生きていく力

足首、膝裏、ソケイ部、臀下部、へそ周り、乳首、手指から肘、首回り、そして顔。
思い起こせば、これらほぼ全ての部位に、皮膚炎があったことになる。今の俺は幸いにも症状に悩まされることはなくなった。
両足首には今でも「ミギー」よろしく、症状があった部分だけ白くなった皮膚が、まるで溶接跡のように残ってしまったが、日頃目立つ場所でもないので俺にとっては目に入る度にいとおしく、懐かしい思いに駆られる。アトピーそのものに起因する痒みはもちろんだが、外見についても日常生活で「健常者」との違いを意識させられる場面はほぼ皆無だ。従って、日常生活上もこれらが原因で不便を感じることがない。
もっとも、病院へ行けば「アトピー性皮膚炎」の認定がされて、治療行為が行なわれるに違いないのだが。現状維持なら俺から病院に行く理由はない、といえる。
「病気」の定義には、(統計)医学的な定義だけでなく、社会的な定義というものが存在していて、本人が社会生活上、不都合を感じていなければ、「健常」であるといっていい。

生きる力を借りたから
生きているうちに返さなきゃ

俺の大好きな歌の1曲、バンプ・オブ・チキン「花の名」の歌詞の一節だ。
俺はステロイド剤を絶つことになってから足掛け10年以上、好きな音楽にはもちろん、影に日なたに、たくさんの人たちに励まされ、助けられてきたと思う。その思いは年々、強くなっている。