江戸川、アカペラ。

気温が急に下がったせいか、それとも風が強いからなのか、三連休なのに早い時間帯から、さながら平日休みのように人がいなくなってしまった。
鉄橋を渡る電車の窓に、明かりが灯る頃が一番好きだ。
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せっかくの、この広大な景色の中。
本当は歌じゃなくキンピカな楽器、トランペットやサックスなんかだと、もっと画になるんだろうけどなー(自意識過剰デス)。
とにかく思う存分、デカい声だすぞー。
これこそが最大の、外出効果。
さてどの曲で声出しをしようかとカバンから楽譜を出し・・・え、この中から選ぶの?

せっかくコーラス・パートじゃなくリードのはず、なんだけど、どれもセンシティブな曲ばかりで…旧文部省唱歌? 昭和歌謡? 
どうにもこの場にそぐわない気がする曲ばかりで、何より俺が歌わなきゃならない理由が、見当たらない。
っつーかこれ、ここで歌ってる姿は傍目にカッコイイもんなのか?(だから自意識過剰だって!)

バンドじゃなく、合唱団だよなぁこれじゃあ…先日の合宿録音での、セットリストあたりで気付けよ俺。
常日頃から「自身に協調性がないから」合唱辞めた、などと自虐的にいっていたが、要するに「メンタル強め」な、家族を持ったりして「人並み」なことに落ち着いちゃった同窓会的な感じとか、「みんなでガンバロー」みたいな優等生的な同調圧力とか、学級会的「正論」というやつが何よりも苦手なのだ。
だから多分、俺がどうしてもこういうのを歌いたくなったとしたら、いくつかある古巣の合唱団に企画ごと持ち込んで、自身は歌わず指揮者に収まることを考えるんじゃないかと思う…まぁないなコレは。
何事もどこか「斜に構えて」いたいから、中学のときに声だけで紡ぎ出すDoo-Wopのリズムに魅入られて以来、大学を卒業するとともに合唱辞めて本格的にアカペラ・バンドとして歌い始めたはずだったんだが。
加えてあわよくば自身の心の中の葛藤とか矛盾とか、そういうモヤモヤしたものを歌詞に乗せて少しでも吐き出したいわけで。
そんな年甲斐もなく「アオい」自分を、今やすっかり持て余してはいるが。
だから少人数のバンド(形態)でやってきたつもりなのだが、いつの間にこんなことになってんだよ俺。

他のメンバーはみんな「お仕事」意識なのか、まるっと暗譜、何の抵抗もなく歌っているように見えて、そのどこか落ち着き払った余裕すら感じられる様子には最近、正直イラッとくることもある。
どこからも俺と同じ「ハングリーな臭い」(笑)がしてこない。
日々の練習内容もなんだか「整える」方向ばかりで、そういう意味では本当に「合唱」だ。これまでメンバーそれぞれの個性が、曲の枠をはみ出してはっちゃける瞬間、というものを感じたことがない。
俺はまだそこまで「老成」できてないっつーの。
ここでも、みんなが当たり前のように過ごすコミュニティが俺ひとりにはツラい、という構図なのか。
そんなん社会生活の場だけで充分なんだが。
そもそも歌唱技術の向上なんかのために、歌ってないから俺。
やりたいことがあるからこそ、相応に歌唱技術を上げたいと思うわけで。

ようやくこれなら、ということでジャズ・スタンダードを一節歌ってみたものの、もはや気持ち上向かず。
一気にスケールダウン。
その場に座り込み背を丸めて、膝に置いた楽譜に目を落としつつ、小さな声でリズム読みをすることになってしまった。
これだったらわざわざここまで来なくても、近所の公園でよかったな。あそこならテーブルもあったし。
シメに缶ビールを1本開けて、周囲の目が気にならなくなるほど酔っ払ったところで(っつーかもう誰も通らない)、ヘッドフォンでお気に入りの洋楽やらJ-POPの曲を聞きながらカラオケよろしくひと通りシャウトしてみたら、ようやく「自分の歌」に戻れたような気になれたものの。
今日に限って耳慣れたはずの曲のキーが、どれもものすごく高く感じる。
昨夜は禁酒までしたのだが我ながら声がスカスカで、いよいよここまで思いつめちゃった問題が、声そのものにも悪影響を及ぼし始めたかとの疑念が消えない(ただの老化現象かも知れんが)。
というわけで、1時間弱で撤退。
…外出するにはホント、いい陽気になったのになぁ。

ここまで思い返して、このところの自身の先祖がえりならぬ「高校生がえり」現象が、なんだかこれで腑に落ちた。
あの頃の俺はまだ、(今の日本でいうところの)「アカペラ」なんか知らなくて、ただこのままクラシック音楽や合唱で歌い続けることには強い疑問を抱いていた。
楽器バンドでライブハウスや文化祭での演奏経験からカジュアルな音楽の楽しさを知ってしまったので、漠然とこういうことをやりたいと思って悶々としつつも、その気持ちの持って行き場がない閉塞感の真っ只中にいたっけ。

その閉塞感が、今とリンクしちゃってるんじゃなかろうか。
だとすれば、あの頃のようにダイナミックにパラダイムシフト展開(笑)する予兆なのか…とはいえ新しいことを始められたあの頃の体力も気力もないぞ今の俺には。
であれば、取りうるオプションは3つ。

  1. 今ある限られた「リソース」を使って、何か新しい展開を考える。
  2. いっそ全リソースを、全く違う方向へ向ける。
  3. 遅まきながら「マットウな人生」を歩むために、音楽に携わっていくこと自体から潔く身を引く。

少なくとも本気で異性にモテたいと思ったら「3番」一択、音楽やってる場合じゃない
だってこれだけ長いこと音楽やってても、モテたこと一度もなかったじゃん*1
冗談はともかく、そもそも自分ひとり食っていけないようでは、お話にもならない。
逆に続けるにあたっては、このまま独りで老後を迎える「新たな覚悟」が必要だな。
そんな思いがこのところ、日々強くなってきている。

こんな具合だから、暗譜が全然捗らんのよ。
少なくとも差し当たって何らかの「ガス抜き」をしないと、年内もちそうにない。

*1:モテるヤツが音楽やってるから更にモテるだけであって、モテたいから音楽をやる、もしくは音楽をやったらモテる、というのは都市伝説です…じゃあなんでまだ続けてるんだろ俺…。年長者からの「遺言」と思っていただければ(笑)。