観光地や景勝地とは無縁の、毎度おなじみ、乗りテツ一人旅。

普通は総武線でそのまま千葉方面へ、なのだろうが、乗り換え案内Webサイトでみつけたルート、上野から京成線に乗ってみた。成田線回り。以前、ペンギンでクリスマスに歌いに来たことがあったっけか。

上野駅で買った、お弁当。名古屋にもこの調子でフラッと行きたいもんだ、また(はた迷惑な・・・)。
ここから先は、あとどのくらいかかるのかも、あといくつ駅があるのかも、実は知らない。
地図も時刻表も家においてきた。車内の路線図、見ればいいんだけど迷ってる・・・そんな余所者気分も旅の楽しみ。

70〜80kmは出ているはずなのに、景色が広すぎて、全然速さを感じさせない電車は「並み足」でコトコトと進む、関東平野。車内は冬の長い陽の光が差し込んで、暖かいうたたね状態。
線路の脇には水田に混じって溜池もあって、おたまじゃくしや、恐らくミジンコも、首を長くして待っている春も、もう近いはず。
左手に利根川、そのむこうの煙突は鹿島灘の工場群か。
右手には山の上に林立する、発電の風車群。想像を超える大きさは、とらえどころのない形に芽生える畏怖の念。

銚子からお目当ての銚子電鉄は、まずは昭和の風情を色濃く残す終点、外川駅まで一気に乗り通す。


駅を出た先、坂を下った向こうにはすぐ、きらきらと輝く海!
シャッターを押す直前、道路を猫が横切っていった。
岸壁まで出て吸っていた、たばこの減りが仕事のときより明らかに早い。体内時計の刻み方が、ゆっくりになった証し。

時折近寄ってくるかもめをカメラに収めようとして、逆にかもめに遊ばれる。
ひと通り潮風を満喫すると、カンで犬吠駅方向へ歩く。

この駅の売店で、念願の栓抜きゲット。「袋詰めはいいから」といって、丁度来た銚子行きの電車に飛び乗る。
夕暮れの中、唯一の交換駅、笠上黒生(かさかみくろはえ)駅まで戻ってきた。

一日中、丁度真ん中に位置するこの駅でだけ、上下列車が交換する単線運転。
この頃には観光客の姿がほとんど見えなくなり、それまであまりひと気が感じられなかった周囲の家々では台所に夕餉の明かりが灯りだす。街が他所向きではない顔を取り戻したようだ。
手持ち撮影ぎりぎりの夕闇で、交換風景を今日のラストショットとして、カメラをカバンにしまった。さて、ウチに帰ろう、俺も。

人通りの少なくなった銚子駅前の、みやげもの屋で声を掛けられる。試食させてもらった恩義に報いて(田舎もんだな俺)、車内用に酒肴とみやげを、この店で買い込んだら、さらに生わかめをオマケにつけてもらった。
帰りの特急ではビールで祝杯。

さてさて、今日の写真の出来は・・・デジカメではないので、現像してみるまでわからない。今のところは心地よい達成感。肩を貸してくれるツレもいないので、リクライニングを思い切り倒して、倒れていない隣の席を肩代わりに、アタマをもたれかけつつ、今夜、帰りの曲はノラ・ジョーンズ
次に目を覚ましたときは、ライトアップされた聖橋(御茶ノ水)が見えた。
さすがに歩きすぎたか。痛めている右ひざだけでなく、左足までが痛い。