一方のペンギン

はというと、久しぶりに「アカペラ、初めて」という感じのお客さんの中に放り出されてか(?)、とっても熱心に耳を傾けていただいたりして、こちらは逆に「客席に」引き込まれてしまった。もとより不快なわけはなく、普段フォークを聞いている方々はどうも、理屈抜きでペンギンの歌う日本語の歌の歌詞に、じっくりと耳を傾けてもらっているようなのだ。リードを歌うとその感じはより強くなって、自分の口から出て行くことばが、客席に吸い込まれていくような錯覚に陥っていた。アカペラ・バンドだけのイベントだと、逆にこうしたお客さんたちとは、出会いにくかったはず。ハーモニーの一体感に耳を傾けてもらっている、という我々の日常とは、やや違う反応だったのだ。
終始、新鮮な気分で歌わせていだたいた。それにしてもこの微妙な感じ方の違い、不思議なものだと思う。

例によってリーダーの、ことばのはずみから(?)実現した茜沢ゆめるさんとのコラボは、ご本人何かとご多忙な中での、本番一発。ぐいぐい引っ張ってくれるリードに、バックで歌いながら久しぶりにニヤけてしまった。これも、固定したメンバーのバンド内で歌っているだけでは得がたい経験になった。そしてそして、先ほど文頭でちょっと触れたピアノ伴奏曲の件は、リハの最後まで、間奏やら後奏やらにひと工夫を加えようとあがいている風ではありましたが、こちらも本番になってしまえば、合わせが少なかったという感じも、聞く側が手に汗握ってしまうようなことももちろんなくて、自然に流れていく音がここちよい風だったと思う(ご苦労サマ)。