ATOPILLA

f:id:oku_anijin0406:20211203231224j:plain

Side.A

  1. Overture
  2. Spread Love
  3. Just You,Just Me
  4. Scarborough Fair/CANTICLE
  5. Pretending To Care

Bonus Truck)Love Can Go The Distance
Side.B

  1. Say Yes
  2. Secret Part Of Me
  3. Olivia(I’m Listening)
  4. The Christmas Song

このデモテープ「アトピラ」は、私がアトピー性皮膚炎の治療のために長年使っていたステロイド外用剤を、無謀にも予備知識なく使用中止した少し後の時期、1994年8月から11月にかけて録音したものです。リバウンド(それまで強い薬に頼っていたことで、身体の治癒力が一時的に戻らないために急速に悪化する事)と呼ばれる症状が落ち着いてきた頃で、いくつかのパーカッションと、実妹との掛け合いがある1曲以外は、全て私の声だけです。このように声によるコーラスだけで作られる音楽を「ア・ カペラ」といいます。当時は半ば自棄気味につけた、アトピーとの合成語であるタイトルも、冷静に症状について語れるようになった今は気にいっています。
一足先に社会人になっていた友人が下宿を機材置き場に開放してくれたので、彼のいない昼間、週に何日か留守番を兼ねて録音に出かける事が、症状の辛かった当時の私には精一杯のスケジュールでした。
前置きが長くなりましたが、今回擦り切れそうになったマスターテープを、新たにバンド活動用に導入したデジタル機器に移しかえたうえで、コーラスのバランスを中心に手直しをしてみました。一般にはリマスターとよばれている作業です。そんな訳で一部にお聞き苦しいところがあるかもしれませんが、ご勘弁を。
さて全体の作りは、当時所属していたア・カペラ・バンド(4人組)のデモテープとして録りだめていったものなので、4声のアレンジが中心です。同じ「ひとりアカペラ」で有名な山下達郎氏の場合は5声プラスアルファが通常なので、声の厚みという点では、聴き劣りがするかもしれません。実は心の師と仰ぐファンのひとりとして、A-1.Overtureは‘78年のアルバム「Go A Head」から、また今回、おまけでいれたLove Can Go The Distance(‘99年NTTのCFソング)も山下達郎のコピーです。これは新装なった機材のテストを兼ねて録った、2000年現在の私の声です(前回まで配布分のデモテープには未収録)。A-2.Spread Loveは、当時はまっていたTAKE6というジャズのアカペラグループ(6人組)によるものを、4声にアレンジしなおし、リードボーカルの掛け合いを実妹に頼みました。この曲が唯一、私以外の人の手を煩わせたものです。おなじくジャズテイストの濃い、アドリブとスキャットの楽しいA-3.Just You,Just Me。下宿の主である友人が、前夜飲んだくれていたのか(?)そのへんに転がしてあった、ワインボトルをたたいてリズムをいれてみました。A-5.Pretending To Careは今回、一番難しかった曲です。多分時期としては山下達郎氏よりすこし前、ユートピアというバンド名の方が有名かも知れません、リーダーのトッド・ラングレンによる異色のひとりアカペラアルバム、その名も「アカペラ」からのカバーです。先のTAKE6がジャズなら、このトッド・ラングレンはゴリゴリのロックで、当時からサンプラーなどを多用して、「これがほんとに人の声?」という音をつくっていました。最近CD化されて入手しやすくなっています。A-4.Scarborough Fairはサイモン・アンド・ガーファンクルのビッグ・ヒット。この曲だけ3声のアレンジ。実はライブの時、バンドの他の3人に歌わせて、私ひとりだけソデで休もうとの企てが生んだアレンジです。B-1.Say Yesチャゲ・アンド・アスカのヒット曲。14 Karat Soulというグループがカバーしていたのを、他の曲とは逆に1声を加えてみました。ドラムマシンなど持ってなかったので、キーボードのおまけについていたサンプラーに、適当な声をいれてリズムトラックをつくっています。B-3.は杏里のヒット曲、「オリビアを聴きながら」の英語バージョン、B-4.は日本でもクリスマスの時期にはどこかでかかっているクリスマス・キャロルと、少し耳慣れた曲たちをア・カペラで演ってみました。
結局このデモテープの曲たちは、自然解散となってしまった当時のバンドでは唄われませんでした。メンバーの組み合わせの関係でベース(低音)を担当していた私には、よきストレスのハケグチにはなりましたが。ただ、何時間もひとりヘッドフォンを被ったまま唄うという不健康さと、膨大なエネルギーが必要だったのは事実で、このような企画、次回はいつになるのやら、さっぱりやる気が沸いてこないというのも、正直なところです。