山の日、横瀬駅エリア編

坂氷の交差点を通って姿の池へ下り、線路沿いを横瀬駅方向へ。
作中にもあるこの、羊山公園を経由して横瀬駅に抜ける徒歩ルートは、あくまでも緻密な設定(フィクション)だが、この辺りの高校生はこのくらいの距離だけだったら、普通に毎日歩いているんだろうなぁ。

さすがに暗くなってきた。

横瀬駅の撮影は後回しにして、武甲温泉へ向かうことに。こりゃ18時を回ってしまうな。

横瀬町役場の防災無線から聞こえてきた18時のチャイムは、「故郷」。つい合わせて歌ってしまう。
三菱マテリアルのプラント群。
神なる山、武甲山の山懐に抱かれた町。
残念なことに今日は一日中雲の中で、一度もそのお姿を拝むことはできなかった。

ようやく最終目的地、武甲温泉へ到着。
恐る恐る受付で伺ったところ、何と22時まで営業(但し食堂はラストオーダー20時)。街を少し外れたこの辺りは俺の想像以上に車社会なのだった。
地元の方に混じって、俺にとってはすっかり勝手知ったる露天風呂に浸かる。
風呂から上がると、「答えあわせ」の結果。
「聖地」としては8箇所ほどを経由することができたが、当初全く見当違いの方角をイメージしていたのはこのうち2箇所だった。俺の秩父での土地勘も、まぁまぁってところか。
湯治に通っていたころは乗る電車も、帰る時間もほぼ決まっていた、そういう意味では「日常」を過ごさせてもらっていた横瀬の町。今の俺にはいつの間にかもう、ここへこうして通うだけの切迫した事情がなくなっており、そのこと自体はとても幸せなことなのだろう。
期せずして自分の気持ちにひと区切りをつける道行きとなった。
真っ暗な、駅へ戻る夜道で。

家を遠く離れた地で迎える夜って、その土地の人間になれたような錯覚を起させる。
町が観光客向けの姿から、地元の人たちが暮す本来の姿に戻る。
暗くなってもどこからか続くせみ時雨、開け放った民家の窓から聞こえてくるテレビの音…。



下り電車が到着する時刻が近づくと、家族のお迎えだろうか、自家用車が5台、6台と集まってきて、夜の山間の小駅がひととき賑わった。
19:59、車中の人となる。
帰りのボックスシートで飲みたいビールの入手は、もはやどうやっても困難な里山の夜…(それかいっ!)。