休符の歌い方。

休符って「休み」ってくらいなんだから、そもそも「歌う」ところじゃないでしょ!
ハイ、冒頭から賢明なツッコミ、ありがとうございます。
というわけでここからはあくまでも「自己流」、私の演奏経験から休符にまつわる様々な思いを、いつものようにふわふわなテーマ設定の元にお送りします。
最初にお断りしておきますが、いわゆるアカデミックな場所ではこの休符についてどういう教え方をしているか、私は全く知りませんので、以下どんなに説得力のある記述があっても、ご利用は自己責任で。
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歌や管楽器の場合、長~いフレーズの後の休符は、さながら高速道路に忽然と現れたPAか砂漠のオアシスです。
何といっても思いっきり、息を吸える箇所ですよね。
ところで休符について一番最初の記憶は恐らく小学校あたり、音楽の授業での「うんたん」ではないでしょうか。
カスタネット片手に、叩くところで「たん」、休符を「うん」、の繰り返し。
休符も元々「うん」といってちゃんと「歌って」(空振りですが)いたようです。
演奏経験も長くなってくると、この初心(?)をいつの間にか忘れがちです
音を出す瞬間にしか意識が回らなくなって、今や休符は単なるブレスと同等の扱いに成り下がってしまいました。
とはいえ息を吸わないと死んでしまいますので、私としても息を吸うのをやめろ、などというつもりは毛頭ございません。
ここは歌わないにしても初心、先史カスタネット時代に戻って「叩いて」みるのはどうでしょうか。
それで不意に思い出したのが、学生時代の合唱部の引継ぎ。
私が在籍していた合唱部では、学生指揮者は指揮棒でしたが、4人いるパートリーダーへの引継ぎは、ドラムスティック1本でした。ご存知の通り楽器演奏の場合、スティックは左右対で使うわけですが、2組買っておけば余りが出ないわけで、なんともエコロジーです。
もっともどこかのパートリーダーが打楽器経験者で、2本使ってパラディドルディドル♪、などとやられた日には、歌う側はどこでどうやって合わせたらいいものか…。
元来これはパート練習の際、テンポ出し(メトロノーム代わり)に使っていたものです。
これを応用して、実際にスティック片手に休符(だけ)を叩いてみる、という練習方法は、いかがでしょう。
スティックがお手元にない場合は、手でももちろん構いませんが。
スティックの方がリバウンド・コントロールが必要という点で、脱力するコツが掴みやすいかも知れません。
ほらほら、肩や胸に不要な力みはありませんか?
あくまでも腕だけ、振り上げればいいんです。
やってみると意外と難しいでしょ。
実際、休符を「叩こう」と思ったら意外と「前準備」が必要なのも、おわかりかと。
音を出すことにだけ意識がいっていると、休符の前拍でスティックを振り上げておかないと、狙った拍で正確に叩けませんし、肩や上胸部に力みがあると簡単に遅れます。

話はまた逸れますが、これこそが実は大事なことだと私は思っています。
とてもざっくりした言い方をすると、8ビートと16ビートの違いは、この振り上げのタイミングの違いなんです。
8ビートはご存知のように(4分の4拍子では)1小節に8分音符で8回刻むことから「8ビート」と呼んでいるものです。
4拍目裏の8分音符で振り上げること(モーション)で音楽に回転を生じさせながら、曲が前に進むことを感じさせます。これがグルーヴの正体じゃないかと。
この例から16ビートは1小節を16分音符16個で刻むものですが、振り上げるタイミングは「4拍半の裏」16分音符ひとつ分、と8ビートよりも短いものになります。
フライパンでタマゴや炒飯を炒めているとき、手首で裏返す動作をイメージしてください。
ポピュラー音楽を演っている人たち、パーカッションやギター、ベースでそれなりのレベルの演奏をする人たちは、かき鳴らす手の動きの中で、こういった意識を持ちながら演奏しているようです。
一方、アカペラ界ではまだまだモーションがメンバー間でバラバラ、ベース・パターンは16ビートなのにコーラスは4拍裏(8分音符)と16分でモーションを刻んでいる人が混在している、という演奏にお目にかかる機会が多いです。
なかにはリズムの要、司令塔であるはずのボイパの人が、8ビートの曲を16分刻みにしちゃってたり、とか…。
アカペラに応用すると、キメの部分でメンバーのフリが揃ったりして、アンサンブルにも意外と即効性を発揮するような気がします。
話を戻して…
「1拍目に休符が来るようなパターンで、テンポが速くなる」
ような方はぜひ、この休符を叩く練習方法、お試しください。

「休符を歌う」ことを、単に身体で固めて止めるケースも見受けられます。いわゆるブレイクのようなケースです。
身体中がガチガチに力んだ状態から、次の動作に移れるんでしょうか。見ていてハラハラします。
これは私の独断と偏見ですが、クラシカルな練習・演奏を積んできた人に多いように思います。
休符にこそ「脱力」です。そこはかとなく、空中分解で終わった前回のテーマと重なる話もでてきました。
強くブレイクを表現したい場合もまず脱力をマスターした上で、正しい「休符の歌い方」ができてから、「お芝居」としてやるのならアリでしょう。
脱力がマスターできていない人がやると、曲の持っているグルーヴやフレーズの流れまで止めてしまうような気がするのは、私だけでしょうか。
音楽はまず、よどみなく流れてこそ。
増してやフレーズを邪魔する動きであってはならず、個人技でなくアンサンブル形態なら尚のことです。
「休符の歌い方」、これに限らず何通りか、自身の表現力の幅を広げるつもりで身につけてみてはいかがでしょう。
(うん、今回は建設的な提案ができたな)