復興、3年目。

たまたま仕事が休みな火曜日。
だったので、特番ぞろいのテレビを見てみた。
偶然に目にした、NHKスペシャル*1
当初は、行政主導で住民説明会や意見交換会が活発に開かれる模様が報道されたりして、復興だけではなく、誰もが暮らしやすい、安全な街づくりが力強く、着実に進んでいるかのように思われたものだ。しかし、こうして企画・立案された理想的な街を実際に建て直すには、考えてみれば当たり前だが、延べ10年の月日が必要だという。
テレビや新聞を通じての情報だけで、被災地からこれだけ離れて暮らしていると、やはり住民の方たちの「実感」に寄り添うことは、本当に容易ではないと思う。
ある若い母親は、
「心はまだ故郷にあるが、生活はしなければならず、身体は(今の)新しい住まいにあって、3年経っても結論が出ないのがもどかしい」といっていた。
そして、こうした現実の前に、住民流出が止まらない。
高台移転を決めた集落の6割の住民が、復興の遅れにしびれを切らして転出を決めている、という、震災復興3年目のデータ。計画通りに「復興」したとしても、住民の4割しか住んでいない、ゴーストタウンになってしまう。当然この間も、自治体の税収は大幅に減り続け、今後も計画通りに復興を進められるかどうかも不透明だ。無理に復興を進めて財政破綻をする自治体も出てくるかも知れない。
その一方で、女川町モデルとして紹介されていたが、ある程度の移転プランが出来上がったところで住民との対話集会を終わりにせず、現在も継続しているという。難しいことはわからないが、国への予算申請の際にも、予め修正(規模縮小)を想定した復興計画を策定、現在も住民と意見交換をしながら柔軟に運用しているらしい。
3/14だったかの予算委員会質疑で議論になっていたが、1700億円超にのぼる復興予算の配分を決める「民間」団体公募に関して、公募・審査期間にはポスト(私書箱?)しかなかった法人が「選定」された疑惑があると報じられていた。旧態依然の予算消化システムを改めないばかりか、相変わらず天下り先確保に跳梁跋扈している輩が透けて見える。
こうした中、「復興災害」という新語も生まれているらしい。
阪神淡路大震災関連で、新長田の事例を紹介していたのは、TBSだったろうか。
行政主導で地域人口と購買力予測を誤った結果、巨額の復興予算と税金を使ってシャッター通りならぬ大規模ゴーストビルを造っただけの結果に終わったのだという。ある程度の賑わいを「演出」するためには、却って小さなスペースにいろんなものを詰め込んだスーパーやコンビニ規模の方が、人寄せ効果を得られる場合も多く、「大きいことは、いいことだ」という時代ではないのだが。
街づくりに関しては、「女性の視点が重要かも」との専門家のコメントが印象的だった。ステレオタイプないい方をすれば、役人をはじめとするオトコ連中は、仕事で昼間は街に「暮らして」いないのだ、実際問題として。その地に根をはり、子どもを生み、育てるのは女性なのだ。もちろん今は、男女ともにいろんな生き方の選択ができる時代ではあるのだが。
何かと資源の少なさが強調される我が国だが、マンパワーだって限られている。ましてやこういうときに、女川町の例のような柔軟な頭で仕事ができる行政マンが、どのくらいいるのだろうか。現場作業員も不足している。今年度の予算消化率は、建設関連に限っていえば70%程度だったという。もう年度末で、だ。今更ながら、本当に東京オリンピックは必要だったのだろうか。
政府主催の慰霊祭では、総理大臣がこの3年間の復興の成果を強調する発言に終始していた一方で、足繁く被災地を回られた天皇陛下の、国民に寄り添ったおことばの方が、俺には印象に残った。被災地の方々の日々の暮らしに思いを巡らすことができていれば、総理の発言も、もう少し謙虚さが感じられるものになったのではないかと思う。
このほかにも複数の特別番組で、いろいろと気になるトピックが紹介されていた。
福島県では、県立病院以外での甲状腺検査(診断)の実質禁止、放射線被爆量の測定に圧力がかかった事例や、その原因であるフクイチの廃炉作業にあたっては相変わらず人件費の「中抜き」が横行していて、今や除染作業員の方が、日当がいいという。こうした危険な作業は当然、現場作業員の方たちの良心で成り立っていて、今のままの「待遇」でいると、冷凍食品への毒物混入くらいでは済まないことが起こりかねないのではないか、という現場からの危機意識の発信・・・。
国や行政がその気になれば、今すぐにでもなんとかなる問題もいくつか含まれている。
その割には自分たちに都合のいいことばかり、拙速に進めようとしているようにしか見えない。
これまでフツーに暮らしていたら無縁だったはずの、様々な「権力」の弊害が、いとも簡単に我々の生活の場から見えるところにまで、日々近づいてきている印象を受ける。
実際、廃炉まで40年といっているが、抜き出した燃料棒の保管場所が決まっていないことを置いといても、法定放射線被爆量を守っていて、現場作業員は1億3千万人(日本の総人口)で、はたして足りる計算なのだろうかね。
こうして文章にしてみても、残念ながら期待したほどには頭の中が一向にまとまらなかったが、震災当初の感傷的な気持ちと違って、なんだかいろいろと考えさせられた一日になった。

*1:といいながら、3/9放送分