どうやら突き抜けちゃった、土曜日。

午前中、内科で生まれて初めての甲状腺エコー検査というものを受けた。
(酒量が増えるとともに)内服薬の投与量が増えたので、その副作用が出ていないかの確認だという。別に現状、何らかの自覚症状があるわけではない。
いつも通り11時頃に病院の前まで行ってから、なんとはなしに前回渡されていた来院予約メモを取り出したら、なんと時間指定!(11:45とある)だった。
一旦部屋まで戻ってもよかったのだが、あてもなく近所の個人書店に足を向ける。コロナ禍で「日祝は午後から営業」の掲示があったが、土曜日は通常通りだったらしい。
文庫本やコミックの棚を中心に見て回っていたら、「ばぁば!」のかわいい声とともに全身を使って階段を登ってくる小さい女の子、多分2~3歳くらい。続いて日焼け・無精髭に短パン姿のすらっとした、俺より若い「お父さん」が店内に入ってきた。
それまで俺の他に客の姿はなく、エアコンの音しかなかった店内で、聴くともなしに耳に入ってくるご家族の会話には、うっかりほっこりしてしまった。
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甲状腺エコ―検査は、ベッドに仰向けにされ、喉回りに造影剤のようなものを塗られてから、蛍光灯を切った検査室でレジのバーコード・リーダーのようなもので何度か首回りをなぞられただけ。
あまり同じような場所を何度もなぞられてたので、何か発見されちゃったか? と疑心暗鬼になっていたがそういうものだったらしく、直後の問診ではもう結果が出ていて「問題なし」、と告げられた。

先生の問診では、いつものように次回診察日の予約。
「土曜日がいいんだよね」
と改めて訊かれると、少なくとも緊急事態宣言発令中は月・水を在宅としているので、仕事の間をぬって来院できなくもないが…しかし緊急事態宣言は予定通り今月12日で解除されるのだろうか?
という話をしたら、先生も宣言延長の可能性には同意された上で、
「総理大臣までいなくなっちゃいましたからねぇ。」
と返した俺のことばに、饒舌な政治ネタが始まってしまった…どうやら先生の興味関心分野をうっかり踏んでしまったらしい。
あるいはもしかすると、俺ごときな患者とそんな雑談でもしてないと、というくらいさすがにお疲れだったのかも知れない。

…しかしなるほど、自身が年を取ってくると、日常会話の話題が天気と病気だけになるわけか。
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ベランピング、というほど大袈裟なものでもないが、以前屋外録音の機材置き用に、キャンプ用の折り畳みテーブルを買っておいた。
これに合う折り畳み椅子があれば、ベランダ(か、夕陽がきれいな非常階段)に陣取って、屋外ひとり飲みができるじゃないか、という我ながらアホだが以前から温めていた思い付きから、今日はいよいよキャンプ用の折り畳み椅子を購入することにした。
病院から処方箋薬局に寄ると、そのまま近所のホームセンターを目指して北上する。
この辺でも一番大きな店舗は普通ならバスに乗って移動する距離だが、現状仕事休みの日に公共交通機関を使った移動は自粛しているし、自身の運動不足の解消も期待して、歩くことにした。

病院を出たのがすでに13時を回ってたので相当遅くなってしまったが、さらに歩を進めるためにも途中で昼食。
久しぶりに歩いてきたスーパー内のベーカリーを覗いてみたら、イートインは密を避けるためかガラス張りの内側にあった居心地よかったカウンター席が全撤去されており、ゆったりとひとり掛けのテーブル席ばかりに改装されていた。
厨房前に展開していた個別レジは、これも密になるからか人手不足なのかやめてしまったらしく、パン1個であっても早くも夕食の買い出しが始まったスーパー側のレジに並ばなければならない、憂鬱。
そういえば品数も以前と比べて激減してて、わざわざ店内ベーカリーを置くことの「戦略」が定まっていない感じ。
サンドイッチや総菜パンだってそもそもスーパー側で別途取り扱いがあるわけで、値段もそちらの方が圧倒的に安いから、同じものを売るためには何か「付加価値」をつけなければならないわけだが。
同様のことは恐らく全国的に起こっていて、パン好きな俺としては気軽な買い物ができず残念だ。
結局何も買わずにこの店を後にした。
その先、別系列のスーパーでは、ベーカリー単独レジを設けてはあったが「時間帯閉鎖」。この先、目的のホームセンターまではコンビニくらいしかないのを知っているので、結局パンしか買わないのにスーパー側のレジ行列に参加させられる羽目になった。
店外のベンチの一角を借りて食べ終えた頃になって、いよいよ雨が本格的に降ってきてしまう。俺の雨男ぶりも、なかなかブレない。

目指すホームセンターへのバス路線をトレースしているつもりが、途中で細い路地に左折するところを誤って直進。何しろこちら方面にはあまり足を運ぶことがない。
そこで偶然、別の巨大なホームセンターと遭遇してしまう。
文化祭でも近いのか、入り口の屋台スペース周りに女子高生が数人、おしゃべりを楽しみながら、今川焼か何かをほおばっているところ。
この頃までには雨もかなり本降りになってしまっていて、傘を手に歩くのも正直疲れたので、これは「神のお導き」(?)とばかり店内へ。
レジ前にも女子高生たちがたむろしていて、廃ダンボールをもらって何とかビニール紐でくくろうとしている。恐らくは誰一人やったことのない作業だったらしく、あーでもない、こーでもないと知恵を出し合っているのが微笑ましい。

お目当てのキャンプ用品コーナーは、レジ沿いに右手奥。さすがにここには、俺も名前を知っているメーカー品がいくつかあったので、見本品に実際に座らせてもらい、何となく俺自身の座り心地のよさの基準みたいなものを計ってみた。
現物を前にすると、こんな単純なものでもスペック、といっても耐荷重と座り心地(背ずりの高さは重要視)、座面生地の感触と耐久性(想像)くらいだが、何となく自分なりのチェック項目もわかってくる。
最終目的地はまだ先なのでここでは一旦、判断保留にして移動。先ほど偶然目にした案内看板に従って2つ目の信号を左折したところ、休日で車通りもひと気もない工業団地へ迷い込んでしまい、どうやらバス路線をトレースし損なっている自分に気づく。
起伏の少ない千葉では、海から離れても大規模な物流拠点が所々にあって、どうやらそんな区画に迷い込んでしまった。
かつて自分も(別の場所で)お世話になってたことがあるわけだが、遅まきながら人として「仕事」に携わっていく上で大切な事は、ほとんどをあそこで経験させてもらったと思う。
自分の「育て直し」。
そんなことを懐かしく思い出しながらふと、そういえばはるか昔の学校の社会科見学では、物流現場を見学したということがなく、他校でそんな話を聞いたこともなかったなと。恐らくは今も昔も、一番人手を煩わせている産業じゃないかと思われるんだが。
社会科見学、と聞いてオトナになった今、思い出されるのは、大企業のフルオートメーション化された工場みたいなところばかり。
若い頃から「大きいことはイイことだ」「一発アテれば楽して大儲け」(いや、実際は違うけどね)みたいな刷り込みがされていたのではないかという疑念がわいてくる。
物流現場に限らず、昨年来のコロナ禍でクローズアップされた「エッセンシャルワーカー」な方々のお仕事ぶりを見せてもらえたら、教育的にもそれなりのインパクトがありそうに思えるのだがしかし、確かにゴミ処理施設や介護・医療現場、運輸、火葬場…は、さすがに無理か。

…などと今や全く無関係で悠長なことを考えているのは、自分が迷子になっているという現実から目をそむけ続けるためだが(割と必死)。
結局最終目的地であったホームセンターには辿り着けたのだが、今度はまさかの品薄状態。
踵を返すと帰りはちゃんとバス路線をトレースしつつ、最終的に昼食途中で寄った大手古物店(?)が大量に仕入れて売っていた新(古)品(?)を買うという、何とも効率の悪い移動になってしまった…あー、疲れた(歩いた歩いた!)。