この目で見たい、景色がある。

「来週末は寒いんだぜ」、と天気予報がこぞっていうので…紅葉、ラストチャ〜ンス!

とはいえ予め決めてあるは予定といえば、10時の開店と同時に船橋東武崎陽軒に行けば、さすがに弁当は入手できるだろう、程度。8時半まで布団の中にいても、余裕で間に合う。
その足で秩父を目指せば、丁度ボックスシート秩父線の車内で昼どきを迎える。
早目に出て現地で名物の昼食、も捨て難いものの…。
と、とりあえずざっくりと、往路のみ頭の中で組み立てる。

まずは西武新宿線で所沢まで出る。
新宿線の急行も、俺が知っている頃と比べると随分と俊足になったもんだなぁ。
田無駅手前、青梅街道をオーバーパスする数秒間に、電車正面に堂々と雪をたたえた富士山が! 思わずはっと息をのんでしまい、カメラ間に合わず。今日はこれを目にするためだけに外出してきたんでも、もういいかも。実にいい幸先ではある。

所沢からは西武池袋線に乗り換え、飯能まで。
淡々と住宅地が続く沿線。
とはいえさすがに休日。
12:14飯能発の西武秩父行きは、すでにびっしり満員だったので、あっさり見送って次の電車で座っていく、といえば簡単なことのようだが、次の電車は30分後、12時44分発だ。
まぁこの先、時間に縛られる予定があるわけでなし、秩父に入ったところで、実はどこに向かおうかもまだ決めていないのだった。

そんなわけでホームでただただ待っていると、先ほど途中駅で追い抜いた、旅するレストラン「52席の至福」号が追いついてきた。

夏に西武秩父駅で見かけたときは仕込み中だったが、今回は営業中で、既にお客さんたちが豪奢に改造された、落ち着いた照明の車内で既にお食事中。


無礼を承知でホームから車内を覗かせてもらうと、飯能方2両目は丸々厨房になっていて、シェフの格好をした人たちが慌しく動き回っている。1両目はトイレと、多目的スペースになっていて、今日は座席は設けられていないようだった。
昨今、地方私鉄でもビールトレインなんかが盛んだが、「アカペラ・ライブ付き」というのも、企画としては面白そうだよな(テツな趣味も兼ねて)。

だが今日の俺の昼食も、フランス料理に負けず劣らず無敵だぜ。

崎陽軒の「炒飯弁当」…これに勝てるのは、俺的には同じ崎陽軒のシュウマイ弁当だけだ。
そうなると東横線副都心線経由ではるばる横浜方面から来た、ように見えるかも知れないが、袋にはしっかり「船橋東武」の文字、どーだっ!(何が?)

ここに崎陽軒があることを知ったのは半年ほど前だが、以後時間帯が合わず、いつも品切れ「連敗」だったのだ。今日は前述の通り、10時の開店時間を狙いすましての購入、やっとの初勝利。海老ピラフとどちらにしようか迷ったのだが、最終的にピラフは筍が安っぽいポテトサラダになっていて、値段設定が炒飯と同じならその分ピラフの方が「より利益率が高い設定」なのでは、と炒飯の方にした。理屈をこねているが、要は崎陽軒の筍、好きなんだもん。

というわけでこだわりの着座位置は、トイレのある最後尾、の一両前の、電動車。
この山岳仕様の電車が、ぐいぐいと秩父に向かって山を登っていく力強いモーター音も、併せて楽しめる。
車内はやや遅い時間帯のせいか、不思議なことに子連れファミリー層は少なく、世代不問で男女ペアばかり。一人旅風は俺を含めてなぜか男性ばかり、ほんの数人。
俺の「豪華な」食事とともに、車窓には色鮮やかな紅葉が流れていって、長いはずの道中が思いのほかあっという間。この後の予定を何も考えつかないまま順調に、西武秩父駅まで辿り着いてしまったぞ。