残業後の夜の街に、ぶちまけられたネオン。

交差点にある電光掲示の、赤くにじんだ文字。
「50歳代の男女、車中で練炭自殺。」
ヘッドフォンをした耳元では、井上陽水がささやいている。
「薬漬けにされて 治るあてもなくし 瘠せたカラダあわせ どんな恋をしているの・・・」
バスは夜の六本木通りをタクシーの流れについて、時速60キロですっとばしている。
「最近、一緒に遊ぶ友達が減っちゃって」ふいに耳に入る会話。
「結婚しているヒトが増えちゃったから、たまに一緒に飲みにいっても、旦那や子どもの愚痴ばかりで、ついていけないし。中途半端に口を挟むと、やっぱ独身者はいいよね、とかいわれるし」
女の足をひっぱるのは、女だというのは、本当らしい。