メトロノームの功罪(★★☆毒、混じってます)

誰の心がけが悪かったのか、東京は雨。
正解にしてあげてぇぇぇぇ
俺寄練習はなんと、6ヶ月ぶり。ようやく夏前のここへ来て、演奏予定が少しずつ決まり始めた。慌てて集まってたりして。

さて、今日のお題。
アカペラ演奏におけるテンポ・キープについては、メトロノームを使う、いや、いっそリズムマシンの方が、という議論があるらしいのだが、打楽器奏者のハシクレたる俺としては、あのクリックに合わせるだけの練習に意味があるのか、ずっと気になっていた。
ドラムをやってわかったこと、というほどのものでもないが、実際の演奏では歌だろうと楽器だろうと、メトロノームが鳴ってくれてるわけではないので、最終的には自らが刻めるようになっていないと意味がない。
そういえば、ドラムで曲始まりのカウントをメンバーに送るとき、最初の一打を振り下ろすときは、今でも相当緊張する。ちょっとでも力むとスカした音になってしまうし、単音だったりすると誤魔化しが効かない。思い切りよくいくしかないんだが、ちょっとでも練習不足で自信なさげだったり、雑念が入ると…。
逆にいうと、アカペラの歌い始めにこれほどの緊張感を持って臨んできただろうか、俺は。

話が逸れてしまったが、今日の練習メニューは俺寄でも毎回リズムに梃子摺っている難曲、「Kiss Of Life」。この曲を使って、メトロノーム練習をしてみることにした。
メトロノームを使う場合、普通は4分音符で鳴らしながら合わせて歌うと思うのだが、俺寄ではこれの半分、2・4拍だけを鳴らして歌うことが多い。これだとその間の打点(1・3拍)は、メトロノームに合わせるのではなく、ブレないタイミングを自分で創ることになる。
それにしてもベースが終始16分音符で刻んでいるこの曲では、全く合わないのみならず、メトロノームに合わせようと集中するだけになってしまっているようで、他のメンバーの声に合わせているという余裕が全くない感じ。
そこで方針変更。
テンポは歌い手側が紡ぎ出すもの、ということで、手拍子を叩きながら歌うことにした。
ただ、ここはいつものように2・4拍を叩きながら歌ったのでは合わなかったわけなので、ややテンポを落としてドラムでいう8ビート、8分音符を叩きながら歌うことにしてみた。
そうすると、メンバー間で合わせなければならないポイントが増える。
なにしろ打楽器では、合わせどころが実際には音符ではなく「(打)点」なので、ちょっとズレただけで相当目立つことになるわけ。
実際にやってみると、自分でも今まで普通に歌えていたフレーズが、叩きながらは歌えなくなったりして。
実際、このやり方で叩けなかったり、歌えなかったりするフレーズは「深刻度」が高いので、テンポをさらに落として、手拍子が歌の(音符の)どのタイミングに入るか確認しながら、できるようになるまで繰り返し練習する必要がある。
無意識に通過してしまうところや、メンバーと「叩いている」意識、打点が合わないところ
は「要注意」。特に打点がずれるところが合うようになれば、歌の方のタイミングも自然と合ってくるはずだ。
また、あまり遅いテンポだと、さすがにキープするのが難しいので、この場合にはメトロノームの助けを借りた方がいいかも知れない。

今回のこの練習方法、勝手に「チェンジ・アップ」と名づけさせていただいた。
本来のチェンジ・アップは、打楽器のメジャーな練習方法で、ドラムのどの教則本にもまず掲載されている、メトロノームに合わせて、最初は4分音符、続いて8分音符、16分音符…と音符の細かさを変えていく練習方法のこと(本来は3連符や6連符も含む)。
曲中リフやシンコペーションなんかが入ってきても、テンポがぶれないための、基礎練習だ。

このようにリズムというものは、音楽の他の要素に比べたら「遊び」そのものだ。
コツは、ただ夢中になって「単純動作」(と繰り返し)を楽しむことだけなんだが、自意識やらテレやらを捨てられなくなってしまったオトナが「無邪気に遊ぶ」ためには、いろいろと「理屈」がいるもの、らしい。
「芸術のためならワタシ、脱ぎます!」というヤツだな(違)。
この練習の基本構造は以上のようなところだが、曲やバンドの必要性に合わせて、いろいろと新しい「遊び」にしていただければ。
例えば、8ビートで叩く手拍子をもっと増やしてみるとか、逆に減らしてみるとか。
または8ビートはそのままで、余裕が出てきたら2・4拍をアクセントで打ってみる、とか(俺も遊びの発想が、貧困だな…)。

過剰な自意識だとかテレだとか、余計な雑念が混じって、身体の予期しない部分にちょっとでも力が入ったり固まったりしただけで、全然違うものになってしまうので、本当は疲れきってお互い馬鹿になってしまうくらい十分な時間をかけてやると、練習効果が高いんだろうなぁ…。
いわゆる偏差値(死語!)高い系の演奏をするアカペラ・バンドに限って、グルーヴが甘い、というのは俺の偏見だろうか。
また、このテの練習をやるとよく、「早くなら出来るのに」というヒトがいるんだが、俺の経験上はゆっくりやってできていないことが、早くやれば出来ちゃった、などということは、ほぼ100%ない。こういう練習を少しでもやったことがある人が、そういう「早くやれば出来ちゃう」ヒトの演奏を聞けば、誤魔化しているようにしか聴こえないはずだ。
これが人前で音楽をやることの怖さ、でもある。

そういえば、で思い出したのだが、元ChuChuChuファミリーのベース・小野寺一歩と学生時代、初めて一緒に歌ったとき、ヤツのリズム感に違和感を覚えたので、当時俺が使っていなかったドラムのスティックを貸したことがあった。彼がそれをどう使ったかは知らないが、その後の彼の演奏はみなさんご存知の通り。こんどどこかで話す機会があったら、どんな練習をしていたのか聞いてみたいと思う。
やっぱり理屈じゃなく、叩いちゃうのが早道なんだろうな、という気がする。

今日のまとめ

  • リズムは、他の音楽的要素と比べると「遊び」そのものです。
  • メトロノームに合わせるよりは、自ら紡ぎ出せることの方が大切だと思いますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
  • 早いだけのオトコは、女性に嫌われます(?)。