裏制作?

現業担当の俺としては、問い合わせや申し込みが入った際の対応方として、どういう内容が案内されているのか知っておかなければならないわけだが、例によって「ご報告」なんぞいただけない社内風土なので、独自に「諜報活動」を展開。
f:id:oku_anijin0406:20200905160248j:plain


在宅出勤日数の調整で本日は出勤しない担当者が社長への申し送りBOXに置いていったゲラ稿に、アサイチで目を通していた。
…えっと、ゴメン。何が伝えたいんだかさっぱり、わからない。
さすがにチラシ現物の画像はオトナの事情で出せないので、回りくどくなるのを承知で文章でお伝えすると、以下の通り。

  • いわゆる連絡文書のフォーマットの「表題」の位置に、20ポイント文字で今回ご案内する「商品」名称。
  • その下に12ポイント文字で説明文章が続く、連絡文書なレイアウトを踏襲したらしい。11行にも亘る文章は一応3段に分かれてはいるが。
  • さらにその下に、いかにも「今、スマホ撮りしました」っていうイメージ画像。本当に必要? 画面自体が暗くて縦横の比率もおかしく、色味も全体に緑味がかったまま…画像修正してないよなコレ。
  • 版面全体を今回の「ご案内商品」をイメージする罫枠で囲んでいるのは、社長からのご指示だろうか。
  • 裏面いっぱいに「仕様」を張り付けちゃったもんだから紙面が足りなくなり、FAX申込書は別紙になってしまったので、ホッチキス留め。

ツッコミどころが多すぎて俺にとっては(逆)インパクトがあったということだが、少なくとも日々このテの郵便物を毎日大量に処理している俺が受け取る側の立場だったら、残念ながら秒速ゴミ箱行き。定常取引先でもない会社名で届くDMについて担当者は、意外とこういうことだけはよく覚えているもので、「次回」からは開封しないでそのまま資源ごみだ。
前の会社では、営業経験者の先輩から「マスコミと学校関係は、『初回』こそが勝負」といわれたものだが、今なら俺にも、このことばの真意がよくわかる(というような話だけはやんわりと、初校を拝見した際に現場の人間の意見としてお伝えしておいたのだが)。

我が社には珍しく、この時点で一斉発送予定日までのスケジュールにはかなり余裕があったのだが、どうやら社長のGO! を取り付けられたらしく、今日のうちに印刷に回ってしまったらしい。

しかし、何度眺めてもやる気が削がれるな…。
「ご案内商品」それ自体に相応の魅力があったとすれば問い合わせ殺到になるが、受けたくないなーこの問い合わせ。チラシだけでは伝わっていないことが多すぎる…多分(上述の俺の予想通り)ゼロ反応、だろうけど。

したたか酔っ払った金曜日の夜、自室。
俺だったらこれだけの情報から、どういう風に再構成できるんだろうか、などとつらつら考え出したら止まらないブレスト状態。実際にパソコンをいじりだしてしまった。
すみませんね、こういうひとり遊びが大好きなもので。
少なくとも情報を少し「交通整理」してあげただけで、もっと見やすいチラシになる、はず。
以下、かなり偉そうなことを具体的に書きますが、因みに私自身はもちろんこういった仕事のプロ、などであるはずもなく、その昔「イベンターもどき」なことをやらされたとき、必要に迫られて少し独学した程度の人間ですあしからず(同じように仕事で急遽、チラシ作りを命じられて困っている、という方々のご参考に少しでも供せれば幸甚です)。

というわけでここまで、「連絡文書」レベルの必要情報はすべて入手してあることを前提に。
まず目についちゃうのが、タイトル下の「11行の文章」。
版面上に占める広い面積もさることながら、チラシを手にした人がまず、「長いな~、読みたくないな~」と一番ネガティブな印象を持つだろうトコロ。
情報の「受け手」をどれだけ具体的にイメージできるかは、大事ですやっぱり。手段を問わず、コミュニケーションの基本なのではないかと。
商品名をポイント数大きく表示するのは二の次で、受け手側のファーストインプレッションとしては「でコレ、何(の役に立つものなの)?」の方が先のはず、という妄想(^^; を働かせてみる。
こちらが伝えたいことと、先方が必要としている情報の、決定的なズレ。
「プレゼンはA4版1枚で」みたいなビジネス書の背表紙くらいは、本屋さんで見たことないかなぁ。
だからこそ本来なら簡潔な「キャッチコピー」というものが、必要なわけで、会社によってはこの部分を決めるためだけに「戦略会議」を開くところもあるくらい重要なことで。
今回はこの「11行文章」の中に、「専門家や学生さんにお勧めです」(仮)という一文があったので、これをそのままキャッチに転用。キャッチとしてもあまりデキがいいとも思えないが、これしか使えそうにない。「学生」というのも、なんとも漠然としたことばだがなぁ。
商品名と差し替えて大きなポイント数の文字で、トップに据える。この文字の大きさで情報に差をつけることを、「ジャンプ率」とかいうらしい(具体的な数値のことではなく)。
併せて「等価な情報というものはない」という名言? も記しておきます。
最低限、誰に向けた情報発信かをできるだけ具体的に煮詰めておくのは大事。専門用語で「訴求対象」とかいうらしい。
実は俺が今よりもガッツリ担当者として関わっていたときに、社長にも幾度かそういうお話をしているのだが、納得いくお答えをいただけなかった。
「手広くやりたい」は結局、「誰にも届かない」になりかねないんだけどね。

文章2段目につらつらと文章として述べられている値段とか支払い方法とかなんて、箇条書き(のみ)で充分、むしろその方が簡潔に伝わる。

3段目のお申込み方法も、つなげた文章にするんじゃなく、囲みにして別配置!(下段、問い合わせ先情報の右脇に移動した)
つまりここまでの説明文が、作成者自らの中で「別要素化」されていないらしく、だらだらと1本の文章にしちゃってる。
作り手側が自信なく理解をあいまいにしている部分がそのまま、チラシ版面に現れてしまっている、という風に映る。

掲載必要な情報としてチョイスしたのだろうけど、この、明らかに「やっつけでスマホ撮りしました」っていうイメージ(画像)は今回、品名がわかれば誰にでも形態が想像できる一般的な商材なこともあり、思い切って削除。
紙面の中での画像には、それだけで「商品イメージ」を決定的にするだけの「強さ」があるので、予算上プロカメラマンに頼めないにしてもできるだけちゃんとした画像を載せる。
それができないなら載せない方がマシ。
そうでないと受け手には逆に、こういうネガティブなイメージだけを残してしまう。
というのが俺の考え。
版面全体を囲んでいる罫枠は、さすがに外すと殺風景になってしまうので、俺の趣味ではないものの(社長のご指示である可能性が高いので)今回ご案内の商品イメージ、ということで残しておいた。

裏一面に展開されていた「仕様」こそ、売り手側としては前面に押し出したい、という気持ちはわからなくもないが、これも表面の情報で詳細内容に興味を持った人だけが見ようとするものなので、冗長な表組みを外し文字を小さくして、これも箇条書き化。
別紙になっていた申込書は、裏面に空いた下半分のスペースに入ってしまったので、すっきり1枚に。これでホッチキス留めの作業をしなくて済む。
受け取った側も、申込書を送るのにいちいちホッチキスを外して、さらにFAX送信、のひと手間って結構メンドいもんなのよ。

というわけで掲載に必要な情報を漏れなく集められたら実は、紙面構成はまず最初に考えておくものですよね。
デッサンもしたことがないヤツが、いきなり「名画」を書こうとしたってできるわきゃーない(俺だって無理)。

俺の場合はこの後の段取りとして、各文章要素ごとにフォントを変える検討に時間をかける*1のが常だが、今回は割愛。

最終的に広告屋さんにデザインを投げるにしても、この程度まで事前に「材料」を煮詰めてあれば「丸投げかよっ!」と嫌な顔されることはないんじゃないかな。
以上のような段取り的な物事の見方・考え方を文字に直しておくのは何よりも、俺自身のボケ防止に役にたつんじゃないかと(笑)。
ここまで断定的な物言いが、上から目線に思えて不快だったらごめんなさい。

「俺はもっとデザイン的に見栄えのするようなものがつくりたい」「これ、ホントにWordで作ったの?! といわれるようなものを作りたい」というもうワンランク上を目指す野心のあるクリエーター志向の方は、これらを基本的事項として押さえた上で、あまたあるデザイン本とか、ネット上にも多くの関連情報があると思うので、まずはある程度定番といわれるレイアウトを中心に、勉強してみるといいんじゃないかと思う。
やりたいことが自分の内に、先に形作られてあることが大事で、パソコンをどう操るかは、その次の問題。パソコンの操作方法なんて、社内でも妙に詳しい人とか必ずひとりくらいはいるもんだと思うので、いざとなったら訊いちゃえばいい。なんでもかんでもパソコンで作らなければならない、というルールも実はあるようでなかったりして*2
だから全面デジタル化された今でもまだ、版面の素案自体は手書きメモ、だったりしますよね、プロの方でも。

ある程度慣れてくると、版面を「要素」の配置として捉えることができるようになるので、同業他社のチラシをたくさん見てみるのが実は一番参考になるかも。俺自身も一時期、いろんな紙チラシを手あたり次第集めていた時期がありますが(元々、コレクター指向があるのかも)。

この項最後にせっかくなので、今回とは別件だがとっくに退社した会社時代の古いものを、Before・Afterの事例として(さすがにもう時効だと思われる)。
oku-anijin0406.hatenablog.com


で、どーしよーかな、今回のチラシのデータ。まー担当者すっ飛ばして、というわけにもいかないし、お蔵入りだよなーやっぱり。
「俺自身のプレゼン」という意味では、誰の目にもとまらないというのもなんだか癪だが、仕方ないか。
一斉発送日はまだ先だし、この間数日、悶々とした気持ちを抱えたまま過ごすことになるのか俺は…。

*1:版面の統一感がなくなり、印刷事故の確率も増えちゃうので、多く使っても3種類程度までに留めるのだが

*2:完成校が電子データなのは仕方ないとしても、現物をスキャンとかは十分にあり得る