ウチアゲ、つらつら。


いつの間にか緊張しなくなったことについて。
いや緊張、してますよ未だに。
ただ、演奏そのものに悪影響があるような緊張の仕方はしなくなったけど。
メンバーの中では一番長く一緒に歌ってきたゆたかさんがよく知っていることだが、俺はその昔、というか割と最近まで、かなり重症の緊張しぃだった。
別のバンドで歌っていた頃に、たまたま人前での演奏機会が猛烈に集中した時期があり、そういう荒療治がいいのかどうかはいまだにわからないが、今でもはっきり自覚できることは、やっぱり「練度の低い曲では緊張する」ということ。
ある落語家さんがテレビでいっていたのを、そのまま受け売りすると、
「自分が憶えたことを見せる(だけ)、っていうのが一番危険なんですよ」。
俺なんかがいうのもおこがましいが、どうやら与えられた場で、お客さんのノリ具合や曲順によるその場の空気、様々な要因が影響しあった結果として、いつもの曲を歌っていてもその時その場の一回限り、そんな「表現」の域まで演奏を高められたら、緊張しないで済むらしい。
練習が十分でないと、楽譜が頭に浮かんできてしまい、そんな気持ちの余裕はとても持てない。ましてお客さんの反応を感じることなんて…。
勢いで偉そうなことを書いてしまったが、もちろん全く緊張しないで臨めたステージというものは、今に至るまで一度もない。
緊張にも「善玉」「悪玉」があるらしいんだよ。人前で、練習のときよりも緊張感をもって、音や演奏に集中できたとしたら、それは「善玉」ストレス…。

もひとつ、ご質問が多かったのは、ステージ上の曲間MCについて。
WINSでの「必勝パターン」はどうやら、なかちょがボケて、わかがツッこむ図式、らしい。
日頃の練習では、わかも面白い話をしてくれるのだが、ステージ上ではゆたかさんのボソッと繰り出してくるひとことの破壊力には誰も敵わないし(笑)。気(と頭の回転)が速く回る人が、ツッコミに回らざるを得ないんだろう。
残りのふたりがどう絡むかは、日頃の練習をいかに「楽しく」するかで、声を出すだけが「練習」ではなかったりする。練習の場で出たネタの使いまわしは、結構あるし、ここは使いまわしとこ、という風になると、メンバーがちゃんとそのように反応(お芝居)してくれる。
本来なら、固定的な人間関係なんかありえないし、ボケ・ツッコミの二分法でいいのか、という議論もあるのだが、便宜上こういう考え方をメンバー間の共通認識にしておくと、あまりにもうっかり話が逸れていってしまったときに、例えばなかちょがボケてくれたのを合図に「軌道修正」することができたりする、のではなかろうかと思ったりする。
逆に失敗の図式としては、「高校生のへなちょこサッカー」といっているのだが、全員で延々とボケかまして(ボールを追ってしまい)、笑いを取ろうとしてしまうことで、最近WINSでは意識するようになったので、かなり減った…はず。
とはいってもアマチュアなので、(メンタル)コンディションによってはうまく「パス回し」が通らないことも、いまだにありますよそりゃぁ…。過去には大先輩バンドの方からご指摘を受けたことも…。
そういう俺自身の「立ち位置」が、実は一番わからなかったりするんだけど。

まぁいずれにしても「お芝居」は、さすがに(一部得意な人を除いては)みんな素養がないので、これも以前別のバンドで、台本作って臨んだことがあったけど、少なくとも俺にはうまくいった感じがしなかった。
日々の練習をいかに楽しむか、その結果としてメンバーそれぞれが素の部分をステージ上で出せれば、お客さんも一緒に楽しんでもらえるかな、といったところ。

そういう意味では、大変おこがましいけどStairsさんのMCも面白かったけどね、俺は。
ぶっちゃけ、あー台本あるのね、あ、外したのね…という素な感じが。
事前にある程度決め事を作っておくのは、お客さんに対しての「礼儀」としては必要なのだと思う。
でもこのバンドは日々の練習を、音楽をちゃんと楽しんでるんだろうなーということがこんなことからもちゃんと、垣間見えて伝わってくるから。
(もしプロを目指していたりしたら)失礼ながら、アマチュア音楽のプロとの一番の違いはここだと思うし、だからこそ禁欲的なまでに音楽に向き合う必要があるプロとは違う「瞬間」が、アマチュアの演奏からは生まれる可能性が高いんだと、俺自身が長いことアマチュアで音楽をやってきて信じてるんだな。
ただ、だからといって「学芸会」にはしないために、少なくとも自身の演奏を常に客観視する努力は必要で、そも「学芸会」との違いって? というのはいつも考え続けている。

スティーブ・ガッドの名言「ここ(ステージ上)は怖いところだぞ」を思い出した。
取り繕いなんか通用しないし、練習でできなかったことが本番で急にできるようになったりもしない。

WINSでいえば、「また逢う日まで」の、フレーズ末尾処理とか(^^; まだゆーか)。

話戻っちゃうけど、緊張しないで済む気持ちのありようも、この辺りにあったりして。
必要以上に自分を(カッコ)よく見せたいと気負っちゃうと、緊張するもんだよ。そうはいってもハレの舞台で、気負わないでいられるほど無欲な人間はなかなかいないんだが。
本番前の会場の空気って、独特だからなぁ。

StairsのTenor・はいじさんと、「男性はアーカイブフォルダ、女性は(ファイルごと)上書き保存」の話で意気投合してしまったじゃないですか。
ついでに(?)「阿仁さんの高音は、ファルセットですか?」
と聞かれたので、「中間」域の使い方(練習の仕方)について簡単にお話させてもらった。
まぁ、声量は出ないんだけどねコレだと。
要は呼吸の支えが肝です(とゆー話は、し忘れた気がする)。

客席に昨年10月、結婚披露宴での演奏にお招きいただいた新郎新婦が、遠方から訪ねて来てくれていたので、ほぼ強引にウチアゲにも参加していただいた。大学合唱部時代の友人。
ちょっと食材が特殊な席だったので、大変申し訳なかったが、昔話に花が咲いた。
まだまだ、10月に歌いに行ったのが、つい昨日のことのようだ。
ふたりの、すっかり落ち着いた幸せそうな姿を見られるだけで、こっちまで手放しで幸せな気分になる。
実は俺、今まで誰に対してもこんな気持ちになれたことが、あまりなかったのだが。
さすがにトシをとったのかもなー俺も。
好きで続けてきただけの音楽活動だったが、ようやく初めてこのバンドで人様のお役にたてたようで。

振り返ればここにいるのは、吹けば飛ぶような俺と違って実際に日本社会を支えている人たちで、「職業に貴賎はない」とはいうものの、俺が音楽をやっていなかったなら、恐らく知り合うことすらできなかった人たちだ。
そう思うとなんだかとっても、不思議。

いただいた信玄餅を食べながら、今の俺にとっての幸せって、もしかしてこういうものかな、と思いつつ、つらつら書いてみた。
▼今回の1着、シンゲキノワカ(!?)