海神駅の、ベンチ。

は、以前からいい感じで気になっていた木製のもの。
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いったいいつ頃からそこにあったものなのか。
京成線の他の駅ではもうあまり見かけないタイプで、俺の想像通り古いものだとすると今日までよく残っていたものだと思う。
日頃からよく手入れされており、濃い茶色に塗られていて重厚感のあるその上には、いつ見てもチリひとつ落ちていなかった。
とはいえこの時期、平日の出退勤時間帯はまだ写真を撮るには暗く、しばらく気づかなかったのだが。
先日、いつもより遅い時間帯に祝日出勤した際に、駅のリニューアル工事に伴ってなんと撤去されてしまった。
いつかちゃんと撮影しようと思っていたのだが…まさに後悔先に立たずだ。
工事中の写真にあるように、暫定的に設けられた緑色のプラスチックベンチは、自販機とともにホーム屋根の外に追いやられてしまっている。

2014年に近隣の大病院で(当時の会社の)健康診断を受けた際に、初めてこの駅に下車した。
このベンチを発見したときは、なんだか自分だけの妙に落ち着ける「秘密の場所」を見つけたようで嬉しかったものだが。
座ってみたら、座面の奥行があまりないせいか、はるか昔の夜汽車のボックスシートってこんな感じだったのだろうか、という気がした。
赤ちゃんからお年寄りまで、いったいどのくらいの人たちが当たり前にようにここに座り、談笑したり笑ったり、別れに涙したりしたことだろう。
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周辺を散歩したときの画像が辛うじて残っているが、どうやらこの画像データはデジカメではなく写メで、2020年にスタンプラリーで下車した際にデジカメで収めてあったカットはこれ1枚きりだった…。
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古いもの=陳腐といった通り一遍の価値観では、人の世でもいつまで経っても年長者が大切にされるような風潮にはなるまいよ。
一度失われた景色は、二度と戻ることはない。
改めてこの、当たり前なことばを噛みしめている。
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