それぞれの、春。

東京では昨日、平年より5日早く桜の開花宣言があった。

せっかく会社を欠勤になったのに(^^; 俺は腰痛で、ただ痛みに耐えながら寝転がっているしかない。
午前中に、すがる思いで院長先生の元へ、祝日明けの火曜日。
最初、助手先生が背中を触診してくれたのだが、本人にもわかるほど背骨の右側が硬くなっていた。
「しばらくはちゃんと(定期的に)通った方がいいよ。同じ姿勢を続けてるだけで痛そうだし。ドラム叩けなくなっちゃうよ」と院長先生のお達し。
ともあれ俺が絶対的に信頼する「名医」の治療を受けて、帰宅直後はすこぶる調子がいい。
しかしここは無理せず身体を休めておく。
文字通り身体を持て余して部屋に寝転がっていたら、12時前後に、隣の東山くん(仮名)の部屋で、いよいよ転出の作業が始まったらしい。1時間ほど、運送屋の出入りがあった。
集合住宅での暮らし方を心得ている、静かな隣人でありがたかった。俺がここへ引っ越してくる前からの住人でもあり、そういう意味ではひとたび何かあったときには、となんとなく無意識に頼りにしていた部分もあり、何より火事を出すようなバカなことはしなかろう、という信頼もあったりする。
入れ替わりに新年度から隣室に入居してくるのは、どんなヤツだろう(また学生さんだろうか)。

元の会社の同僚からは、カレシと一緒に住むことになり引っ越した、という報告メール。
実は引っ越す前のアパートは本人の口から聞いて、割と俺の部屋から近かったこともあり、何かのついでに何度か、部屋の前まで訪ねたことがあった。綺麗な桜並木がよく見える場所だった。
そっかー、あの場所にはもう、住んでいないのか…。

夜、改めて元同僚からのメール。
「(腰痛で欠勤って)お金とか、大丈夫なの?」
…正直ちょっと、泣きそうになった。
カレシと一緒に暮らすようになっての発言だから、今の俺は恋愛対象というよりはどうせ、「出来の悪い父ちゃん(親戚のオジちゃん?)」くらいの存在なのだろうけど。
俺とは比べ物にならないほど、これまで苦労してきた話を聞いてきた。
今のカレシと、幸せをつかんでくれよ。

東山くん(仮名)の部屋では、思っていたほど大掛かりな動きもなく、夕方には玄関表札もなくなっていた。
人ひとりがいなくなることって、この街では呆れるほどあっけない。
彼の新天地が、夢と希望の地でありますように。