもらった。
そんな中で徐々に固まってきたメンバーとレパートリーで、アカペラ・デビューを果たし、合唱部とは完全に別動隊として、廊下の一角やエントランスで歌うようになっていったのも、学園祭がきっかけだった(このとき俺は、ベース担当だったりするんだが)。
「歌声喫茶」ではもちろんマイクをはじめPAと呼べるものは一切なく、生声オンリーだった。一方、非合法(笑)のアカペラ・バンドの方は(私財を投じて)徐々に機材を使うようになっていき、声の出し方からステージ上での身のこなしまで、合唱とは明らかに違うものなのだということを、身をもって知っていくことになる。
俺たちが考える「カッコイイ」演奏とはどういうものか。当時の自分たちはまだまだ、相当かけ離れたところにいることだけはわかっていた。
ただそれだけの理由で、現在に至るまでの長〜い試行錯誤がある。
まだしも救いだったのは、俺たちの頃は今出来の「アカペラ」というスタイルそのものも、まだ一般的ではなかったからなぁ…。お客さんにしても、そういう意味で耳が肥えた人は、当時まだまだ少なかったことだろう。
そんな昔の、カッコよくなれなくて試行錯誤していた頃の自分自身を見せられたような気がして、俺の側が過剰反応をしてしまった、ということらしい。
そもそもこれは合唱なのか、「アカペラ」なのか、とつい考えてしまうあたり。
要するに俺の頭が、トシ相応に固くなっちまった、ということなのだ。
俺たちがあそこから、今のアカペラのスタイル*2を創ってきたように、この何の先入観も思い込みもない場所から、新しい演奏スタイルが生まれてくるのならそれも悪くない。
ともかくも、合唱か、アカペラか、そのどちらかの「予定調和」を無意識に求めていってしまった俺は、残念ながら今回の演奏を楽しむことができなかったわけだ。
パンフレットを拝見する限り、マンドリン部が「音楽喫茶」と称してもっと肩肘はらない演奏をしているらしく、こちらの方が俺たちが学生時代にやっていた「歌声喫茶」に近いのだろう。
演目には「合唱になじみのない方にも楽しんでもらえるよう」配慮がありながら、一方ではまだ、お客さんをホールに「閉じ込め」て聞かせる、クラシック音楽の「枠」が外せないようでもある。
それにつけてもあのメンバーでのちゃんとした合唱曲演奏も、聴いてみたかったなぁ。
みんな基礎はできていたようで、実際に音程はとても正確だったし。「カラオケ世代」らしくリード・ボーカルはみんなそれなりにうまかったし。
フェアトレード・サークルのテントでホットコーヒーを飲みながら、同じ歌のフィールドにいる若者たちの演奏を思い返しながら、自身の経験を重ねて苦笑いしてしまった。
そういえば我が母校「練産大」の学園祭は今年、ご案内いただいていたっけと自己都合よろしく思い出したのでネットで調べてみたところ、残念ながら先週終わっていた。
俺が現役生の頃は先輩から、OBをひとりでも多く招待して、顔を繋いでおくとともに、(部の活動費補填のために)「ぼったくるもんだ(笑)」と教わっていたものだが…。
管弦楽団
管弦楽団には2日目に改めて行ってみた。
どうやら俺の予備知識と一致するように、歌より楽器演奏の方が盛んな土地柄らしい。
「2年生オーケストラ」の全体演奏があって、それなりに生のオーケストラの音が、何より間近で楽しめる。音響は変によすぎないのがまたいい。演奏家たちと同じ環境の音を聞いている気分になれる。
それから小グループの演奏が続くわけだが、こちらは合唱部と違い、演奏レベルが様々だった。最初のグループが出てきたときは、「あーまた(客席に)気圧されてるパターンか」、と思ったが、2グループ目は、ゾンビのお面を被ったピアニストとオーボエ、チェロ。冒頭と終りに、ゾンビと絡む小芝居をする余裕も見せてくれて、会場爆笑。こういう、普段オーケストラという「集合体」でしか拝見できない「個人」が、こうしてそれぞれの人柄が見えるような演奏は楽しい。
トロンボーンの六重奏、という変わった編成なんかも聴くことができ、迫力を満喫して、他にも足を運びたかったので、後ろ髪ひかれる思いで会場を後にした。
2週にわたって、理数系大学の学祭って俺にとっては別世界だと思っていたのだが、やっぱりそれなりに面白い場所だった。
何より最近の「リケジョ」ときたら、みんなけっこうイケてるし…日大より、女子学生の割合が高かったのでは、と今ごろ気付く。