優先順位。

外出するには天気が冴えないので予定通り、午前中から意を決して「ボヘミアン・ラプソディー」のDVDを見た。
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何せ映画って2時間以上なので、観るにもエネルギーがいるのだ。


それ以上に俺自身、すっかりこういうときの「身軽さ」というものを忘れてしまっている。
音楽モノだし、やっぱり映画館で俗世間や家事から自らを隔離した大音量環境で観たかったが、1回の映画が「レンタルDVD3枚分」の料金では今の俺にはさすがに手が出ない。
バンドの練習にしても、行けば楽しいとわかってはいるのに部屋を出るまでが葛藤で、何とか行かなくて済む理由を探している自分が嫌になる。
今回もDVDを借りてきてから、いったい何日経ってるんだか。
とはいえルーティンで観てしまっても感動は半減だろうし。やっぱりそれなりの気構えをしてから観たいのだ。

このタイミングでは、見るんじゃなかった…というのはもちろん、逆の意味で。

毎度のことながら、影響受けすぎっ!
とは我ながら思うけど(何もないよりはいいか)。
バンド音楽の「独創性」をどう創るかで「命を賭して闘い抜いた男の物語」、とでもいおうか。
なんだか自身がこれまでバンドでやってきたことが、急速に色あせて見える。
ウチのバンドの「独創性」って?
日々の練習で何かクリエィティブな刺激、ある?
俺自身はクリエイティブなこと、ひとつでもやれてるか?

楽器バンドの場合、誰かのカバー曲であってもドラム譜なんか書いてもらっていないことの方が多い。
いくつか基本ビートを試して、一番はまったリズムをベースにして自分なりにリフを加えていく作業は俺にとっては新鮮で、こうやって曲ができていくのはなかなかにクリエイティブな作業だった。
だから歌でも、楽譜通りに歌うこと、歌えるようになるのを目標に置くことには、実はそれほど価値を感じていない*1
本当の音楽は、その向こう側にある気がする。
その、一旦できあがった音をどう「料理」するかが、各バンドの独自性だろう。
だからようやく暗譜できた、とか譜面通りに歌えるようになった、というレベルの演奏を人前に出してよしとすることは、俺には堪えられない。因みに譜面を見ながら歌うことについては知り合いのバンドマンとの間でも賛否あるが、俺は絵面的に合唱と変わらなくなると思っている。
チャージまでとるライブなのに新曲が何曲間に合った、とか論外。
曲の好みや習熟度にはメンバー間でも差があるし、パートの違いや曲調によっては得手不得手もある。
さすがにこれでは、計画性がなさ過ぎるだろう。

マンネリが怖いから、さして具体的なアイデアがあるわけでもないのにバンドの中ではかようにジタバタしちゃう方で、どうしてもクラッシャー的な役回りになってしまう*2

それまで中学の合唱部でしか音楽を知らなかった俺がDoo-Wopに出会った衝撃は、コーラスでも「リズムを紡ぎ出せる」という素朴なものだった。
それからもアレンジによっていろんなリズムを紡ぎだせることを知った。リズムってそれ自体、中毒性があると思う。
そのうちいくつかのアカペラ・バンドのライブへも足を運ぶようになったが、当時の俺はリズムの強い曲で終盤に向かって盛り上がる「既定路線」にはどこか抵抗を感じていたものだ。
結果的にそうなるのは抵抗がないのだが…とはいえ、演奏する側としては曲順を決めないでステージに上がるなどという無謀なことはできないので、ある程度「計算ずく」ということになってしまう。
最近になって思い返すにやっぱり、長いライブを歌いきった充実感をお客さんと共有できるのは、会場全体の盛り上がりしかないんだろうな。
Queenのライブ映像(映画の中ではもちろん再現シーンだが)を観ていて素直に、一緒に盛り上がれてこそだな、という気になった。Queenとまではいかないものの、その100分の1でも1000分の1であっても、眩しい照明で一面真っ白な中、すぐ隣のメンバーも見えず音だけでやり取りしているようなステージの上で、一瞬でもこういう孤独感が消える瞬間があるなら、俺が歌い続けている意味もあるのかな…どうも最近、クラシック音楽寄りになっちゃってるようだが。
そんな自らのバンドのレパートリーへの反動からか、このところいわゆる流行歌に過剰反応しちゃってたわけだが、さすが「レジェンド」Queenだ。演奏シーンでは一気に気持ち、引きずり込まれてしまった。
ライブエイドのシーンの"We are the Champion"で、遂に涙腺が大崩壊。
これに比べるとさっきまでむさぼり聞いていた流行歌ですら、とても矮小な曲のように感じられる。

誰が誰をどう好きでどーなったとか…どーでもいいじゃん!

このところバンドの曲だけでなくラジオや外出時に耳にする歌、過去に好んで口ずさんでいた曲、全部ひっくるめて、心から歌いたいと思えなくなっていて、正直焦っていた。
俺の感受性なんかとっくに枯れてしまっていて、このまま音楽そのものへの興味を急速に失っていくのか。
それとも時間が解決してくれていつかまた、ワクワクするような曲に出会うことができるのか…。
こういう「エネルギー」があったからこそ、これまで細々と歌い続けてこられたわけで。

やりたいことが見つかればコスト度外視、寝食を忘れてでも注力できるが、
売名やカネのため、では決して気持ちは動かないし、ましてやりたいことができないのであればいっそ、何もやりたくない。
自分の気持ちに、嘘はつきたくない…所詮アマチュアだもの、俺は*3
それが私の、行動原理。

これを機にちょっと、時間の使い方の優先順位、大きく変えてみっか。
9月のバンド合宿あたりから、ずっと考えていたことだけど。
最後の引き金を俺に引かせたのは、間違いなく台風19号だな。


そんなわけで自身の経験に重ね合わせていろんな刺激を受けたが、この映画を通じてようやくQueenというレジェンド・バンドに触れられたことに、悪い気はしなかった*4
今のこの年齢になった俺だからこそ感じ取れるものがあったとすれば、久しぶりに人生「早い者勝ち」だけでもないかもな、と思えた。

*1:緻密な楽譜を書いてくれる方には申し訳ないんだが。俺自身はベース譜にルート音しか書かないこともある…。基になるリズムパターンは、音にしてみてから決める! ってこと。

*2:ゆめゆめ映画中のフレディと比べるようなことをしては、いけない。

*3:考えてみれば、すっげー贅沢なことだよ!

*4:まぁ普通出会うのは、高校生くらいの時期だったでしょーけど。