ナレーター・デビュー(爆)。

会社には、こういうときのためにスタジオがあるのは知っていたのだが、特段の用もなかったので、今まではどういう人たちがどういう作業をされているのかも想像の域を出ず、立ち入ったこともなかった(録音がない日に、通路代わりに向こう側へ通り抜けたことは何度かあったが)。

機材、と呼べるものがノートパソコン一台、だったことには少々拍子抜け。あとは卓上マイクスタンドに、ウインドスクリーンをつけたSM-58 が1本あっただけ。担当者が対面で座ってこのノートパソコンを操作しており、どうやら、「うまく聴こえるスイッチ」(笑)はこの中に入っているらしい。
ガラスの向こうには仰々しく調整室もあるが、今や全くの余剰スペース。本来あるはずのミキサーやマルチトラックなどの機材も既に撤去されてしまっている。今どきのローカルFMの収録、みたいなもんか。
まぁBGMが被るわけでもない朗読一本なので、確かにミキサーが必要な仕事でもないが。

俺自身は東京生まれの東京育ちなこともあり、それでもイントネーションの指摘も数箇所受けたが、担当者を驚かせるほどの順調さで、無事終了。
実際の録音作業では、歌をやっていたことが役立った、と思わされることがいくつも。
広めの音域はそのままイントネーションやニュアンスの違いに応用できる。
基本的に句読点まで一息、でなくともよい、とはいわれていたが、長い文章でも(運良く噛まなければ)ブレスが切れることはまずないし。
俺には全体の収録(時間)枠が読めないので、事前打ち合わせでは予めやや早口での練習をしておくよういわれてはいたが、いわれなくとも実はそのつもりだった。事前に自身に何らかの「負荷」をかけておけば、本番で余計な緊張をせずに済むのは、音楽活動では何度も経験済みのことだ。
メンタル・コントロールの面が一番大きかったか。
作業場となった録音スタジオ独特の雰囲気には、気圧されることもなかった。日頃出入りしている音楽スタジオと根本的な構造は違わないので、どういう作業を経るのかも勝手知ったる状況。
後日、読み直した部分を繋いだりして編集してもらった音源を、クライアントに送った上で修正依頼が返ってこなければ、これで「校了」の予定。後は原稿そのものに後日修正が入っていた場合の録り直しがあるかどうか…。

本人気負っていた割には、なんだかあっけなかったな。
昨日までの会社帰りの地下鉄では、周囲の方々にご迷惑、というか恐らくある種の不安感を与えてしまったと思うが。トンネル内の騒音をいいことに、毎日声を出して原稿を読んでたので、さぞかし不審人物に見えたことだろう。