日大生産工学部「桜泉祭」

日大の学園祭というと、ここ大久保では毎回、各学科ごとに工夫を凝らして飾りつけられた神輿の行列が学園祭初日の幕開けを告げて、賑やかに通り過ぎていくのがすっかり風物詩の光景。
今日はあいにくの、雲が厚く垂れ込める空模様。

そんな神輿行列に導かれるまま、今日の昼食は日大の学園祭「桜泉祭」で摂ることにした。
さっくりフードコートを一巡りし、柔道部の焼きソバに決定。
焼きあがる順番を待つ番号札はなんと木札、という懲りよう。


ご存知の通り俺自身もアレルギー体質だが、拝見したところ全ての飲食物販売テントで「アレルギー成分表示」がされていて、なんとも世知辛い世の中になったもんだ。にしては、肝心の価格表示がされていない。そういえばアルコール類の取り扱いも、ないんだねぇ。

日大の構内には今年4月の観桜会で初めて足を踏み入れたが、こんなに奥まった場所までは入れなかった。実際に行ってみると、様々にユニークなデザインがされた建物は、見ているだけでも楽しい。いずれも広いエントランスを持つ建物が多く、階段が格好のベンチになるのがありがたい。

腹を落ち着かせたら、4月の観桜会でうっかり見逃した「第14連隊跡地の碑」を見に、門を入って左手の一画へ。
歴史のよすがに後年建てられた新しい石碑があるだけ、と思っていたら結構な年代物の石碑で、早くも得した気分。


昭和43年に発掘されたものと、昭和62年に復元されたもの、であるらしい。
塀の向こう側は東邦大学で、塀越しに同じく「第13連隊跡地の碑」が望めた。

日大の学園祭パンフレットは、商店街内にある「お休み処」で事前配布されており、予めその中から、見て回りたいところの目星をつけられるのがありがたかった。というか俺自身の趣味は学生の頃から大して変わっておらず、音楽の生演奏(ジャズ、合唱部やアカペラ、クラシック音楽−オーケストラや吹奏楽など…)、写真部や美術部、鉄道研究会や旅行サークル、などを優先チェック…ラクなもんだが。

午前中に大久保の街を練り歩いていた神輿は、39号館の1階で、一堂に会して展示されていた。
改めて眺めると、各学科ごとに細かいところまでいろんな仕掛けにこだわりがあるのがわかって、楽しい。

他にも色とりどりで実用的な陶器や、奇抜なデザインの装飾品、紙にこだわった照明器具など、魅力的な展示が結構あって、単に人工的な素材の開発に留まらず、思っていた以上に美術的なモノ作りも学べる大学でもあるらしい。校内各所でも、様々な素材を使ったモニュメントが楽しめる。


写真部のように、やることがはっきりしている「伝統の」部活動は、足を運ぶ側としても気負わなくていい。展示会場はそれなりに賑わっていたが、残念ながら写真自体は俺の興味を引くものがなかった。若者らしい強烈な感性が、手ブレだピンボケだというカメラ側の使い方やセオリーに収まりきらずに溢れ出ちゃっているような画を撮るヤツが、だいたいどこにもひとりやふたり、いるもんだと思っていたんだが…。今回の展示は風景写真が大半を占めていて、なんというか妙に整って落ち着き払った大人しい画ばかりで、よくいえば安定しているが、悪くいうとどうも「盆栽」な趣き。
実は俺自身がそういうアグレッシブな「若者」じゃなかったので…ないものねだりだ。というか「自分が持っていないもの」だから、見てみたいわけで。画面に動きを表現したくって、風景写真なのにカメラの方を動かしちゃうヤツ、とか…(^^;

誰もがデジタルカメラを使う時代、瑞々しい青葉や夕焼けの微妙な色への感動は共有しやすいが、今は大抵のモチーフは苦もなく、オートモードでもほとんど目で見えたように写してくれる。光の使い方や形の表現、奥行きの出し方などは、一旦色による「魅力」をそぎ落として、本当はモノクロ写真で一度勉強するといいんだろうけど。俺たちの高校時代には、写真部というと当たり前に、自分たちで現像、引き伸ばしのできるモノクロ写真での展示しかなかったのだが、逆に今はモノクロでの展示って、ないのね。
▼写真部の展示品より

(そういえば高校の写真部所有の教習用カメラはPENTAX SPだったけど、あれどーしたかなぁ…。)

次に足を運んだのは、ビッグバンドの演奏。
いわゆるジャズ研というのはないようだった。ジャズ・オーケストラという名のビッグバンド・サークルの演奏は、ジャズで一般的にイメージされるようなアングラな感じは皆無。丁度演奏していたバンドの演奏は、8ビートは得意だがスウィングは苦手、という俺の好きではないタイプのリズム隊…。また、「非合法」まで含めてクラシック音楽を演奏するサークルやアカペラ・サークルというのには出会えず、残念ながら音楽のシュミに関しては、俺と日大サンとは意見が合わないみたいだ。

一方、4月の観桜会でオーゲージ鉄道模型に子どもを乗せて「運行」していた鉄道研究会は、かなり本格的なものとみた。これとは別に鉄道模型サークルもあって、どちらも広い展示スペース一杯に鉄道模型を走らせているのは壮観だった。景色まで作りこんでいるレイアウトとしての出展ではなかったので、残念ながらやや殺風景。市販の線路が引き回されていて、市販の電車模型*1がその上を走り回っている光景、展示している方としてもこれで果たして楽しいのだろうか、とちょっと思う。

鉄道研究会は教室展示とは別に今回も、屋外でオーゲージの電車を走らせており、こちらは無料で実際に人が乗ることができる大きさ。今日は観桜会で拝見した木造電車ではなく、新幹線500系タイプ、京成3400系、そして新京成8800系を模した車両が出動して、子どもたちに人気を博していた。理系大学のサークルとしてはこちらがメイン、と捉えればいいのだろうか?

たまたま今回、俺が観て回れたところだけの印象だが、「若い(はずの)表現力がなんだか消化不良」な印象…さすがにちょっと、辛口すぎたか。
もちろんそうじゃない展示も、いっぱいあったはずなんだが、「こんなもんだろ」という意識があったとしたらちょっと、もったいない、かな。
それはそれで、今の若者が抱えている「悩み」そのものを素直に写し出している、と思えば、彼ら自身のせいだけではないのかも知れないけれど。

*1:鉄道模型サークルは、車両は自作だが