なじみの床屋のオヤジが亡くなった。

町内会の掲示板の隅に、そう書かれていた。
数ヶ月に一回の顔あわせだった。最近はハサミこそ自らは持たなくなっていたが、満面の笑みでお店の隅っこに座っていたものだった。生まれつきの体質のこともあり、俺はいろいろ店にとっては迷惑な客だったはずだ。業務用のシャンプーが駄目だったり、アタマの中じゅう湿疹だらけだったこともある。いつも顔色ひとつ変えないで、髪を刈ってくれていた。カラダのことをいちいち説明せずとも、ただ黙って座るだけでいい床屋ほど、ありがたいものはなかった。