かねて念願の平日休み(代休)

風は強いが天気は春霞か、気温は高い。
これはいよいよ、江ノ島に行くしかないな。WBCがどうなっていようと。
小田急線で行くのか、東海道線で行くのかすら決めないまま新宿へ。結局、乗りテツとしては湘南新宿ラインボックスシートが恋しくて、埼京線の人身事故の影響で混雑していたが、却って1本見送ったら逗子行きには座ることができた。
江ノ電へはなんとなく藤沢側から行くことが多い。しかし、今日は乗っているのが逗子行きだから、大船で乗り換えることもなく、そのまま横須賀線方向で鎌倉へ。
鎌倉駅の、こぢんまりとした江ノ電側の出口を一旦出ると、江ノ電には「のりおりくん」という一日乗車券が。元を取るほど乗るかどうかはわからないが、こういう営業努力には協力したい。いちいち切符を買いなおしたり、無人駅で車掌さんの手を煩わさなくていいので、気分的にもラクだ。
まずは鎌倉駅に隣接する踏み切りあたりでワンカット狙ってみようかな、と商店街を抜けて。一般的に、鎌倉に期待される古風な風情、というよりはもう海の近さを感じさせる色使いの建物が多かったり、不意に覗き込む露地がどこも画になりそうに魅力的だったりする、空気感。

「旧安保小児医院」の古い洋館。小学生の頃、治るはずもないアレルギー体質を「治す」名目で、遊びたい盛りに一日おきに通わされていた、街の診療所を思いださせる。ここまでオシャレじゃなかっただろうが、ちょっと前までは町医者というと、どこの町にもひとつくらい、こうしたシャレた建物があったような。
次の駅の名前も距離も、見当がつかないので、一旦鎌倉駅へ戻り、いよいよ江ノ電へ乗った。
観光客でごったがえす休日昼間の比ではないが、平日の今日も6運行のうち、重連(エノデンでは2両編成が1単位、2+2=4両編成のこと)が5運行。
ひとまず車庫のある極楽寺駅まで行ってみようか。

駅の風情は、写真部で撮影旅行に来た高校時代から全く変わっていなかったが、車庫の方はすっかり近代的な建物で覆われてしまい、車庫の中をうかがい知ることができなくなっていた。線路脇から遠目に覗くが、「お目当て」はどうも見当たらないようだ・・・と思っていたら、丁度鎌倉から戻ってきました、今やエノデンで最古参、1本だけとなってしまった300形。

これをカメラに収めてから、江ノ島方向へ線路伝いに歩くことにした。若いお母さんに手を引かれた男の子が、同じように俺の少し前の陽だまりを散歩しているのが、なんだかほほえましい。

先日の銚子電鉄と違い、ここは一日中12分間隔。駅間の位置にもよるが、単純計算で6分に一回、上下どちらかから電車が来ることになる。途中ここは、と思うままに線路沿いで歩みを止めては、カメラを構えながら列車を待っている時間が一番楽しい。観光名所にいるのとは全く違った時間が、流れていく。
稲村ガ崎駅の先で、海にぶつかった線路は右にカーブ。正面には江ノ島が浮かぶ。

歩いていく進行方向(藤沢側)にカメラを向けているが、ずっと逆光になってしまっていて、撮影にはかなり厳しい環境だ。そのファインダーの中では、もう春の陽の光が踊っている。

次は、海を背景にエノデン、という誰もが一度はチャレンジするカット。

この写真、右手に切れている屋根がファーストキッチンで、海を眺めながらここで遅目の昼食。ずっと強い風にあたりっぱなしだったせいか、思った以上に疲れが出た感じ。
ヨットの帆をかたどった看板の七里ガ浜駅から、再び江ノ電に乗ったが、すぐ次がドラマなどの撮影でもよく使われた鎌倉高校前駅だったので、反射的に降りてしまった。
ドラマや写真で見るように波の音を愉しむ、というには、実は国道を走る車の音がかなり耳障りだが、電車と海の組み合わせは、どこを切り取っても画になる場所。

海辺の風が気持ちいいので、電車に乗らずこのまま、国道を腰越駅へ歩こう。
腰越駅からは、エノデンもうひとつの見所、併用軌道。

車だらけの道路の真ん中を電車が堂々と走っていく。電車は車のようにハンドルを切ってよける、というわけにはいかないので、ここでは車が電車に遠慮。ぶつかったら・・・全く相手にならない。
江ノ島駅のすぐ近くに、お店の壁にエノデンのアタマを埋め込んだ、江ノ電もなかの「扇屋」さんを発見。

本物のエノデンの線路脇。この600形は、元タマデン(今の東急世田谷線)からエノデンに来て活躍していた経歴。
なにせこの強風、江ノ島へ渡るのは断念。周囲はなんとなく暗くなりつつあり、夕陽を見るなら鎌倉高校前に戻る、というのもアリかな、と思いつつ、それにはまだちょっと時間がありそうなので、「のりおり君」を活用して、一旦藤沢まで乗りとおすことにした。
藤沢駅では改札脇、「江ノ電の珈琲屋さん」でブレンドを飲んで少しぼーっとした。ずっとカメラを構える目になっていたらしく、視線を合わせず目を泳がせていると、疲れが少しずつゆるんでいく。
再び改札を抜けてホームに戻ると、丁度入線してきたのは先ほどの300形。一気に乗りテツモードに戻る。高校生の帰宅ラッシュが一通り終ると、なんだか車内は空いてきているようだ。夕方のラッシュって、ないのかな。
そう思っていたら暗くなるにつれ、どこでどうやりくりしているのか、「重連」は2両編成になっていた。
春の、ややぼんやり煙った薄紅色だったが、戻ってきた鎌倉高校前駅で、愛すべき電車とともにカメラに収めて、今日の撮影を終了。帰りの電車を待つちょっとの間、暮れていくホームで潮風を満喫した。

そういえば今日は平日だから、渋谷でグルーブラインの公開生放送、やってるな。まだ間に合うか。