昼の部

解散既決後の本番、なんてーのは、望んだところでちょっとやそっとで経験できるもんじゃないが、だからってわざわざ経験したいもんでもないだろ、誰だって。
ちょっと、いやかなり後悔してた。承服してしまったことに。
だいたいこんな精神状態で一緒に演奏して、いったいどんなカタチになるというのだ。
しかし、取り急ぎお知らせできた一部の知りあいから、徐々にお返事をいただき始めた段階で、ようやく少し、なけなしのやる気らしきものが出てきた、のは本番前夜・・・手遅れ。
個人的にせめてできたことといえば、練習の始まる1時間前にカラオケボックスに入って入念な声出し・・・音に対する集中力や反応は、なんとか普段程度には戻ってきたみたいだ。
この後、バンドとしていつもの休日練習、その後半を一般開放、内々にお客さんをお招きしてのミニ・ライブ、という手はず。
土曜の昼間ということで、日ごろは中々外出も難しいだろうお子様連れも駆けつけてくれた客席は、いつも以上に和やかで、この機会に急遽馳せ参じてくれた古い知り合いの顔も拝見でき、ただそこに自分たちの演奏を聞いてくれる人たちがいる、というこれだけのことが、どれほどありがたかったことか改めて実感できた。
他には何もいらない。それだけで、よかったんだよ。
それにしては後日こうして録音を聞いていると、うまくいえないんだが、なんだか「誠意のない音」になっちゃってるなぁ、というのが、日ごろ自分たちの演奏に耳慣れている自身の印象。演奏レベルだけは妙にソツなくなったが。個人的にはもう少しヘタでもいいから・・・などと贅沢なことを思ってしまった。
この場は居合わせた誰もが、あらかた事情を知っているだけに、まだ外も明るいことだし互いになんとかソコには触れないように、というみょーな気遣いムードが充満していた。

終演後はやや慌しい気分のまま、かねて予定の東向島・プチローズでの本番へ移動。「何も今日、ここでなくても」とは、誰もが同じ思いだっただろう。
錦糸町駅の地下鉄に続く階段が、永遠に続くように長く感じた。