Tanto Guts @ 池袋・エールハウス

ここに脚を運ぶのは、なんと2009年末以来。あっという間の6年ぶり。
そんな、このバンドとのご縁から気心知れた人たちとの、ささやかだけど俺にとって幸せな「居場所」がこの年末、変わらずにあるというのが何よりもありがたい。

この場所に来るといつも感じる、ある種のワクワク感を楽しみながら、エールハウス店内へ。入口で丁度同じタイミングで着いたさかさん(@うみねこや)に、声をかけてもらった。さっそく幸先いい感じ。
店内にも既に顔見知り多数、人づてで今夜顔を出すのではないかといわれていた友人の顔が見当たらなかったりもしたが。
程なく演奏がスタート。冒頭こそPAの調整がうまくいかない感じだったが、すぐにいつものTanto Gutsの、安定した演奏になった。この時期は20時スタートでも何かと早いらしく、見慣れた店内が少し寂しい感じだったのだが、数曲過ぎたところで改めて見回すと、あっという間にカウンターまで満席の盛況。

フィッシュ&チップスの本場イギリスでは、これから火を通す魚の鮮度に全くこだわらないのだと、先日何気なく見ていたテレビのニュースで見た。魚のシメ方や冷凍保存など、鮮度維持のひと手間を加えるだけで、同じ魚料理が格段においしくなるのだという啓蒙活動している日本人が紹介されており…ほらみろ、フィッシュ&チップスだって、日本人の手によるものの方がおいしいのだ。これを見てからずっと、今年こそはエールハウスでフィッシュ&チップスを食べるのだ、とひとり盛り上がっていたここ数日。おいしいのはもちろんだが、俺の記憶の中と変わらない、懐かしい味には、俺の中で一気に過去の記憶が立ち上がってくる。
俺の中の記憶は長いこと、メンバー急病により急遽4人編成でアドリブ合戦になった初出演の記憶(何をやっていたかは覚えていないのに)がくっきりと刻み込まれていたが、ノミの心ぞうでお招きいただいた夜、その後もTanto Gutsにお招きいただいて、裏では色々どたばたのあった末にだがようやく辿り着いた2008年のcross pointでの演奏機会をもって、ようやく「幸せな夜の思い出」という形で俺の記憶が「上書き」された。
主にここに移転してくる前の旧店舗でのことだったが、以後も個人的にこの店を巡る思い出は尽きない。

今夜の俺は、バスペールエール(1/2)から。元々アルコールに強くないので、今夜は少しでもいろんな種類のビールを飲むために、控えめにスタートしてみた。半分くらい空になったところで、無事にゆたかさんが合流。

平井トリオもTanto Gutsとのここでの競演がもう6回目になるとのことだったが、俺もこの場所でいろんな人と知り合い、ゆっくりとだが人との輪が広がってきたものだ。こうして、一旦はご縁が切れてしまったかのような人との再会もあったりする。
この間もTanto Gutsのステージ演奏は、以前別の機会に拝聴した曲、俺としては初めて耳にする曲…なんだか今夜の俺は、妙に感傷的になっていて、コードが移り変わっていくごとに、見える景色がめまぐるしく移り変わっていく感じだ。
ゆたかさんが生ハムのピザを頼んでくれて、ふたりで分けながら食べ、俺は2杯目に「よなよなリアルエール」を注文していた。
つい数日前まで同じ倉庫で、生ハムの作業を担当していた同僚たちは、今夜どこで誰とどういう風に過ごしているのだろう…一気に、心地よい酔いが回る。
もう大学生だというお子さんの話をするゆたかさんの横顔は、すっかり「お父さんの顔」になっていた。子連れで来ていたももこさん、さすがに早い時間に店を後にされたので、今回はあまり話ができなかったが、こちらのご家族はこれから先、どんな「親」としての人生が開けていくんだろうか。

フィッシュ&チップスが登場するのを見計らって、先ほどから隣でゆたかさんが飲んでいるのを羨ましく眺めていた、俺のこの店でイチオシの一杯、ヒューガルテン・ホワイトを注文した。それにしても俺と会ったときは下戸だったはずのゆたかさんも、すっかりビールを飲めるようになったなぁ…。

俺も既にしたたか酔っ払っていい気分で、振り返れば俺としてもいろいろあったこの数年間、随分と顔をあわせていないはずなのに仲間たちは変わらずに接してくれて、過去の様々なできごとも、俺自身への反省点も含めて落ち着いて素直に振り返れるようになっていた。
久しぶりに、「年を取るのも悪くないな」などと思える。
いい音楽と、気の合う仲間と、おいしい酒、肴…。
今の俺がイメージできる「最高の幸せ」って、多分こういうものだったろう。
たゆまず毎年、こんな幸せな夜を提供し続けてきてくれたTanto Gutsと平井トリオのみなさん、そしてエールハウスに、感謝!