京都での、第一声

町屋レストラン「たま妓」(中京区両替町通り二条下る)に案内していただき、今回のメンバーの簡単な顔合わせ。奥の窓に手入れの行き届いた庭が美しいお座敷で、お昼の若いお客さんたちに混じって昼食をいただく。のっけから修学旅行的知識しかないとこ、いきなりの京都風情たっぷりで、かなり面食らった。“おばんざい“といっていいものかどうか、色鮮やかな惣菜が、お盆の上の小皿にきれいに飾られていて、食べるのがもったいない。味噌汁は当然、赤ダシ。煮トマトのスープがおいしかった。半分に切った煮トマトの中に、みじん切りした夏野菜が詰められている一品。初日の昼からこんなちゃんとした食事をしちゃうと、帰りの新幹線車中で幕の内の弁当なんか、食べる気がしなくなる。
ひとしきり落ち着いたところで、数曲披露いただけないかとのおことばをいただいたので、おことばに甘えて歌わせていただいた。準備不足は否めず、リクエストいただいた「夏の終わりのハーモニー」では、歌詞をぼろぼろに間違えてしまう。平身低頭しての、降板。客席の新婚さんには好評で、和服の着こなしが美しい女将さんにも、声が井上陽水によく似ているとの褒めことばを頂戴したが。
それはともかく、以後この、演目リストでお店やお客さんからリクエストをもらうという、曲によってはリードボーカル担当者には戦々恐々な形式が定着(もちろんちゃんとした曲リストを、リーダー夫妻が準備してきたからできたこと)。

徒歩移動。

最初の、ストリート会場


町屋ギャラリー・コロナ堂(中京区夷川通烏丸西入ル南側)
風情のある和風建築に、2階と裏手の土蔵も使ったギャラリー。先ほど「後攻」だったので、ここはタントガッツさんより「先攻」で演奏。PAが必要な感じではなく、間口の広いお店の中を使わせていただき、お客さんには外から覗き込んでもらう。紺地にでっかく「聲」と染め抜かれた旗印を店頭につるして、ライブの目印に。以後この旗とも2日間、同道。
それにしても早くも、「星のかけらを探しにいこう」のリクエストが重なっている。そんなに有名な曲だったとは。名古屋で、この曲を歌う機会を与えてくださった花村さんには、お礼のことばくらいでは、済まないな。

徒歩移動

ふたつ目。

ほっこり茶屋寺町通り三条下る西)
地下鉄の駅がある烏丸通りに戻って南へ、御池駅の交差点を超え、三条通へ左折して、アーケードのある寺町通りにあたるまで歩く。早速かなりきつい、炎天下。途中のコンビニで、普段は飲みつけないスポーツ飲料を買う。この際、脱水症状が一番危険だ。
三条通りは予備知識なく歩いても、レンガ造りの趣きある建物が多い。ブティックなんかも多く、ちょっとおしゃれな区域。改めてゆっくり散歩してみたい。イノダコーヒー(の支店)も、泣く泣く素通り。
目指すほっこり茶屋は、寺町通りアーケード内右手。格子戸を開けて入ると、オープンカフェ・スタイルのテーブル、その奥に喫茶室。周囲の建物が低いせいか、瓦屋根を越えて時折涼しげな風が流れてくるので、オープンスペースでアイスコーヒー、もいいかも。
アーケード内は人通りが多く、靴音もアーケード天井で反響している、雑踏。そのため、簡易PA設営にことのほか手こずり、後の予定がかなり変わってしまった。「まだ8場所中の2箇所目だよ」と誰かにいわれたときは、マラソンで半分も来てないのにへばってしまったようなくら〜い気分になったが、終った今になってみれば、結局全て回れなかったのは、それはそれで残念な気分。
ここではペンギンが後攻で、お店側からのリクエストにより、店内のお客さん側に向かって歌い、音だけPAでオモテに出すという変則演奏となった。

タクシー分乗

みっつ。

ボンボンカフェ賀茂大橋西詰め)
河原町通りからタクシー分乗。運転手に、「賀茂街道」と勘違いされ、かなりの距離、鴨川の上流に連れて行かれた、らしい。後車に乗ったのに先についてしまい、心配になったメンバーから電話をもらい、もれ聞こえた地名で行き過ぎたことに気付いた運ちゃん、とっさに料金メーターを切って運転してくれたらしいが・・・。こんな旅先ハプニング、果たして誰のオーラが引き寄せたものだったのか(俺?)。
ボンボンカフェは、元銀行の重厚な建物を利用したカフェテラス。天井の高いがっしりとした石造り。店の中で歌っている間に、オープンスペース側でPAの設営を平行して進めてもらっていた。あっちでも歌うのか、くらいに思っていたが・・・。

徒歩移動?

よっつ。

前日に現地担当者からもらったメールには、この次の場所は、
鴨川・高野川合流地点の三角州(文字通り)
ボンボンカフェのオープンスペースからは店の内側ではなく、何故か鴨川対岸に向かって(!)、スピーカが立ってますね〜。

鴨川といえば、川幅は拙宅の近場でいえば、多摩川ほどもありますが。
なんだか38度線の向こう側に向かって、呼びかけているような・・・。「青春の影」、絶唱。河原に降りて聞いていたタントのみなさんに、「鉄の声帯」との称号をいただきました(^^; だからそういう曲じゃないだろってのに>俺

タクシー分乗

いつつ。

西陣・京町屋再生工房「machiya de ほっ」清明神社西裏)
清明神社はお察しの通り、平安時代陰陽道・安倍清明を祭った神社。問題はとりあえずタクシーを降りたものの、民家ばかりで目印になるものがなく、店の場所がわからない。

周囲が暗くなってくる。
携帯電話で連絡を取り合って、なんとか全員、たどり着いたがこれは一人ではこれないな。入り口から、暗く細い土間のような廊下を奥へ進みながら、なんだかワクワク。古い日本の民家の造り。急に広がった奥のスペースでは、たくさんのお客さんがお待ちかね。吹き抜けになっている2階部分の張り出しを、ステージ代わりに歌わせてもらった。かつてない客席との高低差。誰が手配したのかビデオカメラが入っていて、「魔法の黄色い靴」を歌っているところをアップで抜かれた・・・うわ〜、勘弁してくれ〜。出てるのは汗、じゃなく鼻水だよ!
リクエストされるに任せて、なんかいっぱい歌った。居心地のよさにまったりしてしまい、ウチアゲモード(まだ次があるのも忘れて)。
出していただいたワインが、うまそ〜だったな〜(まだ明日が不安な小心者。一滴も飲めず)。上等なチーズまでつまみに出されて、すでに満面笑顔のまほちゃんでした。くっそ〜。
お店にタクシーを手配していただく間、真向かいのギャラリーを拝見する。描かれている風刺のきいた絵やことばに、笑ったりなごんだり。
モノづくりに関わっている人たちが多いな。これも京都ならではなのかな。そういえば今回衣装のアロハシャツも、宿近くの個人商店に趣味のいいのが、しかも東京より安価であったりして。

タクシー分乗

結局、むっつ。

町屋レストラン「たま妓」に、戻る。
昼に歌った座敷は一転して、地元の名士と思しきお年の方々。
ここは当然、ペンギン得意の日本語の歌がツボ、かと思いきや先攻、タントガッツのジャズ・スタンダード路線がアタリだったりして、人は見かけに、というかあなどってはいけない・・・俺もこういう「型破りな」年寄りになってやる、との決意を新たにした(^^;
すでに飲んでらっしゃるみなさまと、関西風の濃いやりとりなどあり、疲れた・・・(リーダーが)。
翌日、この場で告知させていただいた「ふじひら」でのライブにも、お越しくださった方がいたようにお見受けした。そういえばこのきつい移動に終始、お供してくださったお客様も。本当に、ありがたいかぎりだ。
「竹田の子守唄」のリクエストをいただき、また先ほどしくじった「夏の終わりのハーモニー」は再び、女将さんからリクエストいだたいた。リベンジの機会を与えてもらって、ありがたかった・・・もちろんもう、同じ過ちは犯さない。
七味をかけて食べると美味な、ピザをご馳走になり、なごり惜しくも店を出ると、夜の暖簾ごしに和服の女将さんが、「さようなら、ヨウスイさん」と声をかけてくれた。なんだか昔どこかで見た、とっても懐かしい一枚の絵を見ているようだった。