京浜東北線の、憂鬱

このところ京浜東北線の「大躍進」で、お陰でかつて人身事故の名所とまでいわれた中央線の「悪事」が、すっかり影を潜めている。
このクソがつくほどの暑さの中で、一連のニュースを聞いていると、ツッコミどころが多すぎて笑っちまうと同時に、手前勝手な想像をしては悪態が止まらない。

ここでも何度も書いているが、

くどいほど繰り返し、「異常事態」の説明をしてほしい。

自動改札を抜けて、ホームに上がったらいつもよりたくさんの人が電車を待っていて、ようやくアナウンスで「○○で人身事故…」というのでは遅い。改札を入る前に案内があるべきだし、同じ情報しかなくとも繰り返し放送することで「異常事態が起こっている」ということを伝えてほしい。結果的に現場での混乱を避けることができるのではないかと思う。マイクに向かうことを、恥ずかしがっている場合じゃない。
国鉄時代、そのサービスには問題があったかも知れないが、緊急事態への対応はもっと(公務員なりの)責任感をもって行われていたように思う。今は耳あたりのいいアナウンスは聞けるが、有益な情報はないことの方が多い。

(乗客の立場に立った)必要な情報の整理

俺自身の数少ない(?)経験でいえば、そのアナウンスでの「いい方」で、満足できる情報が得られたことがない。
いつ頃、どこで、何が起こって止まってしまっているのか。
状況説明の能力が低すぎる。
当座問題の解決に全く寄与しない「申し訳ありません、心よりお詫び申し上げます」はもういいって!
第一、天災だったらアンタらのせいでもないでしょ。そのくらい、俺でもわかるんだが…もしかして客をバカにしてるのか?
具体的な情報をあげてもらえれば、駅員に詰め寄る必要もないし、「貨物じゃなく人間」なのだから、自身がどの程度の必要性による外出途中なのかも含めて、迂回経路だって自分で探せるかも知れないじゃない。
どうも案内すべき側の駅員が、乗客と同じレベルで「事故」に対して動揺しちゃってるような気がして、仕方ない。
俺は「DJポリス」が大嫌いなんだが、現状の駅員の案内放送は、ある程度こういう言語化能力の訓練というものが必要ではないかと思うレベルだ。


しかし今回の運転手は、起動するとショートしてしまう「エアセクション」の位置を、事前に把握していなかったんだろうか。
だとしたら「無免許運転」レベルだ。知っていたらすすんで命を預けたいとは思わない。
今のところ他の私鉄で同様の事故で不通になった、という話を、俺は知らないんだが。
事前にそういった訓練を行っていないとすれば、JR東日本の組織ぐるみ、ということにもなる。

加えて今回も、満員の乗客を救出するまでに約1時間半もかかっている。

京浜東北線停電:3列車同時ストップ乗客1時間超すし詰め(毎日新聞
http://mainichi.jp/select/news/20150805k0000e040221000c.html

1時間半といえば、何もない平地ならば俺の足だと15分で約1km。単純計算だと休みなしで6km歩ける計算。実際には線路脇は起伏が多くて歩きにくいものなので、4〜5kmというところか。

ここからは俺の勝手な妄想だが、俺が今回の事故に遭遇していたとしたら…。
これが「停電」であることは、車内が消灯しており、空調も止まったことから、改めて案内放送がなくても判断できる。電車の動力源である電気が断たれた、ということだ。
電車そのものの故障なのか、それとも外部の電源供給のどこかで問題が起こったのか。
今回、現地周辺で停車した3本の列車内へ、停車「原因」についての説明は、どのくらいたってからだったのだろう。
電車動力の命綱である架線が「どこかで切れた」ということであれば、復旧には相当な時間がかかると思われる。2時間か、3時間か…。
毎日乗っている通勤電車の車窓なら、次の駅はどこで、出発したばかりの前の駅と次の駅までの距離とどちらが近いかを考える。
次に欲しい情報は、どこで架線が切れているかだ。
歩こうとしている進路側だった場合は、距離があっても遠い側の駅への避難もオプションとして想定する。
最後は並行在来線の有無で、今回事故のあった京浜東北線では、東海道線横須賀線が並行して走っている区間もあった。むやみに線路内に降りると、東海道線横須賀線を緊急停止、不通にさせてしまう可能性が高い。
こうした具体的な情報が、仮に閉ざされた車内で車掌からもたらされないまま、だとしたら、まずは車掌室に詰め寄って、これらの説明を求めるしかないだろう。
なんなら車掌から、「乗客が暴動寸前」と警察の出動要請をしてもらっちゃった方が、対応が早かったかも知れない。
そんな俺の「堪忍袋の尾」の限界は、遠い方の駅までの「想定徒歩時間の3倍まで」くらいではないかと思われる。
俺でもドアコックに手がいっちゃうだろうなぁ〜。「アンタらには、俺の命を預けられない!」
実際、一部報道では、後続の新子安駅手前で止まっていた電車内で、ドアコックを乗客がひねってドアを開けたらしい。開けた人間は車内の空気入れ替えが目的だったかも知れないが、一部の乗客は線路に降りて自力で駅へ向かったということだ。
実際、夜だったとはいえこの酷暑の中、空調の止まった満員の車内では、高齢者、子どもから脱水症状を起こすのは明らかで、生命に関わる人も出ていただろう。体力が残っているうちなら自力で駅へ辿りつけるが、そうでなければいまさら救急車なんか出動要請したところで、何台あっても足りるわけがなく、そうなってしまってから出動要請を受ける側も、仕事とはいえ災難でしかない。こういう被害の拡大は、いうまでもなく人災だ。

何でこんなに、乗客救出まで時間がかかってしまったというのだろう。
2011年3月の、北海道・石勝線で起きたトンネル内列車火災では、JR北海道はマニュアル通りの対応をしたために、却って状況確認に時間がかかり、避難誘導が遅れたと取れる説明をしていた。多くの乗客が口々に、「指示通りにしていたら、全員死んでいた」といっていたのは記憶に新しい。
災害社会学に「エリートパニック」ということばがある。本来避難指示を出さなければならない立場にある者が、指示を受ける側がパニックを起こすことを恐れるあまり、避難に必要な情報まで秘匿封印してしまい、実は災害が自身にこそこういった「パニック」を起こしていることに気づかない状況を指すらしい。
しかし、一時期事故続きだったJR北海道に、JR東日本から「指導員」を送る余裕がどこにあるのかねぇ。少なくともJR北海道を笑ってる場合ではないな。


閑話休題
先日、うちの職場でも火災を想定した全館避難訓練があった。
ビル管理会社が行うもので全員が参加するわけではなく、社員を含むせいぜい5〜10名の参加者以外は通常業務。俺も当初、参加予定者の中に含まれていたのだが、(丁度前回の)腰痛完治直後だったこともありすっかり「傷病兵」扱いで、訓練当日になって交代の配慮をいただいてしまった。
俺に代わって参加した同僚によると、具体的な内容は前職で参加したものと同じだったようだ。
予定の時間に非常ベルが鳴り、緊急放送が入ったのだが、の〜んびりしたオッサンの声で緊迫感皆無の、原稿棒読み。
「状況を確認中です」の後の、「○○区画で火災を確認、避難してください」の放送が再び入るまでに、相当長〜い時間が経ったように思われた。
っつーかこの訓練、アンタ達のためだよなどう考えても。
恐らく消防署に、実施と報告の義務でもあるのだろう。
こいつらに命預けてて大丈夫なんだろーか、と俺は却って不安になったんだが。
万が一の際に避難誘導があっても、ちゃんと根拠を示してくれない限り、俺はこいつらの指示には従えないかも知れない。

JRにしても、この管理会社にしても、同じ現場の人間としては、会社の体面よりも、乗客の命を守ることを優先していただきたいものだ。

当夜の京浜東北線は横浜港で花火大会だったそうで、混乱に一層の拍車をかけることとなった。
某テレビ局の女性アナウンサーが、明らかに神奈川「新聞花火大会」というニュース原稿の読み方をしており、あの天下の「神奈川新聞」を知らんのか、と思った、場外乱闘〜。