「脱力」

f:id:oku_anijin0406:20190321173931j:plain
「レッツゴーならしの!」 という曲がある?(Y/N)

誤解を恐れずとてもざっくりした言い方をすると、
クラシカルな合唱といわゆるアカペラとの一番の違いは、ステップを踏めるようなリズムがあるかどうか。
特に黒人系音楽であるブルースやジャズなど、元々踊ることを前提としたスタイルの曲を想像してもらえば顕著だろう。


自身が楽器演奏を経験させてもらって一番強く思ったのは、キーボード担当のときはそれほど感じなかったのだが、ドラムの場合は、何はなくとも「脱力」が基本だった。
緊張で手が震えてしまう、というのは論外だが、身体の一部でも硬くなってしまったら練習と同じフレーズすら叩くことができなくなる。同じパターンのリズムが続くかと思えば、シンコペーションなど合いの手や複雑なリフが不意に入る(または入るように要求される)。
緊張で身体の一部分でも硬くなっていると、このような不意のリズム変化に対応できない。
もっとも楽器でも歌でも、本番で無用な緊張しないためにやっておくことは、わずかばかりでも不安で硬くならないよう入念な練習、に尽きるわけだが。
他の楽器と違ってドラムはひとり座って演奏する、という気安さ(?)もあってか、慣れというのか、ドラムやシンバルに囲まれて座ると演奏前の小気味良い緊張感とともに、身体は柔軟でいられるようになった。
実際には叩き始めて身体を動かしていたら徐々にいつものペースで緊張が取れた、ということもあるのだが。その点、演奏の際に身体を動かさざるを得ない楽器は、ある意味ラクかも知れない。
というわけで俺の場合、実際にドラムを叩いてみて培われたのは、リズム感というよりは脱力感(^^;だった。

巷間巧いといわれるドラマーの演奏ほどでなくとも、耳に心地いい演奏のドラムは、テンポ自体はメトロノームで測っても決して速くなっていないのに、全体としてちゃんと「前に転がっていく」感じがあって、それが結果として曲の盛り上がりを構成している。これはリズムマシンでは作れないものらしく、アコースティックな「生ドラム」演奏ならではの心地よさだ。
異論はあろうが、俺はこれが一種の「グルーヴ」というものだと思っている。

アカペラでも例えば、ボイパはドラムの口真似そのものだし、ベースもジャズ・テイストのコントラバスからエレキベース、スラップ演奏まで様々な口真似が主になる。バックコーラスの役回りだってその実のイメージは、バッキングギターだったりホーンセクションだったりするものだ。
そういうわけでアカペラも楽器演奏に範を取れば、もっと脱力に注力(?)すべきだと思う。
冒頭述べた通り、アカペラと合唱の違いがリズムだと考えれば、まだまだ演奏におけるリズム、グルーヴは、多くのバンドで「磨く」余地がある。
「歌う」というと腹式呼吸運動の特殊性から、楽器と違って脱力しきれない部分はあるものの、なんとかグルーヴ感を出そうとオーバーアクションをして、却ってリズムの軽快さ、切り替えの身軽さを犠牲にしている演奏がまだまだ多いような気がする。

ここまで身体を動かさないとグルーヴを伴った声が出ない、という理屈も、わからなくもないが。
例えばこれがデモCDを作るような録音の場面だったとしたら、出音にちゃんと顕れていなかったら(動画のようには)伝わらないだろう。
大事なのは両方の歌い方ができるようになること、少なくとも今よりも表現の幅を広げること、ではなかろうか。

音程なんか多少狂ったって生演奏の勢いで客席を巻き込んで、どんなリズム音痴(失礼!)なお客さんでも思わずステップを踏み出したくなる、そんな演奏ができるバンドがもっと増えてきたら、カジュアルな音楽もまだまだ捨てたもんじゃないと思う。
いかなる複雑なリフやフレーズをアレンジ上で要求されても、記譜通りのタイミングでよどみなく歌い流せること。
そのためにもまずは身体も心も「脱力」、その上で必要な部分には瞬時に脳から指令が出せるようにしておきたいものだ。

…あぁ~、テーマがあまりに膨大すぎて、腰砕け…(><)
(実践編に続く…?)

f:id:oku_anijin0406:20190324171707j:plain
危ないよ、歩きスマホ