札所10番 大慈寺


案内板に従って県道11号から左折した参道には、古い石灯籠もある。てっきりこの灯篭の正面がもう寺かと思ったら右に大きくクランクしているのを知らず、俺はここまで来て迷子になり、本堂を拝むこともできずに引き返すことになるのかと少々焦った*1。無事に辿り着いてみれば、石段正面から田んぼを横切って県道に出る形の「参道」は、最近になって整備されたものらしい。県道の裏道、一面黄色く色づいた葉を一杯にたたえた斜面を正面に眺めながらゆるくカーブしている住宅街の道の右手に、程なく「札所10番 大慈寺」の大きな看板が見えてきた。


「ここさけ」の舞台のひとつにもなっていた大慈寺は、背後に広大な墓地を擁するものの、アニメで見るより小ぢんまりと好ましい規模の寺だった。山門下の石段では主人公ふたりが腰掛けて話すシーンがあるのだが、その石段は実際に行ってみると、ひとりがやっと座れるくらいの幅。


絵馬までが、こんな具合。

願掛けの内容は今や実写版映画のヒット祈願にとって変わっているが、絵柄ではやはりネット上同様、「優等生」はあまり評判がよくないものらしい(笑)。

石段を上がった山門脇から眺める秩父のシンボル・武甲山も見事で、山裾を紅葉の彩りで縁取られた姿が美しかった。
物語の中では、石段下の左脇にある祠に、願掛けをしたタマゴをお供えすることになっていたが、実際のところは布製の「ぼぼ」のようなものが飾られていた…らしい。「らしい」というのは、映画のヒットと共に、(実写版)映画関係者から譲り受けた小道具なのか、本当にタマゴの飾り物も供えられるようになっていた。


境内の周辺案内図には、コンビニとコメリが手書きで加えられているのはご愛嬌。
「聖地巡り」の誰かが書いてくれたものか、お寺の方が映画のせいで急に増えた来訪者のために書いてくださったものか…。


秋の行楽シーズンの週末なのだが、さすがにここまで足を延ばす人はそう多くないらしく、アニメや映画でのブームも一段落ついたのだろう。山門脇のベンチに腰掛けて、ポットに入れてきたコーヒーで一息。ひと気がないのは好ましいのだが、残念なのは斜面下の県道11号は、山奥で伐採した木材や土砂を運ぶ大型車が頻繁に行き交っていて、車の交通量がハンパなく、山の中の静けさを楽しむのには適さなかった。
などと思っていたら、10名程の巡礼の団体さんが石段を上がって来られたので、これを潮時、退散することにした。

後で写真を見て気づいたのだが、「曹洞宗」だったのね。静岡の亡き祖父から父方は代々、曹洞宗なので、俺が訪ねて何の不具合もなかったのだった。また来よっと。
帰りのバスの時間にアタリをつけてから、語歌堂へと足を向ける。

*1:灯篭の向こう側を左右に走っているのが県道11号で、つまり画像右に見える案内看板はなぜか県道側に背を向けるように立っていた。そりゃ迷子にもなるわなぁ。俺も振り返ってみて、初めて看板に気付いた。