伏姫桜

という、樹齢300年を誇るしだれ桜が市川にある、との情報を、地元在住の会社同僚からもらった。もちろん旅行ガイドのようなものには載っている、有名なランドマークなのだろうけれど、実際に先日行ったという写真をみせてもらい、直接教えてもらった情報ということもなんだか嬉しかったので、これは一見の価値あり、ということで俺の心の内で大変盛り上がってしまい、馬橋の新坂川べりあたりに足を延ばすつもりだった予定をあっさり変更して、今回は近場優先、ということで行ってみた。

その前に、以前から気になっていた菅野駅へ。地図では推し量ることができないのだが、東京外環自動車道の大規模工事に伴って、駅直上にでっかい陸橋ができているのを、いつも電車で通るたびに不思議に眺めていた。
実際に行って見ると、これは資材運搬やトラックや重機が移動するための仮設の陸橋で、巨大に見えたが幅は2車線分しかなかった。実際に外環道となる道の工事は地下で行われているようで、完成の暁には、東京でいう環状8号線の井荻駅付近のようなことになるらしい。

駅を出た上り線左手(南側)に「平田緑地」という公園があり、隣接する諏訪神社の鳥居横に一本、満開の桜を見つけた。この辺り、松の並木が境内を突っ切って続いており、いずれもかなり大きな樹に成長している。余所者の俺としては、この松の黒々と茂った葉と桜の組み合わせがとても新鮮に映った。

さて、線路沿いの舗道を市川真間駅方向へ散歩。線路脇にはいろんな春の花が咲いていて、退屈しない。

途中の児童公園には、ハナニラの群生が。
市川真間駅手前の踏み切り交差点を右折し、国府台(こうのだい)女子学院の先から、「いちかわ文学の道」を歩く。この辺りをゆかりとする文学者たちの解説板が多数設置されており、車道と歩道の境目が桜並木になっている。真間(まま)川につきあたるまでの300mほどの長さにわたって、満開の桜道が続く。歩道側は細長い児童公園を兼ねたつくりになっていた。


滑り台があり、子どもたちが遊んでいた。ちょっとお邪魔させてもらって、滑り台の上から桜並木を眺める。絶景。


その先、真間川の川べりも桜並木。手児奈(てこな)橋には絶好のポジションにこれらを一望できるベンチがあって、たくさんの人で賑わう。ただし日差しを遮るものが何もないので、少し暑い。


手児奈霊堂の本堂脇に植えられた、見事な枝ぶりの桜。境内には他にも桜の樹がいっぱい。


千葉商科大学へ向かって北上、車が入れない細い脇道の坂を登っていくと、新築中の家では大工さんが作業中。

伏姫桜のある弘法寺(ぐほうじ)へは、裏手の墓地側から入ることになる。

そしてこれが、今回のお目当て、巨大なしだれ桜の樹「伏姫桜」。


地元の方のお話によると、さすがに古木ということで、年々支柱が増え、花数も減っているような気がするそうだ。それにしても長年にわたり、寺の方や地元の方たちに、今に至るまで大切にされている。
色は上品な、淡い墨色といった風情だった。

墓地の一番奥はちょっとした広場になっており、ベンチもある。


この広場を囲むように桜が植えられている。
境内南側崖地の上で、眼下には今歩いてきた真間川、手児奈霊堂、JR市川駅方向への眺望が広がる。街中に点在する、満開の桜の樹が一望できた。


こちらが本来の入口である山門。

急な傾斜の石段を慎重に下ると、降りきった門柱脇にも一本の桜が満開だった。


というわけで大変贅沢な、桜三昧な一日を過ごすことができた。