撤退。

梅雨入り前の、貴重な晴れの、平日休み。
満開のあじさいを愛でるには、(恐らく)ラストチャンス。
気合を入れて早起きし、目覚ましと準備運動を兼ねて部屋に軽く掃除機をかける。
あっという間に汗だくになってしまい、昨夜の天気予報で繰り返し指摘されていたように、どうやら熱中症になる危険性が高い。
身体がまだ、夏モードに切り替わっておらず、心なしか汗も昨夏の時のようにサラっとしておらず、我ながらなんだか匂う。
個人的に熱中症で倒れること自体はどうってことないが、コロナ禍中の今、うっかり病院に担ぎ込まれるようなことになってもご迷惑だろう。
結論。
「不要不急」につき。
「撤退」するのは勇気がいるよ八甲田山。なんだこの敗北感は。
しかも荒天で外出すらおぼつかない、というのならまだしも、外はしらじらしいほどの快晴だ。

ラジオに耳を傾けながらパソコンをいじっていたら、そのうちにファイルやらブラウザの「お気に入り」の整理に発展してしまった。
俺には仕事でもプライベートでも、気になったURLをすぐに「お気に入り」に入れてしまう癖がある。
別に定期的にやっている作業ではないのだが、例によって解散してしまったバンドのHPや、俺自身このトシになると「故人」などというのもあったりする。
数年前、船橋駅の「まちかど音楽ステージ」に毎週通っていた頃、客足を全く止めることができず「惨敗」だった男子学生のTwitterがなぜか残っていた。
「まちかど音楽ステージ」は簡単な登録手続きだけ済ませれば自治体公認で演奏できる*1、という制度だが、そもそもあのJR線と京成線の乗り換え経路上で客足を止めるのは、名のあるプロでも至難の業だ。
夕方の帰宅客で人の流れは相当あるが、そもそも「乗り換え」という目的があってそこを通る人たちだし、速足の流れに乗ってしまうと足を止めづらい。
そんな場所でカラオケをバックに、歌唱力も正直残念なくらいの無名の男子学生が歌ってみたところで、ある種の使命感(スカウト?)を伴って毎週立ち寄っていた俺のような奴以外に、足を止めるような奇特な人はいない。
そんな針のむしろのような演奏時間枠が終わって、終盤になって駆け付けたマネージャー役(?)の同年代女子との会話が俺の耳に入ったのだが、開口一番、
「…ここはダメだ」
通りがかりの人たちの、自分の音楽に対する理解度の低さを責めているような口調。
いや、その前にもっと自分の芸を磨けよ?
極私的には、この人がこうして歌い始めた成功体験ってなんだったんだろう、ということに大変興味を持ったわけだが。

まぁ俺もそのまますっかり忘れてたわけだ。

そんなことを思い出しつつ、リンク削除する前に覗いてみたツイッターは意外にもまだ「生きて」はいたものの、その様子はすっかり変わってしまっていた。
プロフィールに掲載されていた顔写真は当時の印象とは全く違う(すっかり目鼻立ちが変ってしまった)もので、難病によってあの先の人生がすっかり変わってしまったらしい。
それでも当時在学していた某有名大学を卒業することはできたらしく、現職は公務員とあったが、邪推すると恐らく障害者雇用枠だろう。

今回のコロナウイルス騒動でかなりリアルなものになったが、「明日」の自分がどうなってるかなんて実は、誰にもわからない。
当たり前だった「日常」がいとも簡単に壊れるのは、何も自然災害に限った話ではない。
しかし、だからといって何に対してどうやって備えたらいいというのか。
話がデカすぎて全く想像もできず、結局何ひとつできやしない。

こうしてひとりで生きている限り、いつか不意に、もしかしたら本人も気づかないうちに、その日は来るんだろう。
最初に俺の部屋に踏み込んだ人が見る光景は、いったい俺の人間性をどういう風にあらわしてくれるんだろうか。

会社の、いつもキレイな自席を知っている同僚にとっては恐らく、別人28号(笑)の部屋と映るだろう。
訪問者がいた頃はまだしも体面というものもあったのだが、それがなくなってからは容赦なく無駄な物が一気に増えた。
実家に残したままにしている物も同じように雑然としているので、まごうことない同一人物。早い話がこの間、俺という人間は何も進歩なんかしていない。
我が社はリモートだZoomだなどという流行りすたりとは無縁だが、せいぜい単なるMS Officeでの「お仕事」を、覚えたての言葉で「リモート」とかいうの、毎度笑っちゃうからやめてほしい。ネットでの調べものは結局自前だし、メールすら読んでないんで*2
それでも仕事を持ち帰る機会は増えたので、仕事関連の参考図書やら資料やらは間違いなく増えた。
いい年して、こんな夢物語のような小説ばかり読んでやがる…。
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一連の「コロナ自粛」も、俺自身は何か具体的な「元の生活」のイメージや「生還目標」があるわけじゃないので、気が焦ることはないのが救いだが。
ただ、会社での1週間を滞りなくやり過ごすためだけに、毎週末こうしてひとり安静にしているんだと思うと、本当に虚しい。
一日も早く、「その日」が来ないかとさえ思ってしまう。

*1:もちろん現在は、新型コロナウイルス感染症対策の名のもとに休止中

*2:転送設定していない、ということ