昨日ご挨拶が相次いだように、今朝は9:00から、2部署の移転作業。

平日と違い、俺が開錠に回る前からすでに、移転作業をする部署が作業を始めており、普段の朝と逆に「早いね」と声をかけられる。
久しぶりに開かれた正門から、トラックが4台。
この一番広い門が開かれるたびに、この建物の解体の日が着実に近づいている。
今生の別れでもないだろうに、なんだかこれ以上、顔なじみの人たちと話すのがいたたまれなくて、ひとり事務所へ。
PCでかかっちゃった音楽が、たまたま”Black Forest”(小曽根真)だったから、ツボにはまりすぎて益々憂鬱に。今の自分の気持ちが音にできたら、ピアノで自由に表現できたら、きっとこんな音・・・とても難しくて弾けないが、こんな風に流麗に弾けたら、気分が晴れるかも。どこかに譜面、売ってないかな。
とりあえず手を動かすことから。昨夜電話連絡を受けていたPCのメンテ。

この建物が、人のように意思を持っていたとしたら、今の窓からの光景はどう映っているだろう。一度は学校としての使命をまっとうしたはずなのに、また終わりを重ねることになってしまった。「ゆりかご」を思わせるピアノの調べを聞いていると、この何の変哲もない建物が、中で働く人たちを、関係を、育んできたことを、その時間の長さを思った。

最後に設置したエアコンは、まだ3年と使っていない。移設のための見積もりを取ってもらったことがあるが、新設した方が安いという結論になった。都心であるこの界隈では、建物ですら立替のスパンが短い。ミッドタウンが開設されたのは記憶に新しいが、あんな高くて頑強な建物を建てられる技術があるのに、今ある建物を安価に補強することはできない。
何よりその「場」に宿る人の想いが、置いてきぼり。

つくづくヒトがヒトとして暮らせるところじゃないんだな、この国は。
移転作業の合間、福祉系の部署の人と、そんな与太話をした。

いよいよ気分が落ち着かなくなり、カメラを持って館内外をうろうろ。なくなる前に、できるだけ写真に収めなきゃ、と気ばかり焦るここ半月ほどは、そうはいってもまったくカメラに触れられなかった。そんな気分になれなかったのだ。今日のシーンは、収めておかなければ後悔する。目にする見慣れた景色がこういうときは、「モノクロに見える」とよくいわれるが、今の俺の目は、色として映してはいるのに、色として認識できていない感覚。
しらじらしいほどの快晴、一面新緑色のサクラの樹の下で、トラックへの積み込みは、プロ達の手際で、1時間ほどで終了してしまった。