長瀞を後に、札所19番・龍石寺へは大野原駅から。
古い木造駅舎もかなり残っている秩父鉄道にあって無機質な駅舎が印象的だが、県立秩父農工科学高校の最寄り駅でもあり、平日朝夕は通学の高校生で溢れかえっている、のかも知れない。農工科学高校といえばよそ者の俺が日々目にするニュースからでは、確か馬場通り内に農産物のアンテナショップがあったり、芝桜で有名な羊山公園に毎年木製のベンチを寄贈したりと、積極的に地域密着の活動をされている印象が強い。
龍石寺は、この辺りの崖線のヘリに位置していて、それは巨大な一枚岩の上にお堂がある。
大干ばつの折に弘法大師が岩を穿ち泉がわき出した、という伝説もあるようで、「龍」という名称と相まって、その位置するところ、やはり何やら「地鎮」の祈りのようなものが濃く感じ取れる。
恐らく当時の荒川は、今とは比べものにならないはるかに大規模な災害を繰り返し起こしていたのだろう。何しろこんな巨大な1枚岩が流れ着いてきたのだから。
本堂前の、新築マンションのような立派な建物群が市営住宅だと知ってビックリ。立て替えたばかりなのだろうが、千葉の俺の部屋より立派だ。
秩父橋への道は本堂裏手から方向感覚だけを頼りに歩く。つるべ落としの日が一気に山の向こうに沈み、辺りは急に暗くなってきていて、不安になる。
しかし意外にも難なく辿り着けた秩父橋は、夜の装い。
さすがにこの時間帯にもなると、「聖地巡り」の余所者も観光客も、誰ひとり見かけることはない。夕景、独り占め。
丁度今時分の太陽は下流側に沈むようで、橋の上にしつらえられたベンチで、カメラが役に立たなくなる暗さになるまでぼーっとする。
今日一番ゆっくりした時間。
俺にしても駆け足すぎて、何だか「ブラタモリ」にしても「テツ」の旅にしても、中途半端になってしまったなぁ。
西武秩父駅への戻りはバスにした。バス停にたどり着くと、次のバスまでは25分待ち!
大野原駅に戻って秩父鉄道に乗った方が早いか、それとも前回来たときのように全行程歩いてしまうか…あいにく俺は秩父鉄道の時刻表を持っていない。
悩んでいる間にバスが来るとゆー、優柔不断ぶり。
思いがけず遅い時間になってしまい、残念だが武甲温泉は今回も見送りか。
折返し待ちの電車内で味わう味噌ポテト(と主にビール)の誘惑に、負ける。飲んでしまったら、温泉は不可だ。
とはいえまずは腹ごしらえ。
手近なところで「祭りの湯」(元の仲見世通り)のフードコートで、初めて「わらじカツ丼」なるものを食べてみた。
見ての通りの豚カツだが、甘みのある味噌ダレに漬けてあるので、ソースはいらない。
この味噌味が、味噌ポテトの味噌と味が似てて、どうやら秩父の人たちはこういう甘みがお好みらしい、と勝手に思う。
その味噌ポテトを探してまずは矢尾百貨店に行ったが、さすがにこの時間帯ではバラ売りは品切れ。数本パックに詰めてある家族向けのものしか残っておらず、ひとり酒の肴には多すぎる。
気を取り直してお花畑駅近くのベルクへ。こちらでは焼き鳥などの串もののコーナーに、あったあったよ、ありました♪
東京へ戻ると旅の終わり、ではなく千葉の自宅までは、いつものうんざりする距離移動。
また少し、東西線を嫌いになる。
午後11時半、温泉だったはずが自宅のユニットバスに漬かっている…。