神戸駅から旧線路跡を草木ダムへ。

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列車は11時丁度に、神戸駅に到着。この時間からホームにある電車レストラン「清流」の営業が始まる。
しばらく駅周りの風景をカメラに収める。接続待ちの市営バスで足早に草木ダムへ向かう人、駅内の電車レストラン「清流」で一息つく人…俺はそんな動向がひとしきり落ち着いた頃合で、店に入った。


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「清流」は、今は使われなくなった退避側線に元東武特急(DRC)の電車2両を横付け、レストランに転用したもので、最近現役当時のシックな塗装に戻された。
少し早いが予定通り、ここで昼食をとる。これから歩かなければならないこともあり、ボリュームたっぷりの定食ではなく地元産舞茸の天ぷらがぎっしり載ったうどんにした。
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先ほど駅の待合室で入手した、近隣のガイドマップを眺めながらひとり作戦会議。
東武特急の車両を転用したレストランは、断熱の効いた大きな窓からの日当たりもよく居心地がいい。
ひとつ残念なのは決して動かないことで、当たり前だが発電機やコンプレッサーの「息遣い」音がしないことが却ってそれを痛感させる。
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手入れの行き届いた駅のトイレを借りて用を済ませると、いよいよ意を決して今日の目的地に向けて歩き始めることにした。
とはいえ今日の旅テーマを「廃線探訪」にしてしまったことで、心は否応なしに、湖底に沈んでしまった人びとの生活に思いを馳せてしまう。
見慣れた景色が、当たり前だった日々の営みが、全て湖底に沈んでしまう悲しみ。
いったいどれほどのものだったのだろう。
ここに住んでいた人々の想いだけがまだ湖底に残されている気がして、見慣れたはずの美しい景色が全く違うものとして目に映る。

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この先、現在線が左に曲がるあたりが旧線との分岐点。
事前にネット上の地図をいくつか見てみたが、どれだけ拡大してもこの遊歩道は出てこなかった。
「地図にない旅」。
そもそもこの「線路」だってすでに、地図には載っていない。
それでも廃線探訪の人たちの姿くらいは、と思っていたのだが結局、誰にも会わなかったな遊歩道。
そういうわけで、琴平隧道内では気持ちよく歌えます(←迷惑)。
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県道が萬年橋で右折するあたりに現れる、琴平隧道跡(画面左)。
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「富弘美術館まで2.3km」の看板もある
以前草木湖まで歩いた車道とは違って、当然自動車が行き交うこともなく、勾配も人が歩くには緩やかだ。
そして何より、瀞のエメラルドグリーンと紅葉の絶景、独り占め…なんとも贅沢。
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琴平隧道を抜けるとすぐ、古レールで作られた落石覆いが。
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かつてはこんな車窓が楽しめたはず。
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こちらは落石覆いではなく、雨水を逃がすための巨大な樋。
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わらべ橋上から神戸駅下流)側への眺め。右岸が遊歩道。
朱に塗られた近代的なアーチ、わらべ橋の手前までくると、対岸から発電機の回る音が聞こえてくる。静まり返った山の中では異質な音で、かなり煩く感じる。
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…さて、不意に途切れる線路跡はともかくヒトはこの絶壁を、つづら折りにでも上らねばならないわけだが…。
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これはもちろん、作業員用の歩廊(立入不可)。
ようやくたどり着いたドライブインにて休憩。
くるみ饅頭、餡子は4種類。その場で食べる場合はレンジで温めてくれる。1個40円はとてもお手ごろ。
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表のベンチに腰掛けて眺める、俺にとっては10年ぶりの変わらぬ湖。
周回する道路はダムの建設とともに整備されたものだろう。
恐らくこの高さの山の中腹には、ダムが川をせき止めるまで何もなかったはずで。
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草木湖の東湖底を走っていた足尾線も今は、湖の西側山の中を長いトンネルで一直線に駆け抜けている。
そう思いながら目の前の景色を見ていると、なんだか不思議な気分になってくる。
湖の水は今日も冷たく静かだ。
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怪盗枯葉仮面!