帰り道

京浜東北線の車内で、潤哉さんとの会話。
アカペラは、当然1パート1人なので、自分だけが歌えるようになると、自分の中で「仕上がって」しまうヒトが多いというのが、カルチャーショックだったことがあるという。
ある程度の自負、というかそうやってでも自身を鼓舞しないと、とても歌ってらんない、という部分も確かにあるんだが、それにしてもそんな俺にとっても、バンド全体としての演奏の「仕上がり」は、あくまでもメンバー各人の力量の外だろうに、と思う。ともすると独善的になりがちな、アカペラという活動ジャンルの、落とし穴かもしれない。
今夜の俺の顛末といい、実に個人的には耳が痛い話だった。
もちろん、潤哉さんにそんな意図があって話していたかというと、多分俺ともども、既にかなりな酔っ払いだったはずで。
ただ、俺は不心得者なので特定の「神」を信じたりはしないんだが、時々こうして、自分以外の他人の口を借りてこころに響いてくることばというのは、タイミングであったり、その内容であったり、ひとりで悩んでいたことの背中を押してもらえた気がしたりすると、こんな些細なことにこそ意外と、目に見えない、なんだか抗い切れない力が働いているような気がして、結構信じちゃう傾向がある。
コトダマ、というやつ。
俺にとっては唯一の、「信仰」といえるものかも知れない。


渋谷でリーダー夫妻と別れ、余裕を持って間に合った終電はしかし、途中駅止まり・・・酔い覚ましに、歩くとするか。
駅を出ると、電車の来なくなった踏切のど真ん中で、若い男女、いい争い中。
「じゃあ、どんな気持ちで今夜わたしのところに来たっていうのよっ!」
と女性の涙声。
その場に立ちつくすだけの男性(いい争いに、なってませんか)。
・・・いや〜、今日一番、面白いモノみせていただきました。人生、人それぞれ。
行く手の夜道、真正面には、さっき横浜で見上げたときより、幾分黄色く染まった上弦の月