正月2日目。

寝ぼけた頭で、「8時起きと9時起きだと午前中の充実度が大きく違うんだよな」などと思いながら、しっかり二度寝
10時起床だ(!)、曇りの日はなんだか一日中、頭が冴えない。
昨日、元日の大地震は「悪夢」であって欲しいと祈りつつ、そんなことはあり得ないので、いつも以上に何もやる気にならない。
何年かぶりにテレビのニュースをつけたところ、津波注意報は一斉に解除されていた。
一夜明けて周囲が明るくなるとともに、「最大震度7」の被害が次々と明らかになってくる。
7階建てのビルが倒壊、すぐ横の木造住宅を押しつぶしている。
1階部分が完全に潰れてしまった洋館。
倒れた灯篭、ブロック塀、落ちた瓦屋根、押しつぶされた自家用車、ひび割れてめくり上がってしまったアスファルト、路肩から完全に崖下に崩れ落ちている道路…。
輪島市では朝市通りが一面、焼野原になってしまい、まだ煙が方々で燻っている。
昨夜、空撮の段階では周囲が暗かったこともありひと気が感じられなかったが、給水場での行列に、ようやくそこにたくさんの人が暮らしていることを実感する。
輪島市珠洲市では、被害の全貌すら把握できていない。未だに市役所と電話が繋がらない状況だそうだ。

一方で(年末転出したのとは反対側の)隣室男子大学生はというと11時前、容赦なく腰を振ってカノジョを盛大に啼かせていた、「通常営業」の休日。
このカノジョの声がまた毎度、今どきAVでもいねぇよというくらいの雄叫びで(もしかしてそっち系のビョーキじゃないかと)。
さすがに昨夏、不動産屋を通じて苦情を申し述べたところ、「深夜の雄叫び」はなくなったものの、以後真昼間からイタすことにしたらしい。

昼食の買い出しにスーパーへ出かける際、見るともなしにポストを見る。
この隣室の男子大学生のポストは日頃から(横着して回収しない)DMで溢れかえっているのだが、そういえば年賀状らしきものは1通も見かけない。
今どきの若い奴らってみんな、こんな感じなのか?
それとも今やカノジョ以外との人間関係はなく、大学では居場所もなく孤立してるとかなのか?
そういえば入居当初には時折聞こえていたアンプを通さないエレキギターの練習音も、もうここ数年、耳にすることがなくなっている。
(そういえば俺も、入居時には勇んでドラムセットを持ち込んだんだが、結局一度も組み立てることはなかった)

13時前に雨が降り出してしまい、早々に帰宅。
誰に遠慮するわけでもなく早々に、缶ビールを開けてしまう。
被災地は日本海側に広く富山、石川、福井、新潟にまで亘っている。
15時時点の集計で石川県で「死亡48名」との数字が発表されたが到底被害全貌を把握できた感じではなく、これからまだ増えていくだろう。
年末帰省中、こたつで寛いでいた娘さんが、この地震で落ちてきた梁の直撃を受けて亡くなった、と訥々と話す年老いたお父さん。その家屋の1階部分は完全に潰れていた。未だ搬出されていないのだという。
一面焼野原になってしまった輪島の朝市会場では、家の下敷きになった老いた両親を残したまま逃げるしかなかったという男性。
夜になって同所からレポートしていた若い女性記者は七尾市出身とのことで、見慣れた景色が一変したことに衝撃を受けていると、赤い目で涙をこらえながらも、気丈に語っていた。
泣いてもわめいても、すぐに助けは来ない。
もう誰もかれも、涙なんかとっくに枯れてしまったかのようだった。
ようやくこれから、こういう個人を巡る「情報」が、続々と届き始める。

今日は結局一日中、部屋を無音にしたくない気分から、何年かぶりにテレビをつけっぱなしにしてしまった。
18時になって、それまで淡々と能登・北陸の地震被害を伝えていたニュース画面が急遽、羽田空港で炎上する旅客機の画に切り替わる。
当初は何の説明もなく現地の動画が放り込まれてきただけで、動じることなくともかく画面からわかる状況だけを淡々とことばにしていくベテラン・アナウンサー、すごいよな。
時を追うごとに徐々に詳細が明らかに。
炎上しているのは新千歳空港日本航空516便でC滑走路に着陸、滑走していた際に、なぜか同じ滑走路上に出ていた海上保安庁の固定翼機MA722型と接触したらしい。 乗客乗員379人は全員整然と、着陸後に避難して無事だという。
海保機の方は新潟に震災支援物資を運ぶところだったそうで、海保乗員6名は機長1名が重症、他の5名は死亡。恐らく脱出する暇もなかったのだろう。

後ほど航空マニアたちのTwitter(現X)で知ったが、事故に遭った海保機MA722は機体番号"JA722"「みずなぎ」というのだそうで、東日本大震災のとき、一面津波冠水してしまった仙台空港に駐留していて被災。しかしその後唯一、現役復帰することができた「奇跡の機体」だったらしい。
わかる、わかるよ(テツとはジャンルが違うけど)。
人も機械も、その「最期」がどうなるかなんて、わからないものだ。

ご存命なら、その高い専門性からまだまだたくさんの人たちを救うことができたであろう海保の方々。
一方、いい年して未だに何者にもなれない私はダラダラと長生きしちゃってる。
なんだか切ない。
もう今日はダメだ、寝よ…。