閉店情報

月がかわって6月1日付で、閉店情報解禁になったらしい、Book off大久保店。
店側の説明によれば、建物の老朽化によるものらしい。
それからあっという間にほぼ1ヶ月。

この商店街でも例外なく、俺がこの街に移り住んでからのわずかな間にも様々な店舗が盛衰を繰り返しているが、今回は個人的にかなりショックを受けている。
俺が千葉で移り住む場所をこの学生街に定める「最後のひと押し」となったのが、この商店街にあるBook Offの存在だった。
大きな書店やCDショップがないこの街で、決して大規模店舗ではなかったものの、仕事の帰りにふらっと立ち寄るのが楽しみな場所のひとつだった。
平日、会社に通勤している身分であれば、この街に戻るのは公的な図書館なんかとっくに閉まっている時間帯だ。大げさにいえば図書館の代替施設として少しは公益性も伴った、商店街の大切な「機能」のひとつだったようにも思う*1

ここらあたりではまだ賑わいのある学生街で、今回の大手チェーン店の閉店(予告)。
他の商店の入れ替わりペースも、年々早くなっているような気がする。
主たる自販機の缶飲料が、気づくと徐々に値下がりしてきている昨今。
給料が上がろうが横ばいだろうが、食料品のパッケージ・デザインが変わると、値段が上がらないまでも間違いなく中身が減ったり小さくなったり。以前よりも明らかに開封に梃子摺るようになることもある。
スーパーの「お勤め品」コーナーはどこも、相変わらずの人だかり。
このBook offも、数日前から「投売り」セールが始まっており、連日大盛況。
値段が下がるというだけで、まだまだこれだけ人が集まる。
…本当にこの国の経済は、政府与党が声高にいうほど持ち直してきているのか。

どうせ今ごろのこのこ行っても、俺が欲しくなるような本は残っていまい。「すっぱい葡萄」理論を発動。
元来が「早い者勝ち」なことには滅法弱い、優柔不断な性格の俺は、早々に気後れしてしまい、人が群がっている状況を見ると、なんだかハイエナのようだな、などと思ってしまう。
瀕死の(違)店舗からの「値引き」をありがたがるような気持ちにはなれず。
自分に屁理屈をこねまくっては、どうも一緒になってこの祭りに「参加」することをよしとしない「人間嫌い」気質。
1冊でも多く売れた方がいいに決まってるのにな。

向かい側の牛丼屋で夕食を取りながら、慣れない大声にもうすっかり声が嗄れてしまっている若い学生アルバイトの男の子を、いろんな思いを抱えながら眺めていた。
折りしも選挙カーの上から、同じように声を嗄らして叫んでいる人たちのことばは、相変わらず全く、俺の耳を素通りして心には全く響かないのにねぇ…。
俺自身も幾度か経験してきた、仕事を「閉じる」仕事。
最後の一日までいつもと変わらぬ笑顔でお客さんと接するのは、他人が思っている以上に気力が要ることだろう。
この先への不安もあるだろうけれど、まずはここでの仕事をまっとうできた自分を、自分で最大限労わって、褒めてあげてほしい。
全ての店員さんたちに、そんな思いを伝えたかった。
反射的に「またのお越しを、お待ちしております」ということばが出そうなのを抑えて、
Book off大久保店は明日、閉店。

*1:どうせコミックしか読んでないだろ、という話はともかく