以下、残されていたものども。

各事務所の団体看板は、まぁそれぞれに思うところもあって、最後まで自分たちでは外せなかったのだろう。
それに鉢植え。いくつかは、どうせ建物とともに瓦礫の山になってしまうのだろうけど、せめてそれまでの間、ということで鉢から取り出して庭の隅に植え替えた。
意外と梃子摺る傘、蛍光灯といった長モノ。
茶碗などの食器類。流しに残された洗剤、雑巾。トイレにはスリッパ、石鹸、カラの芳香剤など。
ある団体のゴミ箱からは、PETボトルなんかと一緒にカビだらけの茶殻が出てきた・・・最後の茶会?

あらかた目処がついたかな、と思ってキャビネットを開けたら、カラのはずのそこから会報がごっそりでてきた・・・という団体も。ダメだ、古紙回収は今朝一番にいっちゃったよ・・・ぐったり。荷造り紐もいるか。
ゴキブリよろしく廊下に座り込んで、束ねたり袋詰めしたりしていると、とってもみじめな気分になる。昨日までは黒板一面に書かれた感謝のことばが嬉しかったものだが、今日見るとただただ、虚しい。
そこに確かに、誰かの手が介在しているということに想像が及びにくい世の中だ。
館内を毎日掃除してくれていたのはOさんの会社だった、今日こうして俺がまとめてさえおけば、どんなに大量でも明朝ちゃんと回収してくれるゴミ回収の担当者はSさん、ごみ袋を満載して階下に、最後の日までちゃんと動いてくれている小荷物リフトを毎月点検してくれていたKさん・・・。
まるで空気のようにあたりまえだった毎日が、どんなに多くのヒトたちに支えられていたかがわかる。
もちろん、そんなことを思ってかどうか床掃除までちゃんとして、塵ひとつ残さずに転出していった部屋もある。あと何部屋、と残り勘定する身には、とってもありがたい。

こうして残り作業に先が見えてくるにつれ、今度はNPOハウスの「死刑執行人」、そんな単語すら頭をよぎるけれど。
こうなりゃもう、ここで親しくなれた人たちの顔が思い浮かぶ部屋の看板だって、はがすのに躊躇しやしない。

最後に2階から、金曜日にスタッフ総出で袋詰めしておいてもらったゴミ袋を玄関の回収場所まで何往復も下ろして、本日作業終了。
ここ数日は館内に俺だけなのに、1階玄関の自販機に1,000円以上つぎこんじまった。
上階から順に、ブレーカを落として階下へ降りる。なんと12時間、動きっぱなしだったぜ。
明日は8時から、他の現場に優先して一台、車を回してくれると業者から電話をもらった。
俺だけが早起きを嫌がっては、申し訳ない。