独りの、誕生日

なんと、時計です。



学園祭シーズンに毎年開催されている、商店街の「収穫祭」フリーマーケットで、目があってしまった!のが、コレ。 ====
他にも曰くありげな骨董品の数々を置いていたオジサンの「お店」で、1眼レフカメラの交換レンズを模したクォーツ置時計。
二宮神社「七年祭」からの帰り道、まだあったので、「これも縁」と自分にいいわけ、手ごろなお値段でもあり、迷わず手を出してしまった。
そういえば今日は俺の誕生日か、今まですっかり忘れてたよ。
まぁいまさら楽器でもなかろうし。今年の自分へのプレゼント、といったところ。

 

そう思うと今まで、取り立てて知人のも自分のも「特別な日」扱いしてこなかったはずなのに、急になんだか特別なことをしなければいけないような気になり、落ち着かなくなる。部屋を出たり入ったり。

 

隣の東山くん(仮名)の部屋には、久しぶりにカノジョが来ているようだ。
俺はカノジョと別れたときに、こういう人生を自ら選んだんだから仕方ない。今後もこうして生きている限り、何十年にもわたって今日という日を迎えることになる。
カレシができたばかりの元同僚には打ち明けなかったが、同じくここ数日、偶然メールのやり取りがあった別の元同僚にはつい、口が(手が)すべってメールに書いてしまった…弱いなぁ俺。この流れでもらった「おめでとうメール」に、返信しとかなくては。
他にも少し買い物をして部屋に戻ると、ようやく11月にもなって扇風機をバラして洗い、電子蚊取り器とともに片付けた。
窓の外が暗くなってくるにつれ、やっぱりなんだか、この街で(俺が)顔を知っている人に囲まれていたくて、月1回の外食に立ち寄る定食屋で、心ひそかに祝う、誕生日の夕食。
天気予報によると、明日は20度に届かない寒い雨の一日になるらしい。
今夜はこれから、バスタブをいつもより念入りに洗って、ゆっくり風呂につかって、何十年分かの「禊」を洗い流してから、眠りにつくとしよう。
このトシにもなってようやく俺にも、自己肯定感みたいなものが、芽生え始めたか。コミュニケーション能力と同じで、学校では決して教えてもらえないし、自分で磨き続けるしかないもの。
「七年祭」が続いている二宮神社からは、一連の儀式が終わるごとに花火(空砲)が、かなり遅い時間まで断続的に続いていた。