アンブッシュ(待ち受け)

千葉に来て3年目、一番親しい友だちすらひとりも招き入れたことがないのだが、みなさまよくご存知の「みなさまからのお支払い」で成り立っている局が、直々にお越しいただけるという。
話は遡って今年2月。俺が仕事で留守な時間帯にお見えになったらしく、来訪カード、というか、担当者の名前が入っている紙っきれがドアに挟んであった。世間常識的に平日の昼間、なんの前触れもなく来訪されて在宅しているヤツぁ、学生か年金暮らしかじゃないかと思うのだが。
で、次のご来訪がいきなり、夜の9時半過ぎに若い男性2名だった。これだけでもかなり不愉快なのだが、うっかり玄関ドアを開けてしまった自分自身の不覚には、もっと腹が立つ。
どうあっても引き下がらない風で、勝手に制定した法律をたてに言いくるめられてしまった。どうやら多様な事例から様々なケースに対して完璧に対応マニュアルが身に付いているようで、口では適わない。だが、このところ世間を騒がせている会長のご乱行についての説明もなく(笑)、そもそも「契約」の前提は相互の納得であり、この部分が全くすっ飛ばされた「非条理」な事態が我が身に起こったと認識。これは悪質な押し売りではないか。
というわけでネットでいくつかの同様事例を参考に、後日改めて解約しようと、必要事項だけを簡単に書いた文書をお送りしたところが、「(担当窓口に)電話してください」という文書が届いた。営業時間がどうあっても俺が在宅していない時間帯だったので、「無理!」と文書で返信すると、「電話してください」「無理!!」「電話してください」の、全く進展しない文書による「暗闘」が6回ほどあって、この間、ご丁寧にも仕事中の俺の携帯に無言電話までくださった*1ので、すっかりこちとらの闘争心にも火がついた。具体的な内容について文書に残すことは、何やら問題があるらしい対応に、こちらとしては益々不信感が募る。
7回目になってようやく先方から、解約届けの書式が同封されてきた。必要事項を記入して返送すると、今度は「記載内容に不備があったので電話しろ」との文書だ。ここまできて直接会話をしては、また言いくるめられてしまう可能性が高い。「どこが不備?」との文書を返信することさらに2回、どこが不備だったのか今度も具体的な指摘や説明がないまま、ようやく「それじゃ、こちらから(担当者が)確認に伺います」、となった。

丁度巷間、40歳代男性ひとり暮らしの凶悪犯罪者の暮らしぶりについてニュースを賑わせている折だったので、そんな報道も参考させてもらいつつ、せっかくわざわざご来訪いただけるとのことなので、こちらも少し遊んでやることにした。
具体的には、
玄関側の窓を、丁度先日届いたドラムスローンのダンボールを使って目張りした。もちろんカーテンは閉めっぱなし(さすがに暑い日だったので、カーテンの裏側では窓全開だったが)。
いい機会だったので、カーペットのカビ退治を兼ねて、エタノールを少し撒き、一方で台所の生ゴミが入った袋は口を開けておく。
それから俺が持っている精一杯の「ヤバそうなもの」を、押入れの一角に集めてみた。

どうせ個人情報、それも住所を押さえられちゃってるわけだし、この上素顔までご覧いただく必要もなかろう、ということで、サングラス&マスク着用での対応。
来訪予定時間の11:00に少し前に、お見えになった。
事前にこちらから文書で尋ねており、返信にあった通りの男性2名(20歳代と60歳代くらいの白髪の男性)でのご訪問。ありったけの不機嫌な小芝居をして、玄関を開けた。扉を開ける前、こちらからお伺いしない限り決して名乗らないのは、既にネット上でも多々いわれているように、事前に訓練されているものらしい。
ひとり暮らしの部屋に背広姿の男性2名というのも、それだけでかなり威圧的で、これが若い女性(のひとり暮らし)だったら、「カネで済む話なら」と、いいなりになってしまいそうだが。後日会社の同僚女性に聞いたら、まさにそういう顛末だった。
先方のご来訪の真意としては、手続きが長引いてしまったことへのお詫び、ということでの管理職同道だったらしい。だがその管理職は黙って頭を下げるだけで、俺との言葉のやりとりは一切、若者だけだった。これも事前の噂どおりの「社保庁体質」なのだな。管理職は面倒が起こらない限り、決して出てくることはなく、出てきたとしても結局下っ端に任せっぱなし…。
とはいえ玄関を上がるまでもなく一目で全てが見舞わせるワンルームなのだが、一応の仁義として、部屋内にお招きした。仰々しく指差し確認してるかと思ったら、訊かれたことには、
「他に部屋はありませんか」(…あったら俺の方がビックリなんだが。見ればわかるっしょ!)
「パソコンには、受信機が内蔵されていませんか」…あまり機械に詳しくないのですが、パソコンでテレビを見ることができるんですかねぇ? 相当古いものですが。
「携帯(電話)は?」…そこで充電中のものですが。メールだけでネットは契約してません。見た目ガラケーどころかPHSで、スマホではありませんねぇ。

という簡単な質疑だけだった。

かねて準備しておいた押入れ内についても、「何か入っていますか」と聞かれたので(そりゃ何かは入ってるでしょ)、「ご覧になりますか?」と自分で開けて見せる…こちらの思惑通り、ドン引きな空気。

ようやくご納得いただけたようで、俺がその場で3度目の解約届けを記入させられている無言の時間が一番長かったか。このときばかりは、「前に同じものを2度、提出させられているのだが」とあからさまに立腹して見せる。

「現場確認」といえば、ベランダや他の収納や、もっと根掘り葉掘り調べられるのかとも思っていたが、それ以上は一切触れられず、11:02、お帰りになった。そりゃそーだ。法の番人たる警察官だって、裁判所からの許可がなければ、家宅捜索はできないんだぜ。

先方が勝手にいっている手続き上、必要なことだったとはいえ、いいオトナがふたりして「ガキの使い」に来たかのような印象しか残らなかった。
解約なのだから、とも思うが名刺の提示もなく、ここまでの書面でのやり取りでも、担当者の(下の)お名前をついに明かしていただけていない。今回お見えになるまで、担当者の性別すら俺は知らなかった。
あ、やり取りを録音しておくの、忘れたな(録音機は机上に出したままだったが…)。
というわけで、無意味な大騒動、終了。

後でネットで調べたところによると、一度でも支払った後だと、もっと強権的になられるもしくは一切解約に応じない、といった態度に豹変されるそうで、どうやら俺は、判断*2が早かったのが幸いしたらしい。

*1:因みに作業現場への携帯持込は禁止、なのだった。

*2:初回の銀行口座引き落としから凍結手続きしちゃった