見ようとしないと、見えない。

そういうわけで昨年8月から、コロナ自粛の退屈もあって急遽思い立ってTwitterを始めたわけだが、お陰様で色々と新鮮な経験もさせてもらい、共通のラジオ番組聴取を通じて知り合いもそれなりに(あくまでも俺なりのペースで)増えてきた。
知り合いを増やす、という点において、人見知りな俺にとっては少なくとも「SNSだから(仮想空間だから)簡単・気軽」などということは決してなく、その困難さは実はリアル界とあまり変わりはなかったのだが、そんな話は機会があればまた今度。
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まだ使ったことのないTwitterの機能のひとつに、DM(ダイレクトメール)というのがあって、先日共通番組のリスナーさんからそのDMが来ていたのに気づいた。
このコロナ禍の中、職を失い、生活基盤そのものに係る窮状を訴えるもので、これまでもツイートの中で幾度かそれらしい話は触れられていたのだが、正直他人事には思えなかった。
俺にも、前の職場を退職したとき、湾岸倉庫街を日雇いで渡り歩いてた経験があるのだ。その先行き不安な気持ちは痛いほどわかる。
しかし、一度でも直接顔を合わせたことがあるわけでもなく、前職が何だったかも知らず、先方の年齢・性別しかわからない。
個人情報が圧倒的に足らない。
加えて今の俺とて、残念ながら何か具体的に力添えできる余力など、持ち合わせてはいない。
そもそもその俺にしたって「知人」と呼べる人が、俺史上最少な時期だし。
今さら別に「いい人」になる必要もないだろうが、文字通り恥を忍んでまで打ち明けてくれたものを、どう無下に思われないように返信したものか…。
まだしも住まいが近ければ、もしかしたら紹介できる職のひとつもあったのかも知れないが、物理的距離の隔たりは絶望的だった。
昨夜はそこまで踏み込んで考えてしまい、ろくに眠ることができなかった。
職場の上司か信頼できる同僚あたりにでも相談してみようかと思ったところで、はたと思う。
改めてことばにしてみると何とも荒唐無稽で、恐らく俺の拙い日本語だと、第三者には新手の詐欺のような印象しか伝わらないだろう。
俺自身はこれまでのツイートから推察して、その内容は充分信じるに足ると思ってはいるが。

公的扶助には既に相当の不信感を持たれているようなので、今さらありきたりなアドバイスをしたところで…俺の経験から言えるのはせいぜい、
「求職中であることを広く知人に知ってもらうこと」
くらいしかない。
リアルタイムで既読が付いたこともあり、スマホでチェックされていたのだろうか、その後はとりたてて反応はなかった。
…こちらの返信に何か落ち度があったとも思えないんだがまぁ何か、心証悪いよな。
今どきのネットでの繋がりなんて、そんなもんなのだろうか。

恐らくは自身のご努力もあって、すでに4桁のフォロワーさんを擁している方なので、これまで同じようにDMを送ってみたら、もしかしたら数件くらいは好意的な反応が返ってきた、というような「成功体験」があったのではないかと思われる。
「貧すれば鈍する」で、同じ立場になれば俺だって同じようなことを考えたかも知れない。
いや、SNSを利用しようというアイデアはむしろ、俺ごときには到底思いつかないオリジナリティある方策だったかも。
しかし古いタイプの人間である俺にはまだちょっと突飛すぎた。

気が付くと「堕ちている」この国の経済システムはもう、制度劣化も甚だしい。
身を粉にして働けば無条件に社会的立場を保障されて、右肩上がりで給料が増えていった時代はもうはるか昔。
件の何気にブラックだった前職が実は福祉関連職だったので、現場ではその当時から、公的支援に途中段階の生活再建メニューがないことは問題視されていた。
いつの頃からかそれは「自己責任」と呼ばれるようになっているが。
実は固定電話を持たず携帯電話を手放したというだけで、住所不定と同様の存在になってしまい、つまりは公的支援も届きにくくなってしまう。
若い頃の、人知れぬ(と思い込んでいる)苦労が報われた結果として手に入れたと思っていた正規雇用の立場ですら、今の世の中では脆いもので、日頃から見ようとしていないと気づかずに、自分自身が堕ちてみてから初めて、その脆さと支援メニューの少なさに気づくことになる。
「何度でもやり直しの利く社会」が実現できたのは、先代の総理大臣くらいのものだ。


ともかくも今回の一連の出来事は、想像以上に俺の心的エネルギーを消耗しちゃったらしく、人間不審とまではいかないが、ここまで無気力になったのはもう何十年も前の失恋(笑)以来だ。
なんかブログもツイッターも、すっかり面倒くさくなってしまった。
しばらく放置しておくか。
誰も心配なんかしないし、俺の存在なんかどうせ憶えてもいない。
ネット上の人間関係なんて元々、そんなもんだし。