本番にいたるまで

・・・それでは乗船までしばらくの間、アカペラ・コーラスの演奏をお楽しみください。
「今日は乗船待合所で、こんな趣向があるのね」
「そうだよ。この前下見に来たときは、クラシックの演奏だったけどね。毎回出演者が違うみたいだ。」
「今日、私と逢うために、わざわざ下見まで・・・?」
「ふたりだけで逢える貴重な時間だからね」
「これ、いい歌ね。演奏もうまいし」
「ペンギンハ(♪Piii〜)スってアカペラ・バンドらしいね。東京と横浜を中心に活動しているってさっきいってたよ」
「ステキ」
「こんな素敵な場所に連れてきてくれたヒトのことは?」
「もちろん・・・」
一面薄紅色に染まった東京湾のむこうからあらわれた豪華客船が、丁度桟橋に横付けされるところ。
(つづく・・・わけないじゃん)
あ〜、冷や汗でてきた。今度こそ伸ばそうと思ってたけどもう限界っ! 床屋行っちゃおっと。「俺を三分刈りにしてくれっ!」。
どうにも、クサいセリフって〜のは全く思いつかん。

ええ、こっちが人並みに幸せなら何の文句もないんですけどね。
悪夢ですよ悪夢。自分の頑張りが全く無意味な世界。
な〜んて今更そんなことじゃ、オチませんよモチベーション。こちとらプロでもない代わりに、細々とながらもずっと歌い続けてきてるんだから。
と自らの経験(だけ)を売り物にしている、現場主義の俺なわけだが・・・さすがに前日は(別の理由で)ちょっとオチてたんだよ。ここんとこ仕事が忙しかったこともあるけど。
だいたい俺が、他のメンバーへの影響も気にかけずに、こういうちょっとスネた反応するときってのは、かなり本音に近いわけで。それだけ今のバンドがいい人間環境ということでもある(他のメンバーがずっとオトナだということなんだけどね)。
毎回甘えさせてもらってます。
当然、そんな俺を諌めるメールが返ってきたりもして、ウチのバンドには修羅場経験豊富なメンバーが揃っている、ということを改めてとっても頼もしく感じたりして。こらこら、どこが「現場主義のオトコ」なんだか。

そんなこころがけがよかったのか悪かったのか、ここ数日になかった涼しい土曜日。同じとこで先週干からびかけたとは思えないくらい。一面曇りで焼け付くような日差しもなく、潮風のある周辺のビルの電光寒暖計は、27℃を示していた。

お手伝いする予定だったステージ組みは既に済まされており、会場の担当者とご挨拶。
14時にはまきごんも合流。声出しの場所には事欠かない。というか昨日までの炎天下だったらそうはいかなかったが。
大変お日柄もよく、船上結婚式が2件も。船のダイヤが若干違っていて、人の出入りタイミングもつかめず、中々主催者側からリハのキューが出ないので、半ば音響チェック断念か、というムード。それでも全然、緊張とは無縁。俺だけでなくみんなも、動じなくなったよなホント。15分遅れくらいで、簡単に音だし(予定通り)をさせてもらった。
待機中のステージ裏では、御トシ30歳になったばかりのまほちゃんが、本人MCの構成に苦慮してるのに、やたらにいじられて(いじめられて?)ました。ヨッ、人気者。

不安があるといえば先週見学した際の客席の雰囲気で、演奏内容がクラシックだったせいもあるだろうけど、みなさんお静かな方々ばかり。バラードはともかく、リズムがあってなおかつリードの数曲を、どうやったら軽く歌えるのか、軽く歌ったらどういうことになるのか、イメージイメージ。ある意味聞きなれた曲の再構成という作業で、これはこれで個人的に面白かった。