「踏切時間」。

テツな気性(?)なので、踏切自体はもちろん好きな場所のひとつだ。
各エピソードのモデルとされる踏切の、かなりの割合で「ああ、あそこか」と見知っていたり実際に通っていたりしたのは、我ながらちょっとびっくり。
人の印象に強く残る踏切って、意外と共通なのかも。
作者が東京在住の方なので、さすがに今、俺が住んでいる千葉が舞台の話は未だないのが残念。

踏切時間 : 1 (アクションコミックス)

踏切時間 : 1 (アクションコミックス)


今の俺が「踏切」で咄嗟に思い起こした場所は、意外なことに都内ではなく千葉に来てからの、それも京成臼井駅の成田側にあるものだった。
近くには(ご存知のように)2012年の転職(転籍?)に伴って、今こうしてはるばる千葉の地に根付くきっかけになった、元職場がある。
世間的には名の通った会社で、俺史上最も大きな規模の会社でもあったが、そういう外ヅラとは無関係に組織内部は俺にとっては酷いもので、引き留めるものもない独り身の身軽さから、わずか13か月で退職することになる(これも俺史上最短)。
昼休みになると自分の席に1秒たりとも居たくなかったので、今日のような天気のいい日の昼食は一時期、この踏切の辺りで行きかう電車を眺めながら、コンビニのおにぎりやサンドイッチで済ませていたものだ。
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そのうち昼休みに俺がこうしてさっさと席を外すことが余程目障りだったらしく、女性スタッフどもが「電話番交代制」を提案、女性上司がこれをあっさり了承したために俺に話が来たときにはもう既決事項で、月2回ペースくらいで自席にいなければならなくなった。
それでも少しでも自席にいる時間を短くしたかったので、「当番」に当たった昼休みはこのトシになって初めて「トイレメシ」を経験することに。
あのビルの裏側の、あの窓の辺りだったな…。
女性中心の職場って、何かとこういう学級会的「正論」(実は感情論だと俺は思っている)が振りかざされるものなのだ、という苦い(勘違い?)経験として、以後俺の記憶に深く刻まれることになった。

その踏切を線路沿いに少し先まで歩いてみると、日当たりの良い大きな公園があることを発見して、そんな俺の「踏切メシ」は終焉を迎えることになった。
今は昼休みの時間帯はとっくに過ぎているが、うつむいてそれぞれ思い思いのベンチに座っている若い男女を見ると、「まさかウチの(元)会社のヤツが思い詰めて座ってるんじゃ…」などとあの時の俺と重ねて見てしまう。
先日の多摩湖といい、今日の京成臼井といい、近いうちに人生の大きな転機でも迫っているんだろうか、やや懐古趣味的になっている。
今後再び同じような境遇に陥るようなことがあったら今の俺には耐えられるのだろうか、ということを無意識に確認しているような気もする。
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話がすっかり逸れましたが…。
本作はもちろんこんな深刻な話などとは無縁で、踏切を舞台に行きかう人たちの様々な人間(女子高生多め?)模様、その読み切り物語で、むしろクスッとさせられたり爆笑しちゃったりといった内容だ安心してください。

駅へ戻る際に立ち寄った、駅前のスーパー。
売り場はいつも通り商品であふれているけれど(俺の)欲しいものがない、という10年一日のような、「さびれゆく地方の繁華街」の典型的な空気漂う衣料品売り場で、俺以外に客の姿を見かけないフロアに店員の「お姉さま」がふたり。今日は出勤していないであろう同僚の悪口を語り合っている。
なにげに昼休みの「競争率」が高かった階段踊り場にあったベンチは、恐らくコロナウイルスの影響で全て撤去されていた。
3階にあった騒々しかったゲームコーナーは、俺の雨の日の昼食場所だったが、きれいになくなっていて、なんだか使い道の定まらないまま、通路なんだかテーブル席だかわからない空間に化けていた。
そして屋上駐車場からはるかに眺める印旛沼。あの頃と変わらず寒々と光って見えた。

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「街がざわついた」というふざけた名前の看板は、なんとパン屋です。