初心、忘るるべからず。

自前のスネアだけはお守りがわりに持参したが、まぁなんと心細いことか。
今までスネアだけでなんとかしていたのが、いきなりフルのドラムセットに座らされて、それだけでも何かの罰ゲーム感覚。これらの楽器を、俺にどう叩けと? な気分。
何とか叩かねば、という義務感からタムに手を出して、そんな付け焼刃でなんとかなるわけがない。シンバルなんか借り物に触るように恐る恐るだし。
借りてきた猫、のようだったのは俺のほうだ。
未だに演目ですら、何をどう演奏したのか、全く思い出せずにいる。

アカペラ仲間で客席に居合わせた人たちからは、俺がドラムに「埋まって」座っているので、何かの出し物かネタと勘違いされたらしい・・・「こんな隠し芸があるとは」とも。
このところ顔なじみのPA卓担当氏からも、「今日はドラム、ですか〜」・・・ひとりだけ本番直前の駆け込みでリハもせず、ご迷惑をおかけした。
終った途端、頭上のマイクにアタマをぶつける。この位置にマイクがあることなぞ、凡そ歌ではありえないのだった。

ともかくベースとドラムは止まれないんだよ何があっても。そんな最低ラインはクリア、できたのか?
あと何小節でキメ、というプレッシャーも・・・唄とは違う脳ミソの使い方。
盟友・Tanto Gutsの面々からは、相変わらずきっちりしたテンポを褒められ、やや音量が小さかったと控え目の感想・・・ということは、恐らくほとんど聞こえなかったのでは・・・?

終演直後に酒を注文していたカウンターでは、自らもドラムを叩くという、ロックっぽい男性から、「ブラシって特殊なものですよねぇ」と同情(?)の声をかけてもらえたのも嬉しかった。かようになんだか、ぶっちゃけたヒトが多いような気もする、楽器バンドの人たちの方が(唄ってやっぱりそもそも、内省的なのか)。

とまぁ結果、散々だったわけだが。
ここがスタートだよきっと。誰にとっても。
(歌のときは、どーだったっけか)
初心(というかこの挫折経験はずっと)、忘るるべからず。

・・・演奏前から酒が飲めるのは、唄よりいいな。クセになりそ。