撤退。

それにしても、最終勤務日だというのに俺がシンガリってどういうことだ。
日頃からやや自虐的に、これが俺じゃなく、何度も地球滅亡に直面して八面六臂の活躍をしているウィル・ス○スさんなら、定時までに片付く仕事だろ、などといっていたが、今夜のテレビ映画は偶然にも「インデペンデンス・デイ」。さすがに間に合う時間に帰宅できるだろうと高を括っていたら、間に合わず。
それほど見たかったわけじゃないけれど、ビール片手にひとり静かにお祝いを、という朝の時点での淡い計画は、木っ端微塵。
せっかくいただいた花束も、このままじゃ枯れちゃうよ。


とにかく明日からは、
眠い目をこすって朝礼で、職員行動規範書を全員で唱和したり、
順番に、できもしない優等生的感想をいわなきゃならなかったり、
なぜか俺だけに課せられている、毎朝のチーフとの打ち合わせ―仕事の優先順位を決めるという建前で、どう考えても一日で終わらない仕事を次々と一方的に押し付けられたり、
お陰で朝、目を通す時間が取れないまま日々たまっていくスクラップ用新聞に恐怖したり、
わからないことを聞こうと思ったら、とんち問答かよという無理難題で返されて「聞いた私が馬鹿でした」な気分になったり、
回した書類が、メモもなしにそのまま俺の机上に戻ってきちゃってたり、
月曜までには先週の仕事の進捗報告を、金曜に次週の仕事の具体的内容を規定のフォーマットに入力して、スタッフ全員にメール配信しなければならなかったり、
これだけ報告を求められるのに、苦労して作った機関会議の討議結果は一向に降りてこなかったり、
法人運営の常識的に、他法人では一人区なわけがない仕事がよりによって俺の一人区だったり、
うっかり身体を壊して欠勤しても体調を気遣うことばひとつなく、報告や指示を求めるメールだけがバンバン来ておちおち寝ていられなかったり、
同じポジションでの離職が俺で3人目なのに、原因は「個人の資質」くらいにしか思われていなかったり、
週末の街歩きで上司に似ている人を見かけて反射的に立ち止まっちゃったり、
日曜の夜に、月曜からのこれらを想像してとっても憂鬱になっちゃったり
・・・しなくて済むわけだ。


今日の今日、朝礼で俺の退職を聞いて驚いたヒトも少なからず。
辞令ははるか以前に、全法人に回っているはずなのだが。大丈夫か本部。
退勤時、個人的に声をかけてくれた人。
右手を差し出してくれた人。
日頃仕事でことばを交わす機会が多かったからといって、こういうときにちゃんと声をかけてくれるとも限らないもんだ。かと思うと日頃は会釈するくらいだけだった人から、丁寧なご挨拶をいただいたり。
こういうときに、人の本当の性格って出ちゃうもんなんだな。恐らく俺の側の、日頃の態度が反映された結果、でもあろうけれど。
ここ数日は、引継ぎにかこつけて今更ながら腹を割った話ができたスタッフもいて、やっぱり「采配」が一番の問題な気がする。
実際、個人的に話をしてみると、そう考えているのもどうやら俺ひとりではなかった。
いろんな人の心の断片が見えちゃった一日。


実はこんな感受性を持ち合わせてしまっている自分が、俺自身嫌いだったりする。