例によって長~い前置き。

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しかし、天気が冴えない…。
というわけで、自分の気持ちに区切りをつける旅。
に「花鳥風月」から紅葉をつけちゃう旅行プランを発案。
臨時収入もあったし、思い切って遠出しちまうか。
というわけで久しぶりに渡良瀬渓谷まで足を伸ばすことにした。
つい数年前かと思って過去の記録を辿っていたら何と、10年越しだった。


山を穿ち、自動車道ですら避けた川沿いの絶壁ルートに、心細くも確かに敷かれたレール。
その車窓からしか見られない絶景と紅葉が、わたらせ渓谷鉄道の大切な観光資源だ。
しかし新型のディーゼルカーでも息を切らせながら登るルートだとはいえ、バスとは比べ物にならないほど景色の流れが早い。
できれば手軽にこういう険しくも美しい景色の中を、身近に感じながらゆっくりと歩いてみたいとの思いを募らせていたところ、偶然ネット上の情報で、「旧・国鉄足尾線」の廃線跡があることを知った。
yamaiga.com

草木湖と、その湖畔に造られた星野富弘美術館への玄関口である神戸(ごうど)駅。その先の沢入(そうり)駅までの大半の区間は現在、ローカル線に似つかわしくない、5kmにもわたる長大な「草木トンネル」で結ばれている。これは国鉄・足尾線だった時代の昭和48年に、渡良瀬川をせき止めるために造られた草木ダムを西に迂回するために造られた新ルート。草木ダムができる前の足尾線は、桐生からここまでと変わらず川沿いの右岸ルートを進み、丁度ダムの辺りで渡良瀬川を渡ると、現在は湖底にあたる川の左岸へとレールが続いていた。草木橋のたもとあたりには途中駅として「草木駅」もあったらしい。因みに現在のわたらせ渓谷鉄道渡良瀬川を渡るのは、ダムの絶壁を避けてトンネルの中を徐々に標高を上げながら到着する沢入駅の手前になる。
その長大な草木トンネルに向かって左に分岐する線路を見ながら旧線は右を川沿いに直進し、ダムの巨大な壁に阻まれるまでの線路跡が遊歩道として整備されているらしい。
観光客で満員の市営マイクロバスに詰め込まれて草木湖まで移動するよりも、距離も手ごろそうだし、今は車窓からも見ることのできなくなった紅葉をひとり愛でながらの散歩…これは今の俺にとっては、まさにうってつけ!
というわけで気分やや前のめりになりながら、「目的地」が決まった*1

ここだけの話(笑)、実は代休だった金曜・平日休みに出かけたのだが…大失態。
ラッシュをやりすごしてから千葉を出たものの、予定より早く部屋を出られたことにすっかり気をよくして、よりによって同じ京成線内の乗り換えを間違えてしまった。昼間の運行パターンで緩急接続する駅で、反射的に各駅停車に乗り換えてしまったのだが、その少し先の、休日や昼間だったら追い抜きのない駅であっさり乗るべきだった特急に通過されてしまう…この特急で、更に先の駅で接続する各駅停車に乗り換えるべきだったのだ。平日ラッシュ時はどこの鉄道もこういう変則的やりくりで大量の乗客をさばいているもので、結果東武特急に目の前で行かれてしまい、ひとり途方に暮れた北千住駅ホーム。
これに間に合っていれば正午に現地着の予定だったのだが、ここで乗り換えが1本ズレただけで現地着がなんと午後2時過ぎになってしまう。日の短いこの時期、午後2時ではさすがに、傾き始めた陽が山間に影をつくってしまうだろう…30分ほどもあーだこーだとかな~り迷ったが、ここは潔く撤退で。

翌土曜日は、このときのショックがデカすぎた…わけでもないだろうが、恐らく前夜のビール(自棄酒?)が残ってしまったのか、起きられず。
日曜の今日、再チャレンジとなったわけだが、うかうかしてたらもう今日から12月じゃん。
山の紅葉にはちと遅いか…ってここへきて1日2日くらい違っても、もう変わらんが。
というわけで同じ過ち、犯すまじ。
というわけで前夜、俺にしては珍しく綿密な計画を立てる往路。
通勤ラッシュのない土休日ならむしろ、早起きを遠慮することもない。っつーか試しに初電検索してみたら平日の俺の出勤時間より遅いんだけど。
運行本数の少ないわたらせ渓谷鉄道相老駅で、10:15発に乗ることに決めて、これに間に合う東武特急チョイスは適切ではないことも判明した。余程座って楽したいならともかく、特急料金を払って早く着いても、待ち時間45分だ。この時間帯はむしろ、各駅停車の方が接続がいい。
…(机上)プランもできた。
幸い雨の心配は全くなさそうなので、これに食の確保をはめ込んでいく。
昼食はこの際、神戸駅内の電車レストラン「清流」で。
「給料日の外食」が、行きつけだった定食屋の不意の閉店でもう数ヶ月、できなくなってしまったので、その分くらいは現地で贅沢してもいいだろう。
夕食は…そうそう、大間々駅で途中下車すれば赤城駅まで徒歩連絡が可能なのを思い出した。
俺の中では相老駅からひと駅歩いたように記憶がすり替わっていたが、改めて地図を見ると思った以上に距離があり、どうやら勘違い。さすがに記憶の中の景色が混乱していた。
赤城駅前には巨大スーパー「ベイシア」があるので、弁当と缶ビールを調達、帰りの東武特急で指定席を押さえられれば車内で「ひとりウチアゲ」ができるだろう。
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当日、早速のトラブル・スタートは牛田駅から乗る東武伊勢崎線で、今日の乗り換えでは予定の1本前の区間急行に間に合ったものの、おや?
ホームの電光案内が「春日部行き」になっている。
ホーム掲出の時刻表はもちろん「館林行き」になっていて、入ってきた電車も「館林」の行き先表示…。
原因はわからないが、さっそくダイヤ乱れか?
しかし牛田駅、ワンオペでも無人駅でもないはずなのに何のアナウンスもない。
いったい駅員は揃って何をしてたんだろう。
えーい、この時間帯これ以上速い電車はないのだ*2。行けるとこまで乗ってしまえ。
ようやく「本日に限り、春日部止まり」との車内アナウンスで、春日部から館林までは「代車」が出るらしい。
「車両不具合のため」と理由がアナウンスされたのは、なんと越谷を出てからだった。
…何か恥ずかしいことでも? (牛田で乗るのをためらっていたら、今頃どうなってたんだ俺は)
土地勘の不案内な路線でこういう目に遭うと、その鉄道会社に対して一気に不信感が増す。
ましてや決意の遠距離移動(笑)を出足から(また!)くじかれるかどうか、という局面だ。
春日部駅で向かいのホームに停まっていた「代車」は、ヒーターが間に合わなかったのか明らかに車内が冷え冷え。
それでも加須では、さーっと太陽が顔を出して一気に晴れた。
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程なく長いトラス橋で利根川を渡ると、電車は埼玉を抜けていよいよグンマーへ(笑)。
乗り換えの館林駅で折返し入線してきたのは、前パン姿*3も勇ましい「800系」3両編成。初めて見たよこれ、カッコイー。
下りの接続電車をもう1本待ってから、定刻通り発車。
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何度か降り立ったことのある、わたらせ渓谷鉄道との乗換駅・相老の駅舎は、駅前ロータリー側の張り出し屋根が今風のものになっていたものの変わらぬ佇まい。勝手な言い分だが余所者にとっては、自然ともども「変らず迎えてくれる」ことが何よりうれしい。
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懐かしい駅周りをぐるっと一回り見て、切符を買いなおしたら丁度、赤銅色に塗られたわたらせ渓谷鉄道ディーゼルカーが到着。
半室運転席のすぐ横に立てるようになっているので、いつもながらワンマン運転車両で誰もいない一番後ろに陣取り、心置きなくガラス窓1枚越しに、後ろに流れていく景色を間近に堪能する。当然ながら電車じゃないので頭上には電線も電柱もなく、初冬の空が広い。
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ディーゼルカー渡良瀬川を登るにつれて、キワに迫った崖に張り付くように敷かれた、都会の通勤電車よりは明らかに心細いレールの上を走る。
揺れも大きく、右に左に、まるでダンスでもしているように足尾に向かって登っていく。
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切り立った崖を埋め尽くしている紅葉の木々は逆光に照らされて、キラキラと輝いて見える。
ディーゼルカーが通過する風で、線路の間に積もった枯れ葉たちがまるで列車に追いすがって来るように舞い上がる。
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当時、これほど険しい道のりに鉄道を敷いたのはもちろん、足尾で採掘される銅の搬出が目的だった。
相当の難工事だったことだろう。

*1:というかこの人の文章、読んでてワクワク感が止まらんかった。

*2:有料特急を除く。

*3:先頭車の運転室側にパンタグラフがあること。いかにも「デンシャ」っぽいでしょ。