ハミングウェーブ・おやじってブラボー合唱団ジョイントコンサート

http://www3.atwiki.jp/oyabura
前夜メールで急に「休みが合ったので、押しかけます」宣言をしたら、出演者(大学時代の合唱部先輩なのだが)から大変恐縮されたメールが返ってきた。
失礼な言い方をお赦しいただくとして、ここでも何度か書いていることだが、音楽演奏自体のウマヘタには、あまり興味がないんです。単に技術的に上手い演奏を聴きたければ、それなりのところに行けばいいわけで。
自身が今の形で歌うようになってからもう何十年も、俺をひきつける演奏は、そのグループがどれだけはっきりと、自分たちが「やりたいこと」をもっているかどうか。それが具体的な形になっていようがいまいが、そういう演奏は観ていてすがすがしく、気持ちがいいものです。

加えて最近強く思うのは、音楽との関わり方に、正答がないんだよね。
老いも若いも、あるいは富めるも貧しいも。特に後者は、今の俺にとって切実な問題も含んでいるんだけど、それだけに参考になりそうなものは何でも感じ取ってやろう、と思っていて、そういう意味では経験年数すらも上下関係たり得ない。

それにしてもいいホールです、葛飾区アイリスホール。途中迷子になっちゃったときには、どうしてくれようかと思ったが。
開演後に駆け込んだために壁際席だったが、ソリストが一歩前に出た途端に、声が緻密に聞こえてくる。一面レンガに見えた壁は木材でできていて、耳に届くアコースティックな音が心もち柔らかい感じがする。
この第2ステージは、男声合唱団による映画音楽シリーズ、といったところ。
俺寄で例の映画「レ・ミゼラブル」公開以前から歌ってきた「民衆の唄」も聞けて、これはラッキー。知っている曲がプログラムに入っていると、聞いている方も俄然、テンションがあがります。
それにしてもこの2ステが終わって、大量に客席から引き上げた方がいたのは、何だったんだろう。他人様のご事情はとんと存じ上げませんが、逆に他人だから、ちょっとくらい苦言を呈してもいいだろう。3ステから駆けつけた方々も多く、お陰で座れないということはなく客席が入れ替わった感じ、にはなったが・・・(2ステから入った阿呆は俺だけだった模様)。

この後、指揮者・伴奏者の方々のアンサンブル・ステージを挟んで、最終ステージは合同演奏。
事前に全く演目を知らなかったのだが、これから演奏される「故郷」という曲、俺の中では国歌にしたい歌ナンバー1なのだ。
かつて福島の高齢者施設に2度ほど、慰問演奏に行ったことがある。そのときも練習を含めて何度歌ってもうるうるきてしまったのだが、今日もやっぱり、聴く側に回ってすら涙がじわっとわいてきた。歌詞に感情移入していろいろと勝手な想像しちゃうんだから、歳をとったもんです俺も。それだけ想像力がついた、ということだろうけど。

その後、東日本大震災があった。

「今、一番聞きたくない唄」、とテレビのインタビューでおっしゃっていた被災者の方もいたが、それだけ唄そのものに力がある、ということだろう。日頃はそんなに意識していないのだが、最近ではこうして何かのはずみで、俺自身も東日本大震災とリンクしてしまう。
今日も手元のプログラム別紙に、NHKの応援ソングとしてすっかり有名になった「花は咲く」(作詞・岩井俊二 作曲・菅野よう子)の歌詞が入っており、どうやらこの後、客席ともども全員合唱があるな、と先読みしていたこともあるが。
全国の日本人が俺と同じように、また阪神淡路の時と同じように、等しくなんらかの形で心に刻み込んでしまったことだろう。
演奏は混声ステージの方が男声合唱団のアラが目立たず、これは俺自身が歌っているからつい男声に耳がいってしまうこともあるんだろうが、オヤジたち、一緒に歌う女声合唱団にいいとこ見せようと頑張っちゃったんでは? などと愚考する。元々こういう混声合唱団かと思ったくらい、何の違和感もなかった。

ステージ上で歌っている先輩を拝見しながら、なるほど観る側に回ると、こういう気分なのかと思っていた。
大学時代にほぼ現在の形(男声アカペラ)で歌うようになって以来、当時やそれ以前の知り合いが、俺たちの演奏機会に駆けつけてくれることがあったが。
あれからもう何年も、変わらずに歌い続けている姿って、それだけである種、圧倒されるよな、やっぱり。
以前、OB合唱団の演奏も観に行ったが、あれは元々が現役の演奏会にOBが押しかけた(?)という企画モノだったし、顔見知りのOBが束になってステージ上にいたけど、こういう感慨には何故か至らなかったな。

という風に、聴く側はそれぞれ好き勝手な想いを抱えて聴いているわけで。
なので演奏者側としては、プログラム上、ここらあたりでバラード歌ってお客さんを泣かせとくか、などとお客さんの感情を操作できるかのような、おこがましいことを考えるものではない、といつも思う。そういう底の浅い演奏は、聞いている方にもすぐに「驕り」として伝わっちゃうもんだ。これは自戒を込めて。
もちろん今日の演奏がそうだったというわけではないよ、念のため。

最後は「花は咲く」を、この手の全体合唱があまり好きでない俺にしては珍しく、気分ノリノリ(というか7割大の声量)*1で歌わせていただいた。

やっぱり音楽って、いいよね。
理屈抜きに、そう思えた演奏会だった。

*1:全力で歌っちゃうと、俺の声量だとソロになっちゃうもんで・・・。