仕事帰り。

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すっかり陽が短くなって周囲も暗くなった乗り換え駅の踏切で、俺と同じく踏切が鳴ったら車道を横切ろうと待っていた女子高生が、歩き出したところキーホルダーのようなものを落したのが俺の視界の端に見えてしまった。
反射的に、かけることばを思いつくより先に、リュックに手をかけてしまってから、続いてようやくことばが出た。
その場は
「あぁ、ありがとうございます」
と返してはもらったものの、相当怖がらせてしまったに違いなく、こちらこそ大変申し訳ない。
間接的にではあったが、何かとっても久しぶりに、形ある物を掴んだのとは明らかに違う、柔らかい感触だけがしばらく、俺の手に残っていた(すでに俺、相当危ないヤツになってるのでは?)。