西武秩父駅


前回「山の日」に来た際、方向違いで寄れなかった札所10番・大慈寺にでも足を延ばそうか。
紅葉を愛でながら「心の深呼吸」、ひたすらぼーっとする。これに尽きる。
そういえばさらに徒歩20分ほど先には、札所5番・語歌堂という、音楽をやっているものとしては気になる響きのお寺もある。まぁこの場合の「歌」は、時代的に和歌か何かのことだろうけれど。

夏に訪問した際はお目にかかれなかった念願の武甲山の姿が、ホームから間近に。
太陽光の微妙な加減で刻々と表情を変える山襞、尾根筋に色づいている木々、中腹あたりからたなびいていく雲…。恐らく一日中でも、こうしてただ眺めていて飽きない。

跨線橋上の窓には、撮影用の「お立ち台」まで用意されていた。
しかしここ、鳥さんたちにとっても「お立ち台」らしく、窓が糞で汚れているのは、ちと残念…。
というわけで満足ゆくまでホームから武甲山を眺めてから、ようやく駅の改札を出た。

さすがに今回はバス利用を覚悟していた。
レンタサイクル、という手もあるが、あいにく俺は、写真付きの身分証明書という類を一切持っていない(持参していない、ではなく)。
しかし立派な駅前バスターミナルには、各バス停に時刻表はあるが「距離別料金」のはずのその料金表は、申し合わせたように貼ってない。
余所者には地方のこの距離別料金が、タクシーと同じくらい「怖い」わけだが。
というわけでまずは駅前の西武観光バス案内所で、パンフレットを入手しておく。
以前定期的に湯治に通っていた際には、ここから小鹿野町役場までバスに乗ったら途中の見慣れたはずの山村や狭い平野が、これでもかというほど秋色に色づいていて、俺を乗せたバスはその中をどこまでも走っていた。そんな、偶然にもシーズン真っ只中にめぐり合った思い出が忘れられず、今日もまた小鹿野行きバスに乗ってしまおうかとも思ったが、当時通っていた温泉は源泉が枯れてしまい、少し離れた別の源泉から引くことになった際に泉質が変わってしまい、俺は初めて温泉で痒みが出るようになるという経験をし、それ以来こちらには通わなくなった。皮膚がなかった頃は痒みもくそもないわけで、泉質が原因というよりは、治りかけの時期特有の症状だったのかも知れないが。
その温泉に入る勇気(?)があればともかく、他に目的もなく小鹿野まで足を延ばすのは、さすがにバス料金の高さに怖気づいて断念。
秩父は盆地なので、何の事前情報もなく行き先も決めないで、西武秩父駅前で丁度発車を待っているバスに、あてずっぽうに乗ってみる、というのもそれはそれで楽しそうだが。
紅葉の景勝地、とはいかないだろうが、どの方向へ連れていかれたとしても、ほどなく山にぶつかる。出会ういくつかの耳新しい名前の集落では、誰が愛でてくれるでもないのに今年もちゃんと色づいた木々が、観光地と遜色ない彩りで出迎えてくれるはずで、「俺だけの秩父・紅葉」コースになること間違いなし。

で、話をようやく大慈寺・語歌堂に戻して、次のバスは14:30と、約45分後。
ただ待っているにはもったいない陽気…というか大慈寺までなら、これだけバスを待っている間に着いちゃうかもな。

え〜い、歩いてしまえ。
西武秩父発のバスはほとんどが一旦、秩父鉄道秩父駅にも寄ってからそれぞれの行き先に向かうので、一様に遠回り。
一方俺は羊山公園横瀬方向へ直進し、その先の坂氷交差点あたりからならバスにも悠々間に合うだろう…との算段だったのだが、




牧水の滝の上にあったモミジの木の、あまりに見事な紅葉ぶりと、展望台からの景色を堪能していたら、さっそく時間オーバー。


坂氷の交差点まで降りてきたところ、目の前でバスに行かれてしまった。

バスは帰りに使ってラクしよう。
どうもバスの時間に縛られるスケジュールは、俺の性にはあわないらしい。